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第98話

 何じゃこのネズミ魔物の数は!

 わしは竜人の住む国、ドラゴナへと来ていた

 数多くの竜や龍が住み、竜人たちが管理する国じゃ

 竜人はヒト種の中でも肉体強度に秀でており、気力という力を使う種族じゃ

 気力は鬼人族、人間族なども扱えるが、肉体を鍛えなければ扱いが難しい

 まあわしも使える

 そんな竜人たちが、たかだかネズミ魔物に苦戦しておった

「く、何なんだこの数は! ドルク、こっちの援護を頼む!」

「待ってくれファガロ、こっちも手いっぱいだ!」

 どうやら冒険者らしき男二人が街に侵入してくるネズミを抑えておるようじゃが、抑えきれずに侵入を許しておるな

「くそ! 竜たちはまだか!」

 ふむ、どうやら山に住む竜が援護に来ないと見える

 侵入されておるが、後ろに控えとる他の冒険者や兵が食い止めとるな

 これなら大丈夫じゃろう

 わしは空からこの国のシンボルでもある竜山(りゅうざん)へ飛んだ


 竜山は標高8000メートルを超える山々と、その中心にそびえ立つ10000メートルの山のことを指す

 そこには多くの竜、龍、亜竜が住み、この地を守っておる

 ちなみに我が母ティフォンの眷属であるぞ

 わしが行けば全ての竜が言うことを聞くじゃろう

 竜山へついて竜たちが来ない理由を理解した

 街を襲っておるネズミ魔物とは違う、強力なネズミ魔物、キラーマウスが大量発生して追った

 竜共なら一匹程度造作もないじゃろうが、何じゃあの数は

 今までここまで群れを成したことなぞない

 一体何が起こっておる?

 わしは竜山へ下りてその鼠どもを駆逐し始めた

「あ、あなた様は」

「お帰りになられたのですか、我らが姫」

「ふむ、覚えておる者がいるとはな」

「当り前ですティア様。我らティフォン様の眷属なれば! ティア様の眷属も同然です。それに、アルビオナ様もいつもあなた様を心配しておりますから」

「ふん、あの姉のことは言うな。じゃが、わしの大事な眷属が危機とあらば、助けねばのぉ」

 わしはこの辺り一帯にいるネズミ魔物全てを探知でロックオンする

「大魔法、アン・ネガ・デトロ」

 闇の大魔法じゃ。この体が黒く染まったのちに覚えた魔法

 全てのネズミに命を奪う闇がまとわりつき、一気に死滅した

「ふむ、これでいいじゃろう。お前たちは竜人を助けに向かうのじゃ」

「はい!」

 さて、これでこの国は大丈夫じゃろう

 この元凶を見つけないことには事件は終わらないじゃろうな

 ネズミ魔物は確かに繁殖力は高いが、臆病じゃし、捕食者に常に喰われておるから、ここまで増えることなどない

 つまりこやつらを増やし、操っておる者がおるということじゃ

 そ奴を探し出し、叩く

 ネズミどもは西の方からこっちに来ておった

 わしは空に飛びあがり、西を目指した

 西の方向は海で、島国のワコクがある

 ワコクの人間は普段は温厚で優しいが、身内を傷つけられれば恐ろしいほどに怒り、仕返しをする種族

 人間族ではあるのじゃが、他の国の人間族とは少し違うんじゃよなぁ

 恐らく島国故の独特な進化をしたのじゃろう

 ネズミ魔物を操る者がワコクの者とは考え難い

 恐らくワコクも襲われておるじゃろうの

 翼をはためかせ、風魔法を加えて速度を上げると、ワコクの上空へとやって来た

「ふむ、やはりか」

 ワコクにある街はこの地特有の作りをしておる

 城も通常とは違うのぉ

 そしてその街を襲うネズミども

 そのネズミを斬り伏せる侍や忍達

 強い、圧倒的強さじゃな

 上空から見ておるが、ひとりで幾匹も一撃で斬り倒しておる

 忍の方は持ち前の速度で急所を的確についておるな

 助ける必要はなさそうじゃ

 それにしてもネズミ魔物が入り込めないはずのここになぜこんなに沸いておる

 わしは島の周囲を見渡し、その原因を突き止めた

 ネズミのやつら、自分たち自体を橋のようにして島に来ておるのか!?

 ここから大陸までどれほど離れておると思っとるんじゃ!

 そのネズミどもを辿り、大陸側に行くと、海岸にネズミ獣人がおった

 ん? いや、あれは魔人か?

 あの魔人見覚えがあるのぉ

 確かオレガの配下の十二魔人の一人、チーパックとかいうやつじゃ

 臆病じゃが、同じく十二魔人のセリとともに大量の魔物で街を蹂躙していたと記憶しとる

「おいチーパック! お主こんなところで何をしておる。オレガを守るのがお前の使命じゃないのか?」

「・・・」

 何も話さんだと? おかしい

 こやつは口数の多い性格じゃったはずじゃが・・・

 ん? この感じ

 こやつ、まさか操られておるのか? しかもこの感じは、セイヴの仕業か?

「チーパックよ目を覚ますのじゃ! お主誓いはどうした! オレガを守ると誓ったのじゃろうが!」

 いくら言っても奴は正気にもどらぬ

 ここは、ショック療法じゃな

 奴に近づき、わしは拳を構える

「追い詰められたネズミは猫をも殺す。窮鼠」

 出おったか

 こいつの能力はネズミ系魔物の支配と、自身より強い相手に対し一撃必殺の技を使えることじゃ

 一撃貰えば確実に死ぬ。それがどんなものであろうとも

 幸いこやつの格闘センスはそこまでではないというのが救いじゃな

 じゃがかすっただけでも死ぬ

 まあこやつの格闘スタイルは知っておるからな

 対処はいくらでもしようがある

 チーパックと見つめ合い、戦いが始まった


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