食事を食べ終え、再び歩を進める。
相変わらず景色は変わらないが、さっきより気持ちは軽やかだ。
こうして互いに気持ちを伝え合いながら一緒にいるなんて、懐かして一生こうしていたいと思う。
心の底から楽しいと思える。
手を繋んで言葉を掛け合い二人で笑う。
世界の終わりが間も無く訪れるなんて微塵も感じさせない和やかな時間。
最高級の牛肉を食べたことで元気が溢れる。ステップを踏むように歩きながらなにも無い荒野を進む。
すると少し地形が変わってきたか、目の前に広がる荒野に隆起した場所がちらほらと。
だからなにかがあるという訳でもなさそうだ。いっそのこと巨大生物でもいてくれればまた違った感想を抱けるはずだ。
「高くなってるね」
「登りましょうか」
それでも少しでも違えば近寄ってみようと、二人は並んで隆起した場所へ歩く。遠目から見れば隆起しているであろう場所であったが、近づくにつれそれほど隆起していないのではないかと思う程度の隆起だ。
「うーん……」
「思いのほか低かったわね」
落胆した気持ちで碧が地面を蹴ると、土が舞い上がり、新たに剥き出しになった地面から色の着いた透明な石が現れた。
「なにこれ、綺麗だね」
しゃがみこんでその石を拾い上げた碧は、翠にそれを見せる。
琥珀のようなその石は軽石のように軽く、鋼のように硬かった。
「綺麗ね。これでアクセサリーを作れば、碧に似合いそうね」
「いやいや、翠の方が似合うよ!」
「そう?」
そう言いながら、翠は碧の左手を手に取り、石を碧の薬指に乗せる。
「ほら、似合うわよ」
日光を反射して煌めく琥珀色の石から熱が伝わってくるのか、鼓動が強く鳴り、全身を心地の良い温もりが駆け巡る。
緩む頬を抑えきれず、碧はそれを隠すように翠の胸に飛び込む。
無言で頭を押し付けてくる碧を、翠は顔を赤くして、碧が自分の顔を見上げないように撫でる。
溢れる喜びが引いた後、顔を上げた碧は落ちた石を拾い上げ、翠の左手薬指に置く。
「翠もおそろい」
「もう……ありがとう」
「好き」
「私もよ」
徐々に日の位置が下がってきている。
碧の視線の先には太陽が降りてきている。眩さに目を細め、目の前に見える宝石よりも美しく、大切な人に口付ける。