全てを無に還す少女と、全てを燃やす拳の少年
完結済·新着更新:第3部 ゼロを超えて、君へ·2025年06月19日 20:10
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あらすじ
詳細
──炎と無。 決勝の鐘が、静かに鳴り響いた。 灼熱の火柱が吹き上がる闘技場。 観客席は息を飲み、舞台の中央に立つ二人の存在を見守っている。 「これより──《第一学園精霊トーナメント・決勝戦》を開始します!」 華やかな司会の声が響く中、ゆっくりと歩み出る少年。 リオ=バーンレッド。 入学初日に《基本属性最強》の火の精霊《イグニア》と契約しながらも、 一切の武器も魔具も用いず、己の拳一つで戦い抜いてきた異端のファイター。 紅蓮の炎を纏いながら、彼の肉体はまるで鋼のように引き締まっている。 対するは、静かなる気品を纏う少女。 シエラ=アルフィネ。 第一学園の絶対的存在にして生徒会長。 契約する精霊は、あらゆる能力を“無”へと還す《ゼロの精霊》──《ノルデン》。 白銀の髪を風に揺らし、冷ややかな眼差しでリオを見据える。 (ようやく……ここまで来た) 入学式の日、ただ落としたハンカチを拾ってくれた──それだけのきっかけだった。 けれど、その一瞬で、彼は生徒会長シエラに一目惚れしてしまった。 ただ話したかった。笑ってみたかった。 だが、彼女は“生徒会長”という高嶺の花で、周囲すら近寄らせない壁の向こう側にいた。 ならば── 拳と炎で、正面から突破するしかない。 「俺はあんたに、伝えたいことがある」 「その言葉、私を倒せたら聞いてあげる」 風が止む。 シエラが静かに手を掲げ、無の力が空間を侵食する。 「──すべてを静止せよ。《虚無領域》〈アブソリュート・エリア〉」 全ての術式、全ての魔力、その発動を拒絶する無の結界が広がっていく。 だが、リオは豪快に笑った。 「だったらちょうどいい。拳には、無効も何も関係ねぇ!」 背後で咆哮する火の精霊《イグニア》。 リオの両拳に、炎の奔流が宿る。 紅蓮の闘志と、静謐なる無がぶつかり合う。 拳 vs 無。激情 vs 理性。 その激突の先にあるのは、想いの告白か、敗北か。閉じる
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創意工夫ありし者創意工夫ありし者2025-06-19 20:10ネオ・デビューネオ・デビュー2025-06-19 20:07作者のひとりごと作者のひとりごと
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光よ、我が祈りに応え給え 〜最強浄化の聖女候補、お嬢様は信仰を集める〜瘴気に包まれた大地は、死を孕んでいた。 かつて神の恩寵が注いでいたというこの地は、今や毒の霧と呻く魔物の巣窟へと成り果てている。 人々は怯え、誰かを待ち望んでいた。 希望を、救いを、そして――奇跡を。 その日、配信が始まったのは午後第七刻。 空に浮かぶ神聖庁の“祈視録オラクル・アイ”が、少女の姿を映し出す。 白銀の髪に、光を織り込んだかのような祈衣。 掌を胸に当て、少女は祈るように小さく息を吐いた。 「――我が名は、エリシア=カーヴェル=ローゼンシュタイン。  聖女候補として、この地に祈りを捧げに参りました」 その声音は、透き通るように静かだった。 だが、同時に不思議な重みと温もりを含んでいた。 瞬間、彼女の周囲に淡い光が灯る。 瘴気が揺らぎ、風が浄められていく。 《スキル発動:聖浄ノ光環(セラフィック・クレンズ)》 《共鳴祈祷発生:5人 → 12人 → 47人……》 画面の向こう。 配信を見ていた者たちは、奇妙な感覚に包まれ始めていた。 「……身体が、軽くなった……?」 「頭痛が……おさまってる……?」 ひとつ、またひとつと、心の傷が癒えていく。 病に伏せた子どもが笑顔を取り戻し、争いに疲れた兵士が目を潤ませた。 ――これは、まさしく奇跡だった。 ただの映像ではない。 彼女の祈りは、画面越しにすら届く“本物の光”。 視聴者数は一気に跳ね上がり、信徒登録は雪崩のように増えていく。 《信徒登録:1,204人》 《配信評価:Sランク判定》 《神聖庁記録:奇跡級祈祷、確認》 だが、少女は一切の誇りも浮かべない。 その表情は、ただ――静かに祈る者のそれだった。 「どうか……この光が、誰かの明日を照らしますように」 それが、最強の浄化者にして、聖女候補エリシアの第一歩だった。 この祈りが、いずれ世界を変えると、 このとき誰もが、まだ知らなかった。
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