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第113話

 俺は戦いの準備のため、神々の力を借りながら大量の薬品、武具、アクセサリーなどを作り出した

 自分でも恐ろしいほどの速度で大量に

「この速さもやっぱり神様のおかげなのか? いや今はそんなこと気にしている暇はないか。ともかく作り続けなくちゃな」


 恐らく全世界の戦える者にいきわたるほどの量を作成し、作った傍から空間収納に入れていったため、総量はどれほどかは分からない

 あとはこれを

 俺はイザナギ様の力で王たちの集うフェンリナイトへと転移した

 うお、こんな感じなのか

 便利だが酔いそうだ

 そして現在、俺は作った薬品、武具、アクセサリーを無償で全世界の王へと渡した

 王たちは俺に感謝し、頭を下げてくれた

 神々が貸してくれた力は俺の作る薬品や武具のレベルを何段階も引き上げてくれている

 俺は今まで知らなかった

 神の力により、俺の薬品や武具に神聖な力が宿っていたことを

 レナ達が強くなったのも、ファンファンとアネモネが急激な進化を果たしたのも、この力があったおかげだ

 まあ他にも皆の努力があってだろうけど

「それで、カズマ殿はどのようにしてセイヴを見つけるつもりなのでしょう?」

「問題はそこです。この世界の探知スキルでは恐らく奴を見つけることはできません。あの時出会ったあの男がセイヴなのは間違いないんですが、あの時どうやら俺は神様に体をお貸ししていたので、奴の魔力的な波長なども分かっていないのです」

「ふむ、ではそれぞれの国でセイヴの痕跡を見つけた場合、カズマ殿に報告するというのではどうでしょう?」

「それは助かります」

 しかし危険な斥候の仕事だ。引き受けてくれる人はいるのだろうか?

 ハッカからの情報によれば、敵はセイヴだけじゃない

 彼が遭遇したのは消す力を持った者らしい

 その力で国一つを消してしまったんだ

 果たして俺が行ったとして、そんな強力な力を持つ敵を倒せるのだろうか?

 いやこんなんじゃだめだな

 俺には力を持った者の責任がある

 神々に借りている力だとしても、この力は正しく使わなくては


 そんなカズマの思いを読み取り、イザナギは微笑んだ

「やはり我らが斎王は正しき道を歩んでいる。だからこそ、私達は力を貸すのだ」

「ええお父様。あの世界は私達には関係のない世界。ですが、神とは世界を守り導くものです。彼ならいずれ」

「ああそうだな」

 カズマの様子を見ながら二柱の神は笑みを浮かべる


 翌日

 フェンリナイトの王城の一室をあてがわれたカズマ

 そこのベッドの上で彼は思考を巡らせていた

「消えた国はフローレンス王国とアルトロ空国の二つ。それぞれ違う消え方をしているな。フローレンスは周辺の土地ごと破壊されつくし、アルトロは文字通り消えた」

 俺は地図を見ながらしるしをつける

 ほぼ同時刻に消滅していることから、二人いるってことだろう

 二人? セイヴ以外にもう一人いるのか、それとも他に部下が・・・

 その時部屋の扉がノックされた

「カズマどの! 少しよろしいでござるか?」

 扉を開けて入って来たのは、確かハッカという魔人か

 いかにもな侍と言った格好だが、狐耳があり、尻尾もある

 一見すれば狐獣人だ

「ハッカさん? もう怪我はいいんですか?」

「敬称は不要でござる。ハッカとおよび下され。あの時ロロ殿と拙でアルトロへ向かっておったのですが、突如襲来した眼鏡をかけた男にやられ申した。あの時とっさに分体を拙とロロ殿の分出現させ、気配を消しておったのですが、あれはヤバイでござる。人ならざる力を持った何か。そう言った印象を受けたのでござるよ」

「眼鏡の男? セイヴは眼鏡をかけていなかった。ということはそいつはセイヴの協力者ってことか。何者かは分からないが、そいつのことも視野に入れておかないとな。ありがとうハッカ」

「うむ! 我らではもはやあれらに対抗はできぬでござる。カズマ殿一人に任せるのは忍びないが・・・」

「いや、これは俺の役目だ。ともかく命が助かって良かったよ」

「カズマ殿の薬のおかげでござる」

 ハッカは俺に礼を言うと部屋を出て行った

 そのすぐあと、ロロ?という魔人が入ってくる

「カズマさぁあん! ありがとう! ありがとうだよ!」

「え? ロロ、さん? いや待てよ。確か手記に書いてあったな。君はもしかしてリリか?」

「そだよー、よくわかったね」

「これに書いてあったからな」

 ロロさんの見た目だが子供っぽいリリ

 三姉妹の内の末妹か

「ありがとう! おかげで助かったよ!」

 ハッカとロロさんはその眼鏡の男による攻撃で、なんとか死は免れたものの、ほんの少しその力に触れてしまったらしい

 そのせいでハッカは左腕を、ロロさんは右足を消し飛ばされた

 出血も激しく、俺の与えた薬で全快したというわけだが・・・

 その傷は非常に治りにくかった

 神々の力で新しく作った薬でも今まで時間がかかっていたというわけだ

「魔人を助けてくれる人間なんて今までいなかった。あ、ランスやリアラスがいたけど、それ以外ではあなたが初めて!」

 リリはギュッと俺を抱きしめ、元気よく手を振って去って行った


 それから俺は英気を養うために眠りについた

 ファンファン達も恐らくあてがわれた自室で眠っているだろう

 目をつぶったとたんに、俺は深い眠りにいざなわれて行った


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