夢の中で誰かが俺の前に立っていた
淡く光るその姿が段々とはっきりしてきた
「あなたは・・・」
この雰囲気、美しさ、そして安心感
「さて、こうして顔を合わせるのは初めてですね」
「あなたはまさか、アマテラス様」
「まぁ! ご存知でしたのね」
嬉しそうにはにかむアマテラス様
日本の主神と言えばこの方だ
天より全てを照らす太陽神
「わたくしの力をそなたに貸します。天より全てを見渡しなさい。彼の者は世界を渡る力を持っています。それと、幾人かの味方を得ているようですね。我らが世界の者を連れています」
「地球の者をですか?」
「ええ、残念ながら、我が子らのうちの幾人かです」
アマテラス様は本当に悲しそうな顔をする
そう言えば日本神話でも人は皆神の子と言うのがあったな
だからこそ、道を外す者を見るのは悲しいのだろう
彼らにはこんなことをするなりの理由があったのだろうか?
だとしても、人々を消していい理由にはならない
それ相応の制裁は受けてもらう
それが俺の考えだ
「本来なれば、わたくしが顕現して神罰を下せばよいのですが、世界が違う故、そなたの力を介してしか発動できないのです」
アマテラス様達神々とこの世界は、俺というパスでようやくつながっているらしい
普通なら別世界の神は他世界に干渉できないししない
だが、この世界は女神という要を失っている
そのため地球の神であるアマテラス様達が干渉できるようになったらしい
「これでそなたも天から見下ろすように世界が見えるでしょう。他にも何か手伝えることがあるならば、願いを空へ。わたくしたちはいつもそなたを、斎王たるそなたを見守っております」
「ありがとうございますアマテラス様!」
アマテラス様と言えば伊勢神宮へ移った伝承が有名だ
なんでも別の神様と一緒に祀ったということで、厄災を起こしたため、天皇の血脈である斎王に・・・
斎王? 俺もそう呼ばれていたような
ま、まあ今はそれは置いておいて
その斎王に憑依して伊勢の地まで行き、そこに祀られることをよしとしたと伝わっている
だからか、アマテラス様はかなり恐ろしい女神様だと思っていた
「そ、そのことは忘れてくださいまし。あの時はイライラすることが重なっていたのでちょっと神罰が強くなりすぎただけでして」
アマテラス様に考えが読まれてしまっていた
「と、ともかくです。力を目いっぱい使っていただいて構いません。そなたの住む世界。そなたが平和に暮らせるよう、我ら神々も強力は惜しみませんから」
アマテラス様はそう言うと、目の前から消えた
それと同時に、女神の力が俺の中に流れ込んでくる
翌朝目が覚めると、目に違和感があった
あたふたしていると扉を開けてファンファンとアネモネが入ってