目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第3-3話 新たなる旅立ち(3)

 親愛なるランダ様へ


 お元気ですか?

 わたしもジェイドも元気です。

 私は生まれて初めて、手紙を書いています。


 おかげさまで、レハームの森へ到着することができました。師タージュからもらった杖を、わたしたちが暮らしていた庵の跡に置きました。杖を形見としてずっと持ち続けることも考えましたが、しませんでした。もうわたしには必要のないものだと思ったからです。


 それから森を出て、いまはティウォーという街で仮住まいをしています。ティウォーは港町です。冒険者ギルドもあります。ジェイドも一緒です。ティウォーはすごい街です。東方大陸と交易しているおかげか、とても豊かな街です。ひとも物も活発に動いています。


 わたしはランダさんと別れたあとも、ずっと考えていました。

 レハームの森で、師タージュのことを思いながら生きていくか。

 それともジェイドとともに西方大陸から出て、東方大陸へ向かうか。

 ずっとずっと、考えていました。


 わたしが選んだのは、ジェイドとともに生きていく道です。

 再来月の十日ごろ、ジェイドの故郷である東方大陸へ渡ります。ティウォーの港から、大陸間を渡る交易船に乗せてもらうことになっています。船旅は一ヶ月以上かかるそうです。


 いま、船旅の準備をしています。

 船旅の途中では、よく病が起こるそうです。ちょっとした病気なら治せるよう、薬を作っています。春は薬草がたくさん芽吹いているので、薬を作りすぎてしまいそうです。余った薬は道具屋さんに売って、路銀にしたいと思っています。


 それから、ジェイドに言葉を教えてもらっています。

 東方大陸の言葉は、すこし難しいです。文字がとっても複雑な形をしています。でも挨拶くらいはできるようになりました。ジェイドは「必要なら俺が話す」と言ってくれますが、言葉を覚えることは苦ではありません。言葉を覚えるのは大変だけど、わたしが覚えたいのです。


 東方大陸とは、どんなところでしょうか。

 ジェイドにはたくさんのことを教えてもらっています。ワクワクしています。でも実際に見ると、もっとワクワクするでしょうね。


 ランダさんは、いまはどうしていますか?

 きっと、立派にクリスティア様のパートナーをつとめられていると思います。わたしでは領地を上手く治める方法はわかりません。でもランダさんとクリスティア様なら、きっとやりとげられるのではないでしょうか。


 この手紙を書いたあとは、ハラズーンさんとカイルにも手紙を出すつもりです。再来月の出立の日まで、たくさん手紙を書きたいと思っています。ご心配なく。ティウォーの街は、手紙を書くための道具も豊富なのです。大陸間を手紙でやり取りするひとたちもいるそうです。


 ランダさん、あなたと旅をした日々をわたしは忘れません。

 一生の思い出として、次の世界に持っていきたいと思っています。


 ルウルウより

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?