「消しっ――飛べえぇぇ‼」
アオは爆発を強くイメージする。するとそのイメージ通り、的に当たった瞬間に爆発が起きた。その爆発は指向性を持ち、その的とその奥にある的のみ吹き飛ばす。
こうすることによって、アオは爆発の被害を受けない。
その後アオはアサリナ達の視界から消えるような速さで動き、爆発の方向には無かった的を杖で叩き壊す。
アサリナ達が再びアオの姿を捉えた頃には、全ての的は砕かれていた。
「……かっけえ」
なんとか出せた言葉はそれだけのクレピス。
「おおー……ぶとー派だあ」
若干引いた様子のアサリナ。
「丈夫だ、壊れる気がしない」
傷一つついていない杖を、目を丸くして見ているアオ。
そんなアオが二人の下へ戻って来る。
「問題無い、これで大丈夫」
結局魔力の維持はできなかったのだ。
「いや、念のため強度を最高にする」
「じゃあお願い」
輝いた目で見てきたことに微苦笑をしながら、アオは杖を預ける。クレピスは今にもスキップしてしまいそうな足取りで梯子を上る。
「アオってほんとーに凄いよね、これなら心配無いかも。杖の調整が終われば、もう今日は休もーね。明日に備えて、探しに行くんでしょー?」
二人になったことで、アサリナはアオの目的のことを話し始める。
「え、明日から行けるの⁉」
もう何日かかかると思っていたが、こうもすぐに探しに行けるとは願っても無いことだった。
「多分、ルドベキア次第だけど。あたしの方から事情話してもいい?」
「いいけど……わたしも一緒に行った方がいいんじゃない?」
アサリナを信用していないということではないのだが、せっかくならアオから話した方が手っ取り早い気もする。
アサリナは少し悩んだ後そうしようと言ってくれた。そしてそのタイミングで杖を持ってクレピスが戻って来た。
「試してくれ!」
クレピスの輝く目に負け、アオは渋々もう一度的を破壊する。魔力が無くなったため、爆破はできないが、再び一瞬で的を砕いたアオ。
「うん問題無い。ありがと、調整してくれて」
まだ見たそうにしているクレピスだったが、残念ながらもうこれ以上この場に留まる理由は無い。三人は工房から出て行き、風呂に入ると言って、アオはアサリナと二人になった。
「今は結構夜?」
「まだまだ日は跨いでないと思うよ」
そもそもこの世界には時間という概念はあるのだろうか。それが分からなかったため、こんな言い方をしたのだが、アオの事情を知っているアサリナになら別に濁さず言ってもよかったのかもしれない。
「そうなんだ。ここって風呂があるの?」
「あるよー。お風呂に入ってからルドベキアのとこ行こーか」
そう決め、アサリナとアオはクレピスに言った通り風呂へと向かうのだった。