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第11話

そうだ、魔王城行こう。

僕はその気持ちでいっぱいで、目の前にいる敵なんてそれはもう気にしていなかった。

セカント「フハハハハ!!!勇者よ!ここまで来た事h「あぁごめんちょっと先行くわ。どいて?」・・・え?あ、あいつわが、吾輩の事を、え?二重人格キャラなのに?結構キャラ作りこだわって来たっていうのに?こういう幹部キャラでいずれにせよ勇者に倒される予定のキャラだったのに?イケメンキャラで視聴者搔っ攫おうと思ったのに?酷いよ・・・もう殺すしかなくなっちゃったよ」

だから目の前のインキュバスのなんか代表のそっくりイケメンも、隙を突いてすぐさまそこから進んだ。そんな困惑している代表のサインのそっくりさんを横目に。あ、ヤバい追いかけてきた。

クボウ「ここは決して「通せクボウ」

そしてオークにはさっきダウンロードした“雷電の一撃”を食らわせて、一時的に痺れさせた。まだ追ってくるアイツ。しかもなんか自分の服破ってウホッイイ男♡なボディを持ちながらすごい綺麗なフォームで、そして何より怖いのは真顔で追いかけて来てる事だった。すごいなこれがゲームだったらFPSとホラーとファンタジーを同時に楽しめるなんて、一粒で二度、いや三度おいしいという謎の現象が今起きてんな。まあ僕が原形を作ったんだけど完全にこの世界にいるチーターがなんか増やしたお陰でもはやかつてあったゲーム性が崩れて運営不可能の言い訳なんだけどね?

そんなこんなで僕はその敵たちをどんどんと抜かしていったおかげか、逆に玉座の間の前になると僕は既に囲まれていた。今度は中世の武器、何とか勝てないこともないものの、特に例の幹部二人が気になる。多分サインのパチモンのインキュバスはどこか魔法とか魔力とかを奪ってきそうな感があるし、そしてその後に多分オークの物理攻撃でやられる・・・のかもしれない。

僕はここまでかと思って、自分の日本刀を前に出す。ここで終わるのであれば、死中に活を見出すのみ。いや、そもそも死んだらこれまで積んできた選択と成果が全て無駄になる。星の信者から逃げて、神の庭園から逃げて、そして挙句の果てに今戦っているヴィトとアンナから逃げてきた。今日この日の為にその逃げる選択してきたんだ!魔王に頼まれて魔王を倒す為に、そしてあの一人の少女を解放するために僕は死ぬことができないのだ。

セカント(サイン)「もう逃げ道は無い。降伏か死を選ばせてやろう人間よ」

インキュバスの幹部が少し悪どいにやけ方をしながらそう言う、だが僕はそんな誘いには乗らない。

前原「フゥー・・・残念だけどその誘いには乗れないさ。サインさん」

するとその髪を長く、そしてオールバックにしたサインはそんな状況にも関わらず、すましたような顔をして、宣言する。

セカント(サイン)「よろしい・・・ならば無駄に、不名誉に死ねっ!」

前原「グラファイト・ブレットォォォッ!!」

その死ねと言う瞬間、彼は魔法を唱えつつ、指を拳銃のようにしてそのサインの方に向ける。その、周りが一気に向かって来た瞬間でもあった。そして指の少し先に弾丸が生成され、それは轟雷を挙げながらインキュバスの方へと向かっていく。しかしそいつもただそれを見ているだけではなくいきなり無数のコウモリと化してその弾丸を透き通した。まるで残像だと嗤っているように。

しかし、そんなことは周りにいる魔族達の猛撃によってそれは見えなくなっていった。そして僕はまずその攻撃の波を、体を低くして避ける。そして自分の能力、アルファ掲示板を開き、

~~~~~

ABS553“お使いください”

ブレンダー         ダウンロードする

モデル 拳銃        ダウンロードする

モデル アサルトライフル  ダウンロードする

モデル 手りゅう弾     ダウンロードする

テメエチート売りつけんなや!ワイは魔法求め天然。科学という名の魔法ちゃうねん・・・しかもブレンダー積んでるな!3Dでモデリングしたな!もうええわ後で運営に報告したろ。

~~~~~

前原「全く・・・しょうがないなクソッタレ!」ファン

そのモデルのボタンを押す。しかも飛びっ切り火力の或るアサルトライフルをポチって、目の前にそれを出すようにイメージする。すると目の前にはM4A1がいきなり現れ、彼の手元に召喚された。

前原はすぐさまそれを構え、そして乱射する。しかし不格好にもほどがあるほどの精度で、そして異世界人がよく知っている武器であるにも関わらず全くゴブリンには当たらない。むしろその上の空を切るばかりだった。

