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第104話

 チーパックを倒し、わしは再び世界中を飛んで奴の気配を探り続けていた

 正直やつを見つけるのはわしの力では不可能に近い

 奴が何かをしようと力を使えばわかるんじゃが・・・

 いや、洗脳に関してはわしでもつかめんかった

 もしその類の力を使っておるのだとすれば、本当に見つけるのが困難かもしれん

「ふぅむ」

 考え込み、なんとかする手がないかを探す

 奴の力がどういったものなのか詳しく分かればいいんじゃが

 それかわしの力が奴に並び立つとかじゃな

 まぁ並び立つにしても奴の力が分からなければどうしようもない気もする

 わしは今この世界でもっとも巨大な国、フェンリナイト王国へと来ておった

 ここは神獣フェンリルが守護する国で、アルビオナが守護する国々とは比べ物にならないほど強大で強力じゃ

 なにせフェンリルは女神の子供達の長男じゃからな

「ふぅ、叔父上に会うのはかなり久しぶりじゃが、何か知っておるかもしれんしなぁ。でもなぁ」

 わしは昔に会った叔父上、フェンリルのことを思い出す

 そしてため息をついた

「えええい背に腹は代えられぬ」

 覚悟を決め、フェンリナイトへ降りた

 そのとたんじゃ

「うぉおおおおおお!!!」

 突如わしに抱き着く大男がおった

 油断なぞしておらんかったこのわしに抱き着ける

 それほどに強いのじゃ

 フェンリル叔父上は

「会いたかったぞティア! うぉおおおお!! 顔ぐらい見せんか!」

 叔父上に前に会ったのは、母であるティフォンが亡くなった時じゃ

 黒く染まり、悲しみに暮れておったわしのそばに来て、慰めてくれたのが叔父上じゃ

 あいや、あの時は伯母上もおったな

 叔父上はとにかく大泣きし、わしに抱き着いて鬱陶しいったらなかったわい

 あの時、わしがもっと心を開いておれば、その後にセイヴを討ち漏らすということもなかったかもしれぬ

「さてティアよ。お前がここに来た理由なら分かっておる。闇勇者セイヴのことじゃな?」

「そうじゃ叔父上。あやつを今度こそ討つ」

「決意は固いか。じゃがわしも奴の位置は分からぬ。フェニクスの奴も、リヴァイアの奴も知らぬだろうな」

「やはりそうですか・・・」

「がっかりするなティア。わしらも協力する。お前一人だけに背負わせはせん。もう二度とな。アルビオナも呼んで来い。我ら神獣が力を合わせれば倒せるさ」

 フェンリル叔父上はそうにこやかに笑った

「分かりました。アルビオナの奴を呼びます」

「おう、必ず倒すぞ。わしの可愛い妹、お前の母を奪った相手を」

 わしがダークドラゴンとなったものの、神獣たちの、家族のきずなは強いのじゃな・・・

 もっと早くに会いに来ておればよかった

 そうじゃ、セイヴを討った暁にはカズマを紹介しよう。あやつの性格ならきっと叔父上や伯母上にも気に入られるじゃろうて

 まあ伯母上の一人には会ったことないんじゃがな

 リヴァイア伯母上は海の底におるからして、会いにいけんからのぉ


 そしてわしは、アルビオナを呼びに再びシュエリア王国へと戻った

「おいアルビオナ、可愛い妹が戻って来たぞ。顔お見せぬか」

「なんですいきなり・・・」

 わしが人型じゃからか、アルビオナも人型になっておった

「でも、ええ、可愛い妹、そうですね。ふふ、そうです。あなたは可愛い私の妹ですよ」

 面と向かってそう言われると恥ずかしいが、これでも昔は仲が良かったからのぉ

「叔父上の所へ行くぞ」

「フェンリル叔父様のところに?」

「うむ。全神獣が集まり、セイヴを探し出して討つのじゃ」

「・・・。分かったわティア。貴方もそこまでの覚悟があるのですね。私も手伝うわ。必ず倒しましょう。この命に代えても」

 この世界は女神なき今わしら神獣が管理しておる

 わしらの誰かが生き残ればこの世界は滅ぶことはないじゃろう

 セイヴは強い。あの力が何なのか分からぬ以上、犠牲は避けられぬじゃろうな

「まだみんな死ぬとは限りませんよティア。生きて帰りましょう。必ず。あなたが愛すカズマさんのためにも」

 わしはこの戦いから帰った時正体を明かし、この思いをカズマに伝える

 ファンファンも嫁として出張ってくるじゃろうが、別に一夫多妻でもよかろうて

 わしらみんなで愛し愛されればよいのじゃ

 そのためにも、生きて帰るのじゃ

 わしは決意を新たに、戦いのためアルビオナと共にフェンリル叔父上の元へ戻ったのじゃった


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