amie
異世界恋愛ロマファン
2026年10月23日
公開日
2.2万字
連載中
竜騎士の名門ローゼンハイム伯爵家の次女エルナには、幼いころから竜の声が言葉として聞こえていた。だが、そのことを話すたびに「竜語りの嘘つき」と笑われ、十六歳の契約の儀ではどの卵も孵らなかった。「竜なし」の烙印を押された彼女は、父の命で騎士団の竜舎に送られ、掃除係として二年間働いてきた。天才竜騎士の姉ヴィオラには見下され、父からは老商人の後妻になれと命じられていた。
ある夜、エルナは王家の守護竜・白竜シルヴァの泣き声を聞く。半年前から気が荒くなったと恐れられていた白竜は、肩に打ちこまれた黒い楔の痛みに苦しんでいたのだ。そのことを訴えても、耳を傾けたのは冷徹と噂される竜騎士団長カイルだけだった。
五十年ぶりに白竜の騎士を選ぶ選定の儀の日。姉が禁じられた竜縛りの術を使ったことで白竜は暴走し、宰相ヘルマンは竜殺しの矢を放てと命じる。エルナは広場に飛びこみ、竜の言葉で呪いをほどいて楔を抜く。白竜は彼女を騎士に選び、その手に契約の紋章が浮かびあがった。
しかし宰相は、エルナが禁術で契約を盗んだと告発する。父は保身のために娘を勘当し、姉は彼女を責めた。審問の場でエルナの力を証明したのは、黒竜ノクスを通して秘密を言い当てられたカイルの証言と、国王が自らの騎竜に託した、誰も知らないはずの即位前夜の記憶だった。嫌疑は晴れ、エルナは伝説の「竜語り」として白竜の騎士に迎えられる。手のひらを返した父に、彼女は勘当の書状を返さず、自分の居場所は自分で決めると告げた。
だが、白竜を眠らせ楔を打ったのは、竜の言葉で子守唄を歌える何者かだった。審問の後、エルナはその歌を城の中で耳にする。竜の声を聞けるのは、自分だけではなかったのだ。
エルナはカイルとともに、王城に潜む犯人と楔の謎を追いはじめる。二人のあいだには、まだ名前のない想いも芽生えはじめていた。竜たちの声を頼りに、陰謀に立ち向かう竜語りの物語が、いま幕を開ける。