夫が私の小説で文学賞を取った日、私は離婚届を出した
完結済・最近更新:第8話 小宮紗和、著・2026年10月12日 14:26
42人気・★ 0・7.9万字
読むブックマーク応援する
あらすじ
詳細
夫が文学賞を受賞した夜、私は離婚届を鞄に入れていた。 五十二歳の小宮紗和は、人気小説家である夫・晴彦の作品を二十年間にわたって代筆してきた。受賞作も、壇上で語られたスピーチも、すべて紗和が書いたものだった。 ところが栄光の夜、夫から告げられたのは、若い女性との再婚だった。 「お前の名前で小説を出して、誰が読むんだ?」 夫の言葉に、紗和は離婚を決意する。 しかし、家を出た彼女には職歴も実績もない。夫は代筆の事実を否定し、それどころか次回作まで書くよう要求してくる。 紗和に残された武器は、二十年分の草稿と、誰にも奪えない文章を書く才能だけ。 かつての知人である編集者との再会をきっかけに、紗和は夫の嘘を暴き、自分自身の小説を書き始める。 だが、過去の作品には、最愛の娘まで傷つけてしまった秘密が隠されていた――。 夫の名声を支え続けた無名の妻が、すべてを失った場所から人生を取り戻す。 五十二歳。私の物語は、ここから始まる。 これは、裏切られた妻の復讐劇であり、ひとりの女性が自分の名前を取り戻す、逆転と再生の物語。閉じる
応援チケット
作品アチーブメント
創意工夫ありし者創意工夫ありし者2026-10-12 14:26ネオ・デビューネオ・デビュー2026-10-12 13:39作者のひとりごと作者のひとりごと
コミュニティ (0)
目次 (8)
しおり
つけとレビュー
フォロー
他の作品
離婚届は、夜に出した
離婚届は、夜に出した市役所市民課・戸籍係で働く藤野香澄は、夫の不倫を知った夜、離婚届を抱えて市役所の夜間窓口へ向かう。家庭では夫に尽くし、職場では頼まれごとを断れず、いつも自分の気持ちを後回しにしてきた香澄。ようやく終わらせるつもりで差し出した離婚届は、しかし不備により受理されなかった。 その書類を確認したのは、冷静で無愛想な年下上司・佐伯玲央だった。佐伯は香澄を慰めるのではなく、静かに問いかける。「これは、本当にあなたの意思ですか」。その一言に、香澄は初めて、自分が離婚したいのか、離婚させられようとしているのか分からなくなる。 翌日から香澄は、夫に捨てられた妻として職場の視線にさらされる。だが佐伯だけは、香澄の仕事の正確さを見抜き、過去の届出記録の確認を任せる。そこで香澄は、ある婚姻届の処理に不自然な点を見つける。消えた添付書類、訂正された受付時刻、合わない保管番号。そしてその記録は、夫の不倫相手・美咲とつながっていた。 単なる夫婦の裏切りだと思っていた出来事は、戸籍をめぐる嘘と、市役所内部の隠蔽へと広がっていく。香澄は私情を挟むことを恐れ、一度は調査から逃げようとする。しかし、窓口を訪れる人々の人生に触れるうち、自分が守ってきたのは書類ではなく、その向こうにある誰かの尊厳だったと気づく。 夫は香澄を黙らせようとし、職場にも圧力をかける。「お前は一人では何もできない」。かつての香澄なら、その言葉にうつむいていた。けれど今の彼女には、積み重ねてきた仕事と、隣で信じてくれる佐伯がいる。 香澄は届出記録の矛盾を一つずつ明らかにし、夫と不倫相手、そして隠蔽に関わった職員の嘘を暴いていく。離婚は敗北ではない。自分の人生を取り戻すための、最初の受理印だった。 これは、捨てられた妻が誰かに救われる物語ではない。自分の意思を失っていた女性が、仕事と恋を通して、もう一度自分自身を選び直す物語である。
ファンリスト