「あー! 終わったー‼」
全てが終わった後、アサリナが大きく伸びをして笑う。
「一時はどーなっちゃうかって思ったけどー! 無事で良かったー‼」
――と、喜んでいるのはアサリナ一人だけだった。
アオとスイは、二人の世界を作り、アサリナなんて眼中になかった。
――丸一日凹んでいたのに。
そう言ってやりたかったが、なにごとも無く再会できたことに安堵した気持ちもあるためなにも言わない。
二人を放っておいてアサリナは、中央の魔法使いの女がかけた隠匿の魔法の効果がまだあるし転移魔法で迎えに来てくれるだろうか、と思いながらルドベキアに連絡することにした。
「ルドベキアー? 終わったよー! そしてなんと! 神を倒しちゃいましたー!」
そう袋に言ってからしばらくして、ため息をつきながら声が聞こえた。
『……………………遅かったな』
「え、あーごめんごめん。けっこーじゅんちょーだったから連絡してなかったー」
『まあ、無事ならそれでいい。今どこだ? 迎えに行く』
「やったー! ドゥッツの祭壇近く。ちゅーおーの人が隠匿してくれているから転移で迎えに来てほしーかな」
『隠匿されていたら分からん。分かるところに出てくれ』
「えっ、そーなの? 分かったー、いどーするね」
二人を放って、アサリナは魔法効果外へ出る。
『おっ、いたな』
そう言ってすぐ、空間からルドベキアが出てきた。
「凄い久しぶりな感じー」
「久しぶりだからな」
そう答えるルドベキアはどこか疲れた様子だった。
なにかあったのかと気になったアサリナだったが、ルドベキアがアオの下へ向かったのを見て追いかける。
「アオ、どうだ?」
突然現れたルドベキアの姿に驚くことなく、笑顔のアオは答える。
「バッチリ、ありがとう」
少し警戒するスイを後ろに庇いながら答える。
「それは良かった、じゃあ帰るぞ。面倒ごとだ、聞きたいことがる」
「面倒ごと……?」
怪訝な顔で返すアオを放って、ルドベキア眠っている巫女四人と魔法使いの女を持ち上げる。
「まずは帰ってからだ」
「え、うん。スイ、行こ」
こくりと頷いたスイを連れて、足早に移動したルドベキアを追いかける。
ルドベキアがソーエンスに先に転移する。アサリナはアオ達を待っている。
「どーしたんだろ?」
「分からない」
スイを助け出せたのだから後は『哀』の感情を解放するだけのはずだ。なにかトラブルが起きても、もう関係無いはずなのだ。
「とりあえず、行こっか」
「うん」
アサリナに続いて、アオとスイも転移する。歩いた先は、ルドベキアの部屋だ。
今までの旅がまるで夢だと思ってしまう。だけど、手に感じるぬくもりがそれを否定してくれる。
「よお、アオ。探したぜ」
どこか軽薄で、おちゃらけているような男の声。
「…………嘘」
くすんだ金色の髪、口調とは裏腹に鋭い目。
「モルフ……」
血の気が引いていく。なぜここにいるのか。
この光景が悪夢であってほしかった。そう思ってしまったアオである。
「知り合い?」
「アオ? 大丈夫?」
アサリナとスイの問い掛けに、アオは答えることはできない。
「アオ。疲れているだろうがすまない」
ルドベキアの言葉が、アオがここから逃げることを許さなかった。