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第92話

 越えるべき山の麓までやって来たアオとアサリナ。一度箒を止め、離れたところで休憩をとる。


「この山を越えた先、どーなってるかあたしも分からない」


 アサリナは真剣な顔で話し始める。


 ここから先どうなっているのか、話は聞いたことあるが、見たことは無い。


 そのことをまずアオに伝える。


「でも、そう変わらないらしいよ。ちけーとか、植物とかは色々違うとはきーてるけどね」

「動物も変わるのかな?」


 確かにスズメはこの地域にはいない動物だったはずだ。


「変わるだろーね。あとはー、どーぶつ以外にも、物騒な場所はあったりするらしーから、そこはちゅーいしてね」


 治安が悪い場所はあるということだ。注意がは、動物だけでなく、人間相手にも必要ということだ。


 特段気をつけることといえば、そういう所ぐらいだろうか。行く前にそうだと思っていても、実際に行ってみなければ分からないだろう。


 一応、なにが起きても大丈夫なように心の準備はしておくアオである。


 スイがいるであろう祭壇まで、距離だけで見れば後二日程で到着することができる。果たして、予定通りに進むことができるのか、なにかトラブルに巻き込まれるのだろうか。


 これまで巡った世界での経験上、なにかアオに対して不利なことが起きるはずだと踏んでいる。それらしき出来事は未だに起きていない。それが起きるのはスイを見つける前か後か、それに加え、スイの『哀』の感情を解放するにはどうすればいいのか。


 アオ自身のこと以外にも考えることは多い。それらを同時に考えるなんてできやしない、目の前にあるものから順番に片づけるだけだ。


「分かった。じゃあ行こう」

「りょーかい。山を越えたら、こまめにきゅーけい挟むから心配しないでねー」


 二人を乗せた箒が、アオの仙術により姿を消して飛び発つ。


 すっかり集中モードに入ったアオを確認すると、アサリナはギリギリ山道が見える高さを維持して、山越えを始めるのだった。

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