前原「ダメか・・・足狙わないと「コケ脅しがッ!」

その瞬間を狙っては、彼らがまた襲いかかる。しかし、前原悟の磨かれた剣捌きが光る、光る、キランとその炎と共に光る。彼は鞘に納めてあった刀を一気に抜き出し、そして先陣を切っていたゴブリンを下から上にザシュッと斬る。股から顔にかけて昇り龍のように上がるその銀色は、赤い血によって染められる。だけどもそれで終わりではなく、今度は後ろにいるゴブリンの腸を横に斬りつけた。

その瞬間、囲んでいたゴブリン達がまるで無双系のゲームのように吹っ飛ばされていく。大多数が同じような動きで吹っ飛ばされていく。

瞬く間にその包囲網は簡単に突破でき、暁にはその二人のよくある対照的な幹部の元にまでやって来た。

セカント(サイン)「雑魚どもを簡単に倒したとて、この私を簡単に倒すことは出来まい・・・死ぬが良いマエハラサトルッ!!その無駄な足掻きと共にッ!」

そう言っている瞬間も、僕はアルファ掲示板で新たなる出会い(魔法をダウンロードするための言い訳)を探していた。すると、面白い事が起きていた。

~~~~~

サラリー魔ン“これ使ってでもいいから早く来い”

浮遊 ダウンロードする

何だろうこのライバルの奴が共通のラスボス相手に互いに助け合うというムネアツ展開は。ありがたくダウンロードさせてもらうぜ!!魔王様ぁ!!

~~~~~

その瞬間、自分の身体はいきなり浮き始めた。いや違う、元々あったスピードに重力が追い付かなくなったように感じる。しかもどこかそいつら二人の高さよりも高くなっていた。

セカント(サイン)「ほう、まだ力を残していたか!ならばこちらも・・・はぁッ!」

するとそのインキュバスのサイン、またの名を単位円におけるy座標はいきなり黒い煙に包まれる。そして煙が晴れた瞬間、彼はなんとも言えない格好をしていた。黒のパンツ一丁にそのムキムキな胸筋を誇張するようなガーターベルト、そして肝心のイケメンな顔にはウサギ・・・を模したような耳を着けていた。そう、SMクラブのS役が良くするような姿形であった。そう・・・その姿はまさに

前原「尊厳破壊RTAかよ」

前原悟はその浮遊魔法をどうにか考えずにして解き、そして重力によって急降下していく。それと共に、僕はその落ちていく瞬間を狙ってうなじから背中に至るその背筋によって守られた脊髄を狙って、その落ちていく重みでおそらく大ダメージを与えた。僕が着陸した時にはゆっくり膝から崩れ落ち、そして両手を広げて爆発する。まるでスーパー戦隊もので怪人、まあ怪人SMインキュバスと言ってもさほど差はないな。まあそれを倒した後に決めポーズでスローモーション撮影になるような雰囲気だった。しかもさらに面白いのが隣で突っ立ってたオークのクボウすらも巻き込んでいった。

前原「えぇ・・・?巻き演出?」

彼は空を切って自分の刀を鞘に納めて走って行った。

~~~~~

僕は向かう、どこへか?玉座の間に、なんでか?社畜である、魔王であるアルティノの解放にだ。

そう考えながら、まっすぐ行って横に突き当たる扉、ここから先の部屋が確か魔王の椅子がある玉座、そう、決戦の場所が其処にあった筈だ。僕は重い、重い扉を何とか力を押して開けようとする。だけどもそれは明らかに魔族用、その中でも特にゴブリンやオークとかが数人がかりで押してやっと開くほどに重い。

するといきなりその大きな門は動く。横を見ると、

カカリ「一発賭けてやりましょうじゃないですか・・・!あなたに全部!」

まさかの魔王の護衛であるカカリがいた。さっき同じようにぶっ飛ばしたものの、それで記憶が吹っ飛んだかそれとも最初の時に死んだふりをしていた運のいいヤツか。しかしその魔族にとって敵の人間にいきなり手を貸すとは裏切りにもほどがある。

前原「なんで助けるんだ?」

カカリ「簡単な理由ですよ。あなたが絶対に魔王を倒すって、彼女を解放してくれるって確信があったんですよ」

いきなり突拍子もない事を言われる。もしかしてこいつ勝手に魔王の敵である勇者相手に絆が生まれたのか?

前原「え?だからなんで・・・「ステータスです!」

~~~~~

彼らが初めて会ったとき、それは一つの対立であった。その最中、魔王アルティノの護衛であるゴブリンのカカリは自分の魔法道具であるステータスが見えるメガネを元に彼のその特性を見ていた。それは目の前にいる者が持っていた冒険札よりも違う、完全に別物であった。

