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第3話

~神の庭園総本山~

アルペン「ここを絶対に死守するぞ!セシリア様には魔族共の汚い指一本すら触れさせるな!!」

人間族の声が、叫ぶ言葉が一体にその場所で聞こえてくる。

そんな一つの騒動が起きたアバドン生命の樹魔法学園からアイセラ大陸の中央、いわば神の庭園にて思いもよらない者達が押しかけていた。そう、神の庭園の者達は決して受け付けないであろう魔族達がその総本山併設の検問所、いわばこの大陸における最大の国境に迫っていた。彼らは逃げてきたのか、いや違う。彼らは怒りで今ここに、そしてさらにその場所を超えてまで、人類王国へと進攻しようとしていた。魔王亡き今、彼らはもう誰にも縛られず、誰も指示する者も居ない。されど彼らには一つの共通した目的があった。

魔族達「我らの子達の弔いに!尊厳を犯した人間共に成敗を!」

魔族にしか分からないその言葉で、皆口々にそう言う。彼らは先のとある者による魔王の討伐、そして中心都市であるフィリップにて起きたあの凄惨なる事件の元に彼らは集まったのだ。

~最上階~

セシリア「あぁぁぁぁぁヤバいやばいやばい!なんで?え、なんで?なんで一部の信者がやったことなのにいっつも全員が悪いように見られてるの?もう本当に脳みそ大陸平面説じゃん・・・どうしよ・・・?もう私逃げよっかな?うん、逃げよう!そうした方が良いしもう凌望さんの所に行こう!」

その何も知らない神の代行者は、凄く焦っていて、そして信者に護衛される中安全な場所へと向かっていく。

~~~~~

そんな彼らはもう、止まる事の出来ない戦いがそこにある。魔族領の国境に神の庭園の親衛隊たちは終結し、皆先端に青い大きな球がある長く白い魔法の杖をライフルのように向けながら各々自分の頭でそこ発射するイメージを模している。力、方向、距離、そんな事を皆考えてはその反動で自分に魔法が掛からないように何とかコントロールをして、その前線にいる人間たちはヒュンヒュンヒュンとそれを向ける。それは人間達にとっては回復の魔法と等しい物だが、魔族にとっては一瞬でその体が消え去ってしまう代物であり、既に襲い掛かってきている魔族達の前列は触れた瞬間にそこからいなくなった。されどそれに対しての恐怖心はおろか、一矢報いる気の方が大きすぎた魔族達は収まらない。皆我の屍を超えてゆけという精神であった。

アルペン「2列目構えぇーーーーー!!撃てぇーーーーー!」

その号令が今、神の庭園親衛隊隊長のアルペンから発せられる。まるで18世紀の戦列歩兵における士官のポジションに構え、そして彼らの横でそんな異世界における“マスケット銃”を持っていない。その瞬間、またもう一度青い弾丸をその魔族共に浴びせた。何とか堪えきっているものの、それは水際に追い回されている。すると、その異世界のマスケット銃とは思いっきり格の違いを見せつける物が、

バァン!

アルペン「な・・・何?」

その護衛隊長であるアルペンの耳を掠った。その瞬間彼は倒れ、そして指示系統が崩れたコンマ数秒、一気に魔族達はその戦列歩兵の元に突貫してきた。

「我の血に巡りし肉体の精霊よ!我が血肉に大いなる力を与え給え!」

そんな事を魔族の言葉で先頭にいる小さな体格のゴブリンは叫んだ。どうせ死ぬ命だ、死して活を見出すぞ。というようなつもりでそんな魔法を目の前の兵士に繰り出すのだから。そのおかげで想像して撃つことが出来ないのだ。そんな物だからその呪文を唱えている奴が完全に先頭の指揮と皆の士気をとって突破していった。そして後ろにいる者達は突破された瞬間一気にその列を囲み、特に黒い謎の筒を持った者はその白い服の信者達に向けてそれを向け、

「我が星を罰したことに懺悔しろ。今度はお前らがドブネズミみてぇな薄暗ぇ汚ぇゴミのような分際だ。」

そんな事を呟いた瞬間、頭の中で想像して撃った青い玉よりも数百倍簡単にその弾丸を

バン・・・バン!

と二発、その頭にかち入れる。

「もしもしABSさん?今検問突破したところです」

すると、そんな独り言を持っているペンダントに向かっていきなり喋り始めた。するとその独り言を言われたペンダントはいきなりそれに返答し始めた。そう、その文学的なメガネ少女の写真が入った物は通信機だったのだ。

~星の信者 総本部~

その直下、いわば星の信者の総本部に当る所で、その若干機械じみた無線のような声が聞こえる。それはまさしく上で起きている、神の庭園での襲撃による検問突破の報告であった。

ABS553「確認した。よくやった。これで死した我が星も天で見ているだろう。」

そんな親愛なる過激な信者への真っ赤な嘘をそれぞれのペンダントから遠隔で映し出したマルチモニターを介して伝える。そのペンダントの先の様子を映し出した複数、いや数十の水晶から宙に浮いた長方形の白いモニターから。そう、ここはまさに多数の信者の彼の妹の写真が埋め込まれたAR上に出されたモニターだらけの部屋、まるでジョージオーウェルの『1984』に出てきた愛情省、いや監視社会のメタファーなのかその各々が何をやっているのか、何を見ているのか、何を話しているのかは全て筒抜けであった。

ABS553「さて・・・次のフェーズ・・・フェーズ3ですね。これまで我が星は魔王を倒し、それを私、いいや私達はその凱旋記を動く画で語り継ぐ・・・あなた達の言葉で言う所の“ライブ配信”という形でこの大陸中の至る所に設置した水晶玉から放送させていただきました。その後我が星である前原悟はその場から離れて・・・まあ悔しいことに崖から落ちて死んだ・・・まあそんなね、誰かさんの事は置いておいて我々の次の計画は再興・・・言ったら前原悟さんをこの世界において絶対的な主人公として立てて、まあ・・・なんていうんでしょうか・・・このゲームを完全に前原悟さんにとって何もが都合のいい世界を作るために、そしてその周りにはその主人公を崇めるだけの存在だけを配置する・・・彼と星の信者のみが存在して、ただ彼が自分が天から授かったと錯覚したチート能力に酔いしれ、そして大きな力を前に立ちふさがり、その様に女性達はメロメロに・・・う~んいいですねぇこの手のお話は嫌いではございませんよ?むしろ大好物でございます。だからまあだからもういっそこの世界を全部





綺麗サッパリ破壊してしまいましょう。誰が作ったのか分からない、このいびつで複雑なこの世界を。」

その男は自分の顔からメガネという自分の顔にあるパーツを取り外し、そして今これを読んでいる者達に向かってそう呟いた。まるでこの後の余興をお楽しみくださいというように。

ABS553「この世界には絶対的な支配が必要なのです。あのような魔族の小娘が行う暴力的な政治ではなく、人間と神の庭園のよる“超科学的な魔法”でも無く、科学的な絶対を。」

~王都グライムス~

その余興は、二次会は人類王国の王都、グライムスにまでそれは波及する。

凌望「それじゃあちょっと儂、久しぶりに酒でも飲んで来るわい。色々とストックしとった物があるからなぁ。ざっと数十年前ぐらいのだけどな?」

その槍と剣を持った親娘は、その路上で分かれる。

凌雨華「はぁ。まったく・・・今後もあるんだから飲み過ぎないようにね?」

そんな他愛もない事を言っては、そう言って凌望という彼女の父親であり、そして剣の達人はその冒険者会へと向かって行った。どうやら酒瓶を貯めていた、という事は彼女が生まれたその今の今まで何も知らなかったようだった。最後に明かされた事実、そんな事を感じていた。

~路地裏~

JNI60「おーい待ってくれ!ちょっとー?おーい!まってくれ・・・」

その一人の騎士団の男が、もう一人のバディを見つけて止める。しかし、そのバディとやらはなぜか黒色のローブを身に纏っていた。その騎士団のような格好とは違って。

JNI60「行ったかと思ったよ。NTR80(寝取られエイティ)」

するとその黒いローブの男は立ち止まり、その黒いローブの中から何かをだした。星の信者達が共通して持っているとされる魔法道具、それも現実世界で言う所の銃だった。

NTR80「とんでもねぇ。待ってたんだ」

その瞬間、手にある魔法道具からボボボボボォーん!!と連続して、そしてオレンジ色の炎を出しながら、音速をもはるかに超えるスピードで彼の体に当っていく。

JNI60「うぉぉぉあぁぁうぅぅぅ!!!」

そんな断末魔を挙げながらそのまま倒れていった。

~~~~~

そんな金切り声のような悶絶はその中で反射する事も無く、凌望。追放されていたが三年前に自由の身となった男はその鈍った感性で全く気づいていない。そんな最中、その事件が起きた路地の隣にある冒険者会は何の変哲は全くにせよ無く営業中だった。

凌望「いや~店主さん久しぶり久しぶり」

その後ろを向いている店主、いわば前原悟と凌望のどちらをも知っている男が振り向く。するといきなり何食わぬ顔で、ポーカーフェイスのようにしてすぐさま奥手にある棚から数本、業務用角瓶5ラーテル、とそして小さくウィスキーとアイセラ語で書かれている角型ボトルと、炭酸水と書かれたボトル、そして取っ手のついた樽状のタンブラーであった。

「はいよ、“いつもの”ね」

どこか後ろでてってってーというフリーなbgmが店内で流れていそうな雰囲気であった。

すると目の前のマスターはいきなりそのタンブラー兼ジョッキに氷を入れ始める。そしてまず凌望はそのグラスの中にその業務用角瓶とラベルに書かれたそのお酒をコポコポと注ぎ、そして炭酸水をちょっぴり、いやそれより少し多めにかさましするように足した。

「うっす、体調悪いんか?」

しかしそれはマスターに少し煽られる。それは何か彼の人生RTAを強く進めている感じであった。

凌望「うーん・・・だって年だからのぉ・・・トリスさん」

トリス「人をその名前で呼ぶな凌望さん。あんただって追われの身だろ?」

凌望「あぁ、自由の身になった。どうやら誰かさんが魔王を倒したらしくt「あぁ、冒険者会でもそれっきりの話だ。巷じゃ“案外魔王と言う存在は全然怖くなかった”だとか、“鉄女3人衆”だとか、面白かったのは“名無しの伝説”が居ただとか言われてるけど、明らかに違ぇのは分かってるんだ」

ジョッキをカラカラと横に揺らす凌望は、そんな明らかに他愛もない話に耳を傾ける。

凌望「どうして?」

するとマスターのトリスさんは何も言わずに、凌望を超えた後ろにあるその水晶を指差した。そう、その水晶、三年前の時、あの時あの水晶では3年前に凌望の見た様子と瓜二つの物が同じときに違う場所で、すべてその水晶から流れていた物だ。

トリス「あの時をよく覚えてるさ。朝、開店して間もない頃だったかな?一人変な鎧を着けて、変に少しだけ曲がってる剣を着けて、しかもだぞ?うちの二つとも無い超高精度な魔力探知器をぶっ壊した挙句の果てに自分の体力と知力が0になってたってことでうなだれた奴がな?いつの間にか、顔も覚えていない奴からなんか度胸試しのつもりで金貨100枚で買った水晶が映した変なパネルの中で戦ってるのを見たんだよ」

するとそれを聞いていた凌望、自分のカラカラと揺れる氷が入ったジョッキを排水溝のような音で飲みながらその眼で目の前にいるトリスさんを睨むように見る。そう、彼はその男を酷く覚えているのだ。しかも自分が昔使っていた甲冑まで拝借して使っていたのだから、正直ちょっと頭に来ていた。

凌望「その男の名は?」

トリス「いや、その名前はこっちのアレコレで「もしかしてマエハラサトr」

ボォォォォン!!

~~~~~

その瞬間、いきなりアイセラ大陸東側の至る所で大きな爆発音が鳴った。ミショーン、ハーシェル、ユージーン、エイブラハム、ストゥーキー、そして神の庭園総本山。魔法とは違う、大きく黒い煙の立つ爆発音が。


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