翌朝、早々に起こしにやって来たアサリナに連れられて準備をしたアオ。
時はまだ朝日が顔を出した頃、世の中はまだ静かな時だ。
「みんなにはアオの修行の旅って伝えてもらうからねー」
「なんで……いや、別にいいんだけど」
どうせ秘密にしている方がカッコいいからとかそんな理由だろう。まだアサリナ達と出会って日は浅いが、大体の人となりは把握したつもりだ。
「もしとんでもないことが起こったらルドベキアに連絡すればいーから」
昨日、アオとアサリナはそれぞれ、ルドベキアから革でできた袋を貰っていた。
その袋はルドベキアの魔法で、この塔と繋がっているらしく、袋に入る物ならとりだすことはできるし、非常時にその袋からルドベキアに対して声を届けることができるという、旅の難易度が格段に下がるという便利な物だ。それ以外のものは鞄の中に詰め込んでいる。
そして移動はアサリナの箒に乗って二人で移動する。
最初来た時と同じように塔の頂上にやって来る。見送りは誰もいない。
出発前に、アサリナがテストと称して、貰った袋に向かって叫ぶ。
「いってきまーす‼」
『うるさい!』
「ちゃんと聞こえてるみたい」
問題無くルドベキアと繋がっているらしい。これで出発することができる。旅の前という雰囲気は無く、ちょっと近所まで出かける調子でアサリナが杖を箒にする。
アオも杖を持って、アサリナの手を借りて箒に乗る。
「しゅっぱーっつ!」
まだ静まり返った街に、吹き抜ける冷たい風と共に、アオとアサリナはソーエンスから飛び立つのだった。