「逆探知に成功したんだな?」
「はい!」
「そんな魔法があるのですか?」
マナの疑問も当然だ
俺だって聞いたことない
「ああ、なかったので作ったんです」
「作っ! ええええええ!!」
全員が驚く
魔法を作り出すなど賢者の所業だ
いや、アネモネにはそれほどの実力があるのだろう
賢者と言えば英雄の部類に入る
そうか、アネモネもその域に
ファンファンもそうだが、俺の周りは英雄になれる逸材が多いな
レナやミリアたちもいずれは英雄と呼ばれるようになるだろう
「すでに転送の準備は済んでますよ旦那様」
「すごいね君・・・」
本当に優秀だ。一刻も早く女王様を安心させるため、その組織を壊滅させ、彼女の命を狙う者をどうにかしないとな
「転送は全員行けます! 任せてください!」
「おお、嬢ちゃんすげぇな。レディアントに住む賢者と同格くらいあるんじゃないか?」
レディアントと呼ばれるどこの国にも属さない賢者と魔法使いが住む場所がある
俺も噂でしか聞いたことがないが、あるったらある
そこの賢者は古代の魔法を研究しており、魔法を作り出すこともできるそうだ
そりゃ確かに賢者って言われても仕方ないか
何はともあれ行くとするか
まあこのメンツだから俺が戦うことはないだろうが、護身用の剣と包丁だけは下げておくとしよう
あとはそうだな、彼ら用に何か食べ物でも作れるようにしておくかな
料理の腕だけは自信があるからな
転移によって訪れた黒という組織の本拠地
名も知られていないほどの暗殺組織らしく、その実力はアネモネの結界を突破できるほどだ
賢者レベルの魔法を突破できるということはそれだけの実力者がいるということだ
なにせあの四号という子を誰に気づかれることなく転移させれるくらいなんだからな
これはかなり危険な組織だ
いうなればどこの要人だろうと、殺害できるということだからな
まあ転移自体には媒介がいるらしく、目的地、もしくは目的の者に関する何かがなければだめらしい
前の暗殺者は転移の触媒としては使えないほどにドロドロだったらしいが、今回は四号ちゃんがいる
彼女のおかげで転移できるってわけだ
恐らく彼女を自爆させようとしたのも証拠が残らないようにだろう
魔力を溜めての自爆は破片すら残さないみたいだし・・・
子供に何をさせてるんだ
腹立ってきたな
俺に力があれば一人で壊滅させたいよ
「何もないな。本当にここなのか?」
ダンがキョロキョロと周囲を確認して声を漏らす
確かに何もない
がらんどうの洞窟だ
「待ってください。探知してみます」
アネモネが直ぐに洞窟内を調べ始めた
「ここに何かあるようです」
壁に触れてそこを手でごそごそと触っている
「ありました。ここに何かスイッチが」
カチッと音がしてそこに亀裂が入り、ゆっくりと扉のように開いた
外からここに来ればただの洞窟にしか見えない仕様になっているのか
アネモネがいなければ分からなかったな
「ここからは警戒して行くよ」
先頭にマナがつき、ダンたち、ガーディ、四号に俺たちという順番だ
しんがりはファンファンがついてくれた
「四号ちゃん、この先の道分かる?」
「分かんない。ボクたちはずっと同じとこにいた。そこから出たことない。出たのは昨日が初めて」
「そっか、ありがとう」
マナはどうやら子供が好きらしい
四号を見る目が母のそれだ。俺と同じくらいの年だけど
「あなたのお友達も、皆も、必ず助けますからね」
四号はマナを見つめ、コクンとうなづいた
道なりに進む
ところどころに分かれ道はあるが、アネモネによると迷わすためにトラップや幻惑の魔法が仕込まれているため、道を逸れる方が危険らしい
ここまで一時間ほど歩いたが、ちゃんと目的地にたどり着けるか不安になって来た
段々と道が下っている?ようには感じてるんだが
それでも歩みをとめずひたすら歩き続ける
そして開けた場所へとたどり着いた
「ひとまず休憩しようぜ。このまま進んでも体力を奪われるだけだ。おチビちゃんよ、焦ってるかもしれんが、必ずお友達は助けてやっからここは休め」
「う、うん」
ダンの言う通りだ
体力がなくなれば戦えるものも戦えない
「俺が何か作りますよ。簡単なものですけどね」
俺は材料、調理器具を取り出し手際よく調理してふるまった
まあ簡単なスープと野菜炒め程度だが
肉はオーク肉のいい部位を使ったから力もつくだろう
「これは、滅茶苦茶うまいな!」
「ええ、高級レストランにも負けてませんよこれは」
そこまで褒められると悪い気がしないな
「う、うぉおおおなんだこれは! 力が溢れて来る!」
「魔力も、なんだかすごく強くなってる気がするわ!」
「今なら何でもできそうだよ」
大げさだ
でも、喜んでもらえてよかった
「よし、しっかり休んだし、そろそろ行くか」
みんな元気が出たみたいだな
こんなことでしか役には立てないが、俺の役割は皆のサポートだ
それで役立てるなら本望だよ
そして俺たちは奮い立ち、また歩き始めた
それにしてもどこまで続くんだここは
まるで迷宮みたいな場所だな・・・
まあ迷宮に入ったことなんてないんだが