いつまで僕は地面に這いつくばっているんだ?ヴィトがここにいるすべての敵を始末してから立つのか?それとも・・・
僕はすぐに自分の刀を持ち、そしてそれを杖のようにして立ち上がる。若干にして頭がガンガンするものの関係ない。今その壁を超えないと、あの魔王を倒さないと、あの彼女を介抱してあげないと。立ち上がるんだ!
ヴィト「まだ立ち上がれたとは。これじゃあ僕が助ける間もないや」
そのいきなり入って来たヴィト、彼女は僕を横目で見ているとそう言った。そして前原悟は彼女の横に立っている。
前原「ここで引き下がるわけにはいかないんだよ。魔王にも、そしてヴィト、お前にもずっと守られてばっかりだとなんかなぁ・・・嫌でね」
僕はその何か立つ理由を探したものの何も無かった。
ヴィト「そうなの?お気に召さないマエハラ“お姫様”は」
しかしそんな彼女は僕の事をそう揶揄って言っていた。だからこっちも同じように、
前原「お姫様はお前だろ?“王子様”よぉ」
同じように彼女のそのキャラで揶揄ってやった。
傍から見たらおしどり夫婦な彼らは、二人とも剣を持っている。そして笑顔でこういった。
前原「じゃあ・・・
「「共闘といきますか!(いこうか!)」」
その瞬間、彼らはかつてライバルで互いに剣を交えた二人が、その敵同士が入り乱れるその状況にお互いを守りながら身を落としていく。
ヴィト「マエハラさん!こいつあげる!」
まずヴィトが先陣を切り、その向かってくる銃弾の囮を自然的にしていた。そして一瞬離脱した後、今度は前原悟がその隙に自分の炎が帯びた刀で一気にザン!と、空を切るもののその炎によって完全にリーチ外だった敵を一気にやっつける。そして彼女は僕の燃える刀に剣でポンと身を触れると、
ヴィト「ローズ家バラ流剣術。道は茨のように、姿は薔薇のように。掴んでみなさいその茨を。耐えてみなさいその痛みをっ!!」
その呪文と言う名のパスワードを発し、また自分の剣に茨を巻き付かせた。すると僕の炎がその茨の蔓に燃えついて、そして彼女が投げた瞬間、黒いローブの一人が燃えて亡くなった
いきなりしかしそれ以上にまだいる、しかも兵站が充足しているのか、彼らは未だ銃を持っていた。たかが剣技、中世にて栄華を極めていたものの、それらは銃の台頭によって廃れる物だ。されど剣技、その舞はまるで踊りのように彼らを翻弄する。そのおかげか銃口は彼らに狙いを定めることは出来なかった。
その刀捌きを外す者が居たが、すると前原悟はその間際を読んで自分の能力である“アルファ掲示板”を開く。そして個人のDMのABS553の所を開いて、上から順にナンチャラボールとそれぞれ最後にボールが付いている魔法を4つ、一気にダウンロードする。
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ファイヤーボール ダウンロードする
アイスボール ダウンロードする
自己回復 ダウンロードする
サンダーボール ダウンロードする
全部ダウンロードだこの野郎!
僕はすぐさま上から順にパッパッパッパッと各々触っていき、よりアップデートした掲示板からダウンロードを始めていく。
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「うおおおおお~~~!若者よ頑張れ~~!」
その歓声が魔王軍領とは遠く離れた所で響いていた。中でも特にそれぞれの街にある酒場からむさくるしい男達の図太く夢中になった歓声がある。いつもの夜はまばらな人だかりの酒場が夕方からいきなり男達で満たされた。そう、水晶からいきなり画面が4つ飛び出して、直方体の側面の4方のように位置しており、その面は全てある男をまるでスポーツの実況をするようにして映し出されていた。ズームをしたり遠くから撮ったり、またある時は先ほどの瞬間をスローモーションで、またこれまでのダイジェストをその大陸のテロップを使って紹介していた。それは前原悟の個人情報とその姿を捉えた、ある意味スポーツバーに近い物である。
「おっちゃん!酒おかわり!」
「あいよ」
その店主である男は前にも見ない繁盛ぶりに、自分の大きく贅肉で太った体をなんとか動かしてカウンターとテーブルを往復していた。そう、彼らはその地獄の惨状を酒を以て嗜んでいた。
ABS553「いやぁ~皆様お楽しみになられてるようでとても良かったですねぇ」
「おぉ!昼間の坊主じゃねえか!おいお前ら!こいつがあれを導入しないかって言ってた男だ!」
そんな様子にいきなりABS553、この大陸で言う所のグレッグがやって来た。すると店主は
彼の元に駆け寄り、老人たちに紹介すると、これまたなろう系の主人公のように、救世主のように崇め奉られる。
ABS553「いや~またなんか僕やっちゃいました?それと僕はグレッグと申します。何かお助けが必要ならばこの水晶玉にお申し付けください。私が持っている物とつながっておりますので置いておきますね」
そんな彼は新たな信者を集める為に、まるでどこかのセールスマンのように紳士的な態度で彼らに自分の手を左胸において、深くお辞儀をした。
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そしダウンロードが終わった瞬間、彼はすぐさま出来立てホヤホヤの魔法を・・・
前原「サンダーボールッ!」
目の前の集団に向かって撃つ。すると、ヴィトは直ぐに僕の後ろに後退する。しかしそれは彼が何も目の前に手を出したり、力と方位を指定してないことからか、それは上で大きく、そして何よりどこかラグが発生するほどだった。そんなサンダーボールと名付けられた雷の集合体が球となって、目の前の数人倒しただけの集団にいきなりそのボールがゆっくりと弧を描いて落ちていく。そして地に付いた瞬間、眩い光と共にいきなり星の信者共がビリビリと痺れて、そのおかげか彼らはトリガーをバババババッと5人がその電撃によって引いてしまい、ある者は右に向いた瞬間にそのコントロールの出来なくなった指のお陰でその隣にいる奴がお陀仏になっていく。
ヴィト「わあすごいね魔法って笑もう僕必要ないか・・・」
しかし彼女はそんな冗談を言う暇も無かった。なぜなら前から星の信者が、後ろから魔王軍がその混乱を鎮めようとさらに援軍を派兵してきたのだ。どちらからも、待っていたかのように同時に。
ヴィト「フゥー・・・先に行って」
彼女は一息ついた瞬間に、騎士の顔をしていた。そして自分の剣を構えて目の前の脅威に立ち向かわんとしている。
前原「え、でも「いいから!早く行く!」
そんな彼女は僕を前に急かしていた。でも彼女を一人にしていけない。相手は僕だけが知ってる現代武器を持った相手だぞ?無惨にやられるに決まってる!そんな事を考えながら、僕は背中越しに彼女の後ろ姿がどんどん遠くなっていくのを見る。その姿はまるで自分が仲間を捨てる外道になって行くようで、とても直視できない。だから僕は後ろを振り向かずに目の前に立ちはだかる、数十は居るだろう敵にバリケードをよじ登って突っ込んでいく。その途中甲冑がカチャカチャと音を鳴らし、そのおかげで敵に位置を知らせてしまうものの構わない。目の前には多数の種族で構成された魔王軍。そしてバリケード越しにはヴィトとそれに対抗する人間族だけで編成されているであろう星の信者達の部隊。僕たちはその同じようで違う敵を、バリケード一枚と背中を合わせて互いに剣を構えていた。互いにその自分の武器を両手で持ち、刃を立たせる。
前原「行かなきゃいけないんだ。何としてでも魔王の所に!」
僕はそう言って、その魔王軍の軍勢相手に星の信者が持っているような武器すら持たず、自分の日本刀一本だけで突っ込んでいく。見るもその無謀なその男は、ただ自分の刀を相棒にその兵士たちに向かって行った。
前原「うおおおお~~~!アルファ掲示板!」
その雄たけびをあげる中、魔王軍たちもその男を止めんとぞろぞろとそれぞれの武器で対抗してくる。まず一人、彼はゴブリンの首を撥ね、そしてもう一人、オークの心臓に突き刺すが、それでも多勢に無勢。そんな状況を打開するために“アルファ掲示板”を開く。
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マエハラサトル“どなたか魔法の提供頼む!”
アバドン生命の樹ゴールド講師@月曜一限“いいですよ~”
氷霜の恐怖 ダウンロードする
火炎の息吹 ダウンロードする
雷電の一撃 ダウンロードする
暴風の回天 ダウンロードする
僕はその魔法をかたっぱしからそのナンチャラボールとかの魔法をアンインストールする代わりに、それをダウンロードする。彼には知られていない能力だが、これらはノーコストでダウンロードする事が出来るのにかれは知らず、そしてあのポップアップも出ていないことにも違和感を持たずにその能力を惜しみも無くアンインストールした。
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そうやって掲示板を開いている間、なぜか彼らは手を止めていて、移動すらしていなかった。まあ少なからずチャンスだと僕は思って、自分のダウンロードした魔法を使う。
前原「ん~っ・・・暴風の回天!!」
先ほどとは違って今度は目の前に手を出してそう言う。すると僕の目の前にはいきなり竜巻が形を出す。回天、その言葉のイメージに回る何かを感じたおかげか、そうなっていた。
竜巻は目の前の大多数の敵を回転するようにして段々と上に、天へサキュバスすらも取り込んでいった。それは動くようにして数秒程で大きな竜巻へと変わっていった。
前原「なんかなぁ~・・・なんか足りない気がする。そうだ!火炎の息吹!」
どうやらこの悪魔はなんか足りない気がするとか言って、何を思ったのか今度はその続いている竜巻に向かっていきなりそこに魔法の火を点けた。まるで地獄の炎に抱かれて灰と化すように。
前原「ハァ・・・さすがにやりすぎたかぁ。怖いな~アンインストールすとこ」
そうやって僕は道を急いだ。
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そんなバリケードを隔てて圧倒的な勝利の動きがある中、ヴィトはその逆で押されていた。なんとか一人や二人を倒せたものの、その超音速な弾幕のお陰で前にすら出れない。むしろバリケードに隠れざるを得ない事態であった。一つ頭を出そうものならもう、それは無惨なものになっているだろう。しかしその脅威は目の前だけではなかった。
後ろのバリケードからは槍が彼女を向く。もう絶対絶命であった。
「な・・・何をすrグギャあああ!!!」
しかし彼女の目の前の中、一人が何かに刺されたようにして倒れる。
凌雨華「しょうがないなぁ・・・ここは少し規律違反だけど私も助太刀する」
そんな声がして、その次の瞬間ヴィトの隣に立った。しかし自分を隠すためのローブはもう被ってすらいなかった。
ヴィト「誰だい?君は?」
そんな声に対してそっけない様に喋る。
凌雨華「誰って、マエハラの姉弟子だよ。なんか文句ある?」
ヴィト「唐突に喧嘩を売るね。敵?お前は僕にとっての敵かい?」
凌雨華「そんな事で私の事を敵にしたい?勿論誰だってお構いなしだけど」
そんな彼女は、誰にでも強気であった。
ヴィト「まあ・・・今は目の前の敵をどうするかだけど」
しかしそんな水と油のような犬猿の仲のような二人は、共通の敵を目の前にして互いに剣を向け合う事はしなかった。
凌雨華「二人同時に行くぞ!」
ヴィト「分かった!」
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丸い十字の線が彼女を狙う。その信者が持っているような物と一緒の物で、しかし大きなスコープがその役割を分かつ。
「剣の時代はもう終わりだぜ?大陸人」
男はそう言いながら引き金に指をかける。そして撃とうとしたその瞬間、右腕にいきなり矢がスパッと刺さった。
「いっ・・・!何を・・・?」
男はその方向を見ると、弓を構えたエルフが撃った後にもう一度同じ矢を掛けているのが見えた。ありえない程近い距離、男の持っているライフルにとっては完全に射程圏内、すぐさまそこに照準を構えるものの、熟練の元狩人であるアンナ・シュトレンにとっては完全に見えており、すぐさま自分の弓を引いて頭にスパッとその矢を男にぶち込んだ。
アンナ「狩人というのは必ず獲物の目を常に見ていないといけない。なぜなら離した隙に逃げられるか襲われるかの二択しかないから。分かるわよね?」
そんなことを彼女は目の前で矢が目に当たってぐったりと死んでいる男に呟いた。するとその持っていた銃を見上げ、良く物色した後すぐに彼女はその複雑で簡素でこの世界には無い設計である“銃”を簡単に理解する。最早その能力は彼女にとっての魔法であった。
アンナ「まあ・・・良く分からないけど魔法武器ってことよね?じゃあ別に至って特別なことも無いわね」
そんな彼女は今度は星の信者、いわば敵に向かっていきなりパンパンと音を鳴らしながらそいつらに向かっていきなり撃ち始める。しかしそれは簡単に当たらないものの、なんとかコツを掴んだ彼女は一人ながらも当てて行った。