マエハラ サトル 23歳

体力 0.028F5C28F5C28F6→D

知力 0.1999999999999A→B

スキル:翻訳、アルファ掲示板、突進、統率、ワイルドホーンの呪い

カカリ「(一体どこの出身なんだ?あのニンゲン。明らかにこの大陸の出身ではない。もしかしたら彼こそが・・・)」

そう思ったカカリはメガネを外し、大きく息を切らした。

~~~~~

カカリ「あの時ですよ!」

そうだ。あの時だ、あの後ステータスの事を教えていた時だ。思い出した。なんだろうこの伏線回収がやって来た胸熱な展開は。そんな気分が、目の前の扉を押す力をさらに強くする。

前原「今言われても困るんだよぉ~!!!後から言ってくれよぉ~~~!」

しかしそれは余りにも場違いな物だった。されどこのドア、叫ぼうが暴れようがどうにも開かない。するとまた、今度はネチネチとガヴリがその隣にやってきては同じように押す…ようには見えなかった。いきなり引き始めたのだ。

ネチネチ「これ引き戸だぞ!ボケるなカカリ!」

まるで彼の頭がGalaxy Brain Memeとなりそうなほどである。そう、皆押戸だと思っていたが、まさかの引く方だった。僕達は勘違いしていたのだ。

そんな恥ずかしさを横目にその中に前原悟は入っていくのだった。これまで長かった・・・まずこの大陸に入ってきて早々面倒ごとに巻き込まれ、そしてフィリップの街で星の信者に銃で殺されかけ、そして魔王軍の猛攻をひらりとなんとかかわし切った。見れば自分の手には豆と血が混ざっている。

前原「全然俺TUEEEE出来てないじゃねえか・・・せめて一つ、いや二つぐらいやらないと・・・」

彼は肩で息をしながら、そして目が霞みながら籠手や大袖の紐を緩めて外していく。あまりにも今の彼にとっては重かったのだ。

アルティノ「遅かったじゃない。待ちくたびれたわ」

目の前にはぼやけているものの魔王が一人、そこに立っていた。

アルティノ「早く始めましょ?バカラ、そしてこういった方がいいかしら?次期魔王(さすがに5万字をとっくに過ぎてるから)」

そんな彼女の声を元に、僕はゆっくりと自分の刀を掴む。

前原「一発で終わらせる。安心してくれ、もう苦しい思いはさせない」

僕は彼女を安心させるようにそう言った。もう苦しい物は無い、ただ死を待つのみだ。そんな意味を込めて。

そして刹那、その刀を引き抜くとともに、彼女の首に向かってスパッと切る。そう、居合斬りの一発勝負だ。しかし、その刹那の一撃はキンッ!という金属音と共に、そして刀は彼女の首から数センチ空けたところで止まっていた。

前原「え?」

僕は驚きで思わず困惑していた。なぜなら先ほどまで猛威を奮っていた自分の剣が、彼女の首にすら通らなかったのだ。

アルティノ「やっぱり・・・マエハラでもっ・・・!私でもこの体に傷は・・・つかないのね」

彼女は涙ぐんで、いや手で涙を流した目を拭いながら言う。しかし僕は彼女をその見えない檻から解き放とうとすることを辞めない。今度は上から斧を振るように攻撃するも、それは四角形で、角ばる中にその剣を通らせなくする。そんな中、僕は一つの考えがよぎった。それはまさかの・・・

前原「もしかして・・・


Box colliderか?」

ボックスコライダー、それは立方体をした形の当たり判定を付与する物だが、その逆に範囲を数ミリ変えただけで攻撃が通らなかったり、逆に吹っ飛んだりするような物だ。今のこの刀で彼女にHPと言う名の数値の上でダメージは与えられるものの、それで生物的に死ぬという事ではない。つまりはずっと彼女に付いていた、誰からも殺されることのない呪い。

そしてその彼が考えるものと同時に思いついた物は、このゲームは未完成だったという事だ。これまで色々と、海が表面だけ波立っていたり、内部は空白の白い平面が広がっていたり、グリッドの升目が下に見えたりとその節はあった。だけどもこれで全て明らかになった。ただモデリングだけを数か月、数年もやっていたため、中はスッカスカの空白であったのだ。

そんな未完成な彼女は上を向く、まるで自分の何か呪いが言い渡されたかのように。

アルティノ「知ってたの?」

彼女はそんな事を言う。そして少しはぁはぁと呼吸する回数が少しずつ増えていく。そしてその音も次第に大きくなっていく。

前原「あぁ、僕がこの世界(ゲーム)を作ったからさ」

その音が切れる瞬間、彼女はいきなり頭に血が昇っていた。

アルティノ「・・・た?」

前原「?」

僕は彼女の言っている事が聞こえなかったので、もう一度耳を傾けて聞く。見れば彼女はどこか白髪で赤眼となっている。

アルティノ「じゃあなぜ私にその呪いをかけたっ!!!」

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