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第125話

 世界が茜色に染まった。完全に。


 一日の終わり、世界の終わり、全てが終わる。


 どのような終わりを迎えるのだろうか。


 碧と翠は隣り合って座りながら、視界を埋め尽くす太陽を目を細めて見ていた。


「綺麗ね」

「うん。外に出てよかったね」


 自然と互いの手を握り合う。


「怖い?」

「ええ……まだ、少しだけ」


 静かに目を閉じて、碧に身を委ねる。


「でも、碧を信じるわ」


 頬に口づけをして。


「世界を越えた先でも、あなたに会えることを。そして、あなたと愛し合えることを」


 世界が茜色に満たされる。


 熱くもないし痛くもない。ただ、全ての命が砂のように流れていくような感覚。意識が遠のき、互いの輪郭すらおぼつかない。


「うん。世界を越えても、翠を愛するよ」

「私も、碧を愛するわ」


 繋いだ手の感覚が無くなる。そもそも、手があるという感覚すらない。


「「あなたと共に過ごせて、嬉しくて、楽しかった」」

 これから終わる世界を終わらせる音が響く。

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