前原「君たちすぐに部屋戻って!鍵かけて絶対出ないで!」
ルナ「マ?テンションバリ下がるんですけど~」
前原「いいからすぐにここから逃げて!」
その二人組をそこから離れさせるように言う。被害者を減らすためだからだ。あの日あの時見た僕だけが知っているあの武器をまさか3年後にもう一度見るとは思いもよらなかった。絶対アイツ(ABS553)だ。絶対アイツがどっかで僕が生きてる情報を手に入れて・・・いやこっちが開示したんだった。
その瞬間、またドドドドドッと高速で連続した音が目の前からやって来た。見ると学生服を着た生徒、いや信者が二人、いきなりそのライフル、M4A1、そして短機関銃であるをこちらに向けて撃って来る。そうして逃げ遅れた大多数の生徒達はその餌食となっていく。そしてやっと事態の重大さに本能を以て気づいたのか皆蜘蛛の子を散らすようにして逃げ始める。僕はと言うとその人の波に押されて、自分のフード付きのローブが外れ、そして転んで大多数の足に踏まれる。されど銃撃は鳴りやまず、次々と僕を蹴飛ばしていった人たちが血を出して倒れていった。
前原「落ち着いてっ・・・!冷静n「殺されるぞ!逃げろ!」
その声は踏みつける足達によって遮られ、そして僕の上には血と死体も降って来る。銃乱射する音は、コツコツとした足音となって近づいていく。まるで何か、その闇の武器の獲物を選んでいるかのように。
スクールシューティング、その始まりは常に小さな小競り合いの発展。まるで何か、さきほどの長髪の男による何かも最初から仕組まれていたかのような事も思えてきた。そしてその足音と共に、また同じように銃声がそこかしこで聞こえてくる。
「助けてください、開けてください」
その声の後にいつもなるのは変わりない。銃声であった。もう見ていられない、止まっていられない。自分の手には今、その無惨にも僕の上に積まれた、僕の授業を取っていた学生の死体の下で少し決意を出す。この学園を守る為に、その学ぶ者を守る為に今立ち上がる。
前原「うおぁぁぁぁぁぁ!星の信者のクソッタレがぁぁ!!!!」
そう言いながら学生の血に塗られた拳銃をバンッ・・・バンッ・・・と彼らの物とは少し遅いペースでそれを少しに斜めにしながら撃つ。両手でそれを掴み、そしてその銃を、同じような物を持っている奴に向かってゆっくりとトリガーを握る。されどもそれは大きな反動があった。そのおかげか仕留めきれずに気づかれて、まるで某蛇のゲームのようにアラートがかかった状態になってしまった。その瞬間、二人の男はこちらに気づいたようで腰撃ちの体勢のまま近づいてやって来る。そのブーツの音と、コロコロとそれによって転がる薬莢の音と共に。緊迫する様なその瞬間、ゲームや映画においてはもってこいのお決まりイピカイェ展開だが、実際にその現場にいるとなると無限に鼓動が止まらない。呼吸もだんだん早くなっていく。まるで袋詰めの獲物で、もう死ぬしかないような感じがした。でもそれ以上にどこか、何か興奮する自分がそこにいた。
「誰も助けには来ない。出てこい、仲間の所に行こう」
そんな優しい声がしていた。
もう一人がそんな優しい声で迫って来る。まるで昔の金曜ロードショーでやっていた刑事とテロリストとの戦いで最初に死んだ誰かの弟のトニーさんみたいに。恐らくメガネをかけた金髪だろう。その時、ガチャッと音がしたその時、
「出てきたら殺しはしない」
ババババババ!
すると、腰撃ちのまま照準を向けて、バラバラと弾を撃つ。だけどもそこに前原悟どころか塵一つ誰も居ない。その瞬間、前原悟は柱の後ろに回り込み、そいつの首の後ろの付け根辺りに突き付けた。もう一人の方はその自分のM4A1を前原悟に微動だにせず向ける。どうやらこのたった3年間で明らかに練度と装備が強くなっている。この道十年の癖してセーフティがかかってるようなベテラン(ルーキー)ももういないだろう。だが、こっちの方が上だ。
前原「銃を下ろせ。仲間に伝えろ」
僕はそうやって言う。しかしそいつは簡単に下ろしたりしない。
「その声はもしかして、我が星のマエハラサトル様でありますか?」
しかし、そこで目の前の男がそう言いながらスリングという掛け紐が付いた銃から離して両手を上げる。だけども僕と僕に銃を向けている男は依然頑なに下げない。
前原「どうでもいいそんな事は。早く銃を下ろせと言え」
すると案外あっさりと言ったのか、左の指を5本揃えて合図する。するともう一人はちゃんと下ろしてくれた。そして目の前の男がくるりと振り返ると、その顔が露わになった。そう、その顔。どこかで見覚えがある、そうだ!騎士団の衛兵の奴だ!
NTR80「あぁ、やっぱりあなたでしたか。我が星よ、この世界を去ったと聞かされた時は心底悲しみましたよ。我々の祈る力が無くなって、星の元に帰って行ってしまったかと」
その時、僕の銃を握る手はどこか不自然に震えていた。もしかしてこいつは、こいつらは僕を殺すために来たのか?それだったらもうすでにやっている。じゃあなんだ?
その男は笑わぬ目と口角を釣り上げており、どこか怖さを感じるような物である。
NTR80「それで、我々に少し“お恵み”を・・・とまでは行きませんが少し協力をしてほしいという事をね、お伝えしにきたつもりで「協力?」
その言葉に首を傾げる。なぜならこの惨状を引き起こしたのにもかかわらず、まだ協力と戯言を吐いているのだ。こんな惨状を、被害を生んでおいて協力だなんて、星の信者もテロ組織へと堕ちた者だ。
NTR80「これ以上被害を出したくないなら俺たちに協力しろという事です。OK?」
そのOKという言葉。まるで最初に頭を撃たれる奴の常套句に見えた。
前原「OK!」ズドン!
コマンドーのメイトリックス大佐の様にOKという迫真の演技をすると、僕はその引き金を引いて、そして発射されたそれはそいつの頭に直撃してマネキンのように倒れていく。するとその惨状を見ていた横のM4A1を持った奴はまたもう一度こちらに向けて、引き金を、グリップを握った。だけども僕の方が少し早かったのか、そして躊躇されたのかこっちが撃ちぬいた。二人はいきなりスローモーションで倒れるようにして、落ちていった。僕はすぐに二つのライフルとサブマシンガンを手に取り、まるで自分が覚えていたかのように持っていく。そして一つの騒動が終わった時、皆そこから顔を出し始めた。
「あーヤバいまだいる!」
だけども怖がらせてしまったのか、また隠れてしまう。
前原「大丈夫!今終わったから出て来て良いよ!」
僕はそうやって廊下に響き渡るほどの声を張り上げ、皆を誘導させる。すると、その出てきた衆の中にカーン講師がいた。しかし、
「あいつだ!あいつが俺たちの友達を殺して行った殺人鬼だ!」
そんな血の気が多い生徒たちが僕を囲む様にして走ってきた。どうやら自分が持っている“それ”を目にして、こいつが犯人だと思ったのだろう。そうやって誤認した正義が執行されるその瞬間、僕の目の前が白いスクリーンで覆われた。アルファ掲示板を大きくした様なものじゃない。まるで白いモヤっとした物。寒気、そう寒波だった。
カーン「こちらに!」
僕はその声に導かれるまま、横を通り抜けていく。あたりは完全に冷え込み、そしてだんだん風上の方へと上がっていく。草の匂い、葉っぱの匂いだ。その寒波から逃れ、目を開くと、カーン講師と二人っきりであった。しかもそこは木の上。今にも落ちそう・・・いや玉ヒュンとなって落ちる直前、教授に手を掴まれた。
カーン「安心してください、ここはアバドン生命の樹でございます。ここまでは流石の学生も来ることは出来ませんから」
そこから眺めると、その周りにいた人間、いやごく少数だが魔族もいる人だかりが二手に分かれて探し始めた。どうやら撒けたようだ。
前原「そうですか・・・」
僕は腑に落ちない程の大きくため息を吐いて、一つある事を考える。この襲撃は終わらない。逆に一瞬で制圧されてしまう。そんな事から一つ、反攻作戦を今、考えていた。その決意した顔を、その後世に残すべき人に向かってする。
前原「カーンさん、いや、アバドン生命の木ゴールド講師@月曜一限さん。僕はかつて死にかけて、そして偶然にも関わらずここに来ました。だけども、僕は多分行かないといけないかもしれません」
カーン「ほぉ・・・どうしてとかは聞くことは「決着です」?」
初老の男、カーン講師は少し何か目の前にいる男の印象が変わるのが見えた。それはあの時から目の下にクマを飼っていたような、もうすでに死にかけそうな男から一転、かつてのあの画面から見た、魔王を制した者にその目だけが変わっていく。
前原「こんな事をする奴は一人しかいませんし、そして自分的には絶対に許せないです。僕が、僕だけがこれに至った責任を果たしに、全てを終わらせに行ってきます」
その宣言をしている時、この魔法学園においても随一の脳、いや賢を誇るカーンさんはポカンと目を点にしている。
カーン「え・・・?つまりは少しの間、教職を離れるという事ですか?」
前原「ええ、それ以上にもそれ以下にも。だけども一つだけ、一つだけ言えることは・・・全部仕組まれてたんです。あのABS553にっ!」
そう宣言した時、僕はもう死に活を見出していた状況であり、それゆえに覚悟は決まっていた。そしてもう後戻りはできないと告げて、その木から滑り降りた。向かう先は星の信者総本部、そう、“アイツ”のいる所だ。そうやって筋肉工学科教師がその魔法学園の壁に向かう。
カーン「あ!逆ですよ!」
間違えた。気を取り直したその先、二人の死体、片方は確かNTR80だとかいうふざけた名前を言っていた筈、その内から一つ、首にかけてあったペンダントをぶちっと蛮族のようにもぎ取って、そして僕は学園内にある一部の生徒に知られていない秘密の抜け道、血みどろで寒い廊下を抜けて暑い浜にやって来た。そして広い海、その上にこの学園を囲んでいる霧へ、傍に置いてあった小さなボート、まあ手漕ぎの物と共にすすんで行く。その傍に置いたのは鹵獲した二つの長物と、誰かが置いて行った魔法の杖、それと
はじけろ!筋肉!飛び散れ!汗!これがTHE肉体派・マエハラサトルの神髄だッ!銃で撃たれても、崖から落ちてもビクともしねえ!筋肉工学教師はタフネス設計!(※本人による自己設計です。)愛するこの土地を救うため、一人、敵のアジトに殴りこむ!
そんな木曜洋画劇場のCMを挟んだところで、男のボートは丁度大陸と西の魔法学園の真ん中にいた。正直人間の体力で、食料なしでここまで来れるなんて当然思っていないが。
~アルファ掲示板~
マエハラサトル“ABS553、お前だよな?こんな事したの?”
ABS553“さあ?私は何も心当たりは無いですよ?”
マエハラサトル“嘘吐いてんじゃね~よこの野郎。何だお前いきなりアバドン生命の樹魔法学園に銃を持ち込んだのは分かってるんだぞ?”
ABS553“証拠は?無いじゃないですか”
そんな風にシラを切り、うかうかとほくそ笑んでるのが簡単に予想出来るその元に、アバドン生命の樹ゴールド講師@月曜一限という、ふざけた名前をしたカーン講師が一つ写真をそこに投下した。それは血に塗られた廊下の上に乗っている二人の黒いローブの男の死体を映したものだ。そんな即時ポッカキット案件の写真を見た彼らは、
信者どもは貢ぐべし“え?私もこういう人たちがなんか変な武器を持っていたのを見たわ。その先端から大きな炎と一緒に爆音が響いていたわ!あれって結局なんなの?”
そうすると、さっきまで僕の方に食いついていた一匹の魚、その名もセシリアさんが別の方へと疑念を動かしているのが見えた。
マエハラサトル“あれは”銃“っていう道具です。魔法を使わず、指の動き一つで簡単に殺傷力の或る物体を射出する物であります。”
信者どもは貢ぐべし“良く分からないわ。それの何が脅威なの?簡単に魔法を使えばいいじゃない”
こいつ・・・何もわかってないな。
マエハラサトル“あのねセシ・・・信者どもは貢ぐべしさん?その物体の射出一つで死ぬかもしれないんですよ?”
アバドン生命の樹ゴールド講師@月曜一限“しかもですね、魔法の三原則なんて使わない者でして、それが大陸中に広まると新たな脅威となるわけですよ。それはですね、魔法という名の学問の衰退もございますし、そしてもう一つ、簡単に国家なんて転覆出来てしまいますよ?”
信者どもは貢ぐべし“なんで?”
アバドン生命の樹ゴールド講師@月曜一限“この目で見ました。私の生徒達が簡単に倒れていく様子を”
そう綴られた瞬間、ABS553は奇怪な物をいきなり投稿する。
ABS553“すべての者に告ぐ。
時は満ちた。再構築の時だ。“