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第97話

 何が起きたの?

 カズマさんが燃え上がったと思ったら、ネズミの群れが灰になって消えてた

 また新しい力?

 ともかくこれを目撃したのは騎士団だけだから、カズマさんに気づかれることはないはず

 王様もこのことは理解されてるし、カズマさんの力が外部に漏れることはないとは思う

 この人には平和に暮らしてほしいけど、私達が弱いせいで彼の力がどうしても必要になってしまう

 私は気絶しているカズマさんに膝枕をしながら目覚めるのを待った


「う、ううん」

「カズマさん!」

 目を覚ますと、空と、大きな何かが目に入った

 その大きな何かからレナの顔が覗く

「レ、レナ、さん!?」

 状況を理解して慌てて起きあがると、その大きな何かが顔面にフヨンと当たる

 柔らかい

「むぐ」

「あ、ご、ごめんなさい!」

「おいこらレナ! 俺の旦那様だぞ!」

「ごめんねファンファン」

 レナ達に聞いた話によると、ネズミたちは突然来た謎の冒険者によって一瞬のうちに殲滅され、その余波で何人かが気絶したらしい

 その中に俺もいたってわけだ

「すごかったんですよその冒険者の方。名前も言わずに颯爽と去って行っちゃいましたけど」

「そんなすごい冒険者もいるのか・・・。俺は情けないな」

 俺も戦うつもりでいたけど、役には立たなかった

 いや、俺じゃあネズミにたかられて喰われて終わりだ

 助かっただけでもよしとしなくちゃな

 だけど問題なのは、これがこの国だけで起こってることじゃないってとこだ

 隣国のメイガ王国やビスティアは無事なんだろうか?


 翌日、同盟国からの救援要請が来た

 幸いにもこの国ほど多くのネズミが襲てきたわけじゃないが、それでも数多のネズミ魔物によって被害が出始めているらしい

 ただ、救援に向かうのは無理だろう

 こちらも被害が大きく、冒険者達も満身創痍だ

 騎士団は国の復興もあるしな

「カズマさん。これだけあれば十分この街の人間にいきわたると思う。君は他国に薬を届けてくれないかな? もちろん報酬は払うよ」

「それは構いませんが、手持ちは全てお渡ししたので作るのに少し時間がかかりますよ」

「錬金施設を貸し出す。それと、助手もな」

「それならなんとか」

 この国の錬金術師や薬師には俺の薬の作り方を教えてある。ただ、仕上げは俺がやらないとおれの薬と同じ効果が出ないんだとか

 全く同じ作り方なのに差が出るのはなぜかは分からないけど、ともかく途中まで作ってもらえるならありがたい

 すぐに彼らと共に薬づくりを始めた


 一日かけてメイガ王国分、ビスティア分を作りだせた

 これだけの人数がいたからこそ大量作成が可能になった

 休憩は少ししか取れなかったが、そのまままずメイガに行くことになった

 メイガやビスティアといった同盟国どうしはかなり古くから仲が良く、お互いを転移魔法装置で行き来するほどだ

 だから、王宮にこの魔法陣が描かれている

 それを使い一気にメイガへと転送された

「ここがメイガ王国・・・」

 すでに俺が来ることは国王様が話を通してくれているらしい

 転送魔方陣前でメイガ国王が出迎えてくれる

「おお、貴殿がカズマ殿ですかな?」

 温和なシュエリア国王と別ベクトルな老王

 自ら剣を振るって戦うほどに武勇に秀でた王らしい

「わしはアウス・メイガ。早速出悪いが、兵たちに薬を提供してほしい」

「もちろんですメイガ王様。こちらに」

 俺は空間収納から取り出した薬袋を手渡す

「ありがたい。怪我人が多いものでな」

「一応強化薬も入ってますので、お役立てください」

「すまない。報酬は事件が落ち着いてからでいいだろうか? なんとか食い止めたものの、残党のネズミも多いのでな」

「ええもちろんです」

 緊張したが、気さくな人柄のようだ

 王は薬をもって走って行ってしまった

 俺はと言うと、大臣?っぽい見た目の老人に案内され、城の部屋に通された

 しばらくして王が部屋へやってくる

 慌てて立ち上がり、膝をついて首を垂れた

「楽にしてくれ、恩人なのだからな、それに急ぐのだろう? ビスティアはあんなことがあったばかりだ。すぐに向かってほしい」

「ありがとうございます王様」

 王について行き、ビスティアへの転送魔方陣へ案内される

「見送りたいところだが、わしもやることがある。すまんな」

「いえそんな! もったいないお言葉です」

 うなづき、すぐに出て行く王

 俺は転移によってつい先刻いたばかりのビスティアへと戻って来た


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