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第107話

 アオ達に休むように言った後、ルドベキアは回収してきた巫女と中央の魔法使いの女を見てどうしたものかと悩む。巫女達はソーエンスの街で保護してどうにでもできるが、問題はこの魔法使いの女だ。


 保護しようにも間違いなく反発するだろうし、暴れかねない。中央にポイ捨てでもしてこようとも思ったが、それはそれで問題になりそうだ。だからといって殺すこともできない。


「イエーラと話してみるか……」


 いけ好かない女だが、他の中央の魔法使いに比べて話は通じるだろうし、イエーラの命令なら聞くだろう。これが一番穏便に事態を収束させる方法だとルドベキアは考えた。


 そうと決まれば早速向かった方がいいだろう。いつこの魔法使いの女が目を覚ますか分からない。うるさい相手はできるだけ少ない方がいい。


 とりあえず中央に行く旨を伝えてから行こうとルドベキアは転移をしようとしたが、胸騒ぎを感じて転移先を覗き見る。とりあえずラグルスかニゲラ辺りに伝えればいいかと思っていたが、二人だけでなく一つの部屋に全員が集合していた。その全員は、ソーエンスの魔法使い、盗賊団一行に、アオとスイもいる。文字通りの全員集合していた。


「マジか……」


 重い息を吐いて、ルドベキアは騒ぎの渦中に転移する。



 ――まさかモルフ以外にもいたとは。


 それがアオの思ったことだった。


 部屋に戻ってスイと休もうとしたところを、階段にいたラグルスと盗賊団の子供二人に見つかってしまったのだ。ラグルスだけなら、修業の旅から帰ってきたで終わるのだが、団員となれば話は別だった。


 彼らは幼いが故か、無邪気にアオの下へとやって来た。その様子を見たラグルスはなにがどうなっているのかと混乱しているようで、とりあえずスイとアサリナも一緒に、とある一室に連れてこられたのだ。


 そこには見知った顔が二十七人(モルフを含めて)いた。


 それからだ。喜ぶ団員達と、怪訝な顔をするラグルスと殆ど関わりの無いニゲラの相手をしなくてはならなかった。一応アサリナが緩衝材になってくれたおかげで大惨事にはなっていないが、今すぐここから逃げ出したいアオである。


 クレピスもとりあえず子供達を落ち着かせようとしてくれているが、まともに話をできる状況ではない。


「お前達、なにをしてるんだ」


 魔法使いの女を抱えたルドベキアがやって来る。


 これで少しはマシになるかと、僅かばかりアオは安堵する。


「ルドベキア! どういうことですか‼」

「僕はなにも聞いていないぞ」


 主に不満を爆発させているのはラグルスとニゲラの二人だ。


 睨んでくる二人の視線を受け、ルドベキアはアオにどうするかと目で問いかける。


 もうこうなってしまえば正直に話すしかない。


「話した方がいいよね」


 そう言うと、アオとスイも一緒に、アサリナ、ラグルス、ニゲラ、クレピスがルドベキアの部屋に転移させられた。



「全く……そういうことなら最初から説明してください」

「なるほど。ややこしいことになっているな」

「なんかカッケーな!」


 一通りの事情を説明された三人の反応は三者三様。それでも納得はしてくれたことはありがたかった。


「ということだ。じゃあ俺は中央に行ってくる」


 最後にそう言い残して、ルドベキアは転移した。


「じゃあ、アオ達は休んでください。あの子達のことは私がなんとかしますので」

「あとでなんか食えるもん持ってくよ」


 先に戻ったニゲラを追うようにラグルスが出ていき、クレピスはなにか軽食を作ってくれるみたいで食堂へと向かった。


 再び三人になったアオとスイとアサリナは、今度こそ休むために部屋を出る。


「さきに少し休んでから風呂に入りたい」

「分かったー。じゃーあたしも一緒にアオの部屋に行ってもいーい?」

「は? なんで」

「だってアオはお風呂の場所知らないじゃん。それに、あたしの部屋も知らないから呼ぶことなんてできないしー、アオ達がどれぐらい休むかあたしは知らないしー」

「確かにそうだけど――」

「私はいいわよ……?」

「スイが言うなら!」

「なんか複雑⁉」


 ということで、三人は同じ部屋でしばらく休むことに決まった。


 アオの部屋なのに、自分の部屋の場所を把握していないため、アサリナに先導してもらい部屋に帰ってきた。


 三人で寝るには少々狭い気もするが、アサリナを床で寝かせばそれでいいだろう。


 そう思っていたが、アサリナが魔法でベッドを大きくして、三人で眠れるようにした。本当になんでもアリである。


 ベッドに横になると、すぐに三人の意識は沈んでいく。そんな中、アオは決してスイを離さないと、そしてスイもアオを離さないと、互いに手を取り合って眠っていた。

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