到着してすぐだったけど、もうあらかたことは終わっていた
ネズミ魔物は倒され、追加のネズミも来ていない
おさまったのか? この厄災は
大量のネズミがここまで危険だとは思わなか・・・
待てよ、大変なのはこの後じゃないか!
かつて地球で流行ったペストやスペイン風邪
あれはネズミが媒介したらしい
そうだ、ネズミの死体をこのまま放っておけば、なにかしらの危険な病気が蔓延するだろう
そうなってからでは遅いんだ
俺はネズミの死体を空間収納にしまい始めた
ん? 思ったより少ないな
周りを見ると、俺と同じように収納したり、灰塵になるまで焼き尽くしている人々の姿があった
「これは」
「お、兄ちゃんも手伝ってくれてんのかい。助かるよ。ネズミ魔物は死体を放っとくと病気が蔓延するからな」
どうやら周知の事実だったらしい
そのおかげで死体もすぐに片付き、俺も収納していたネズミ魔物の死体を焼いてもらった
結局、突如襲って来たネズミ魔物は突如として消えた
チーパックが引き起こしたであろうこの厄災
本来ならこの魔人は世界中にネズミ魔物を放てるほどの力はない
それが強化されている?
魔王が復活し、魔人たちも復活しているのは分かっている
とてつもなく強いんだってことも
でも、あの時戦ったミンティは復活したばかりで力が弱まってるって話だったはず
力が戻っている?
いや、でも日誌にここまでの力が使えるとは書かれていない
やっぱり強化されてるんだろうか?
「考えても分からん!」
「旦那様、そろそろ帰ろうぜ。腹減った」
「そうだな。帰ろうか」
取りあえずは問題は解決したとみていいだろう
まあ帰ってみないと分からないこともあるし
俺はファンファンたちと共にシュエリア王国へと戻る転移装置に立ち、帰路についた
シュエリアも同じような感じだった
まあほとんど通りすがりの冒険者とやらに消し飛ばされたらしいから、死体はあまりなかったそうだ
翌日、世界中の国々で大発生していたネズミの厄災について、終息したことが知らされた
どの国も突然襲われ、突然引いたらしい
チーパックがやめたのか、それとも誰かがチーパックを止めたのか。それは分からない
だが考えるべきことは、今後魔人たちへの対抗措置についてだろうな
魔人や魔王が復活していることはすでに知れ渡っている
これだけ危険がある以上、赤の山に討伐隊が派遣されるのも時間の問題だろう
だけど、それでいいのだろうか?
少なくとも彼女、ミンティは戦いを好んで行うようには見えなかった
何かがおかしい。一体この違和感はなんだ?
それから数週間が経った
今のところ平和が続いてはいるが、またいつま五zんが暴れ出すか分からない
チーパックを暴れさせたのは魔王だろうが、魔人を強化できるのか?
もしチーパック以上に強い魔人が暴れれば、街一つじゃすまない可能性がある
特に魔物やヒトを操れるあの魔人、セリが強化されれば、この世界はひとたまりもないだろう
やはり赤の山へ冒険者たちと攻めるべきか?
戦いを好まないミンティ、突如襲って来たチーパック
まるで正反対だ
「考えても仕方ないな」
俺はしばらく手入れできていなかった畑に行き、雑草を取り除いたり、作物を食べる虫を取ったりしてすごした
だがこの胸にはずっと不安がある
ネズミのことはこれから起こるもっとヤバいことの始まりに過ぎないんじゃないかって思うんだ
畑の手入れを二人と共に終わらせ、一息ついているとそれは起こった
赤の山が、さらに赤く赤く、血のように染まったのだ
それはまるで空から血がしたたり落ちているかのように見え、とにかく不気味だった
あっけに取られていると
「カズマさん!」
エルフのイリュゥ、そしてフェナンが俺の元にやって来た
「赤の山の色、見ましたか?」
「ああ、何だあの不気味な色は。一体何が起こってるんだ?」
「詳しくは里で話す。ついてきてくれ」
「ああ」
今度はアネモネも連れて行く
恐らく魔人との戦闘もあるはずだ
場合によっては魔王とも
俺たちやエルフだけでは足りない
そこで、俺はコツコツ作って渡していた通信用カフスを作動させ、渡した全員に連絡を取った
「赤の山が大変なことになってるんだ。俺の声を聴いてくれてるなら、どうか助けに来てほしい。俺たちは先に行っている。どうか、頼む」
それだけ言うとエルフたちの後について走った
エルフの里につくと、よりいっそう赤の山が不気味に見えた
そこかしこから魔物の声もするし、明らかにこの前とは違う
見ているだけで体が震えた
「カズマさん、すまない、すでに」
「ん?」
イリュゥの言葉に赤の山の森の方を見ると、誰かがそこに立っていた
魔人?なのか?
「エヴァードート」
「く、あ? ああああ!!」
突然イリュゥが苦しみ始めた
「イリュ・・・。ああああ!! ぐふっ」
直後にフェナンが喉を抑え、口や鼻、目から大量に出血した
「フェナン! いったいどうしたんだ!」
俺たちは何ともない
「なんだ、お前なぜ平気なんだ? ここら一体に致死性の猛毒をばらまいたって言うのに」
魔人らしき男が話しかけて来る
「お前! 今すぐ彼女たちを解毒しろ」
「それは無理だな。なにせ俺でもそれが何の毒カ分からん。俺には効かないが、俺が敵と思ったやつには効く。俺は猛毒のロイド。ロイド・アルカナム」
男は名乗り、俺に指を向けた
「なんで効かないのか分からんが、お前ら程度なら、毒を使うまでもないか」
苦しむ二人をアネモネに託し、俺とファンファンは武器を抜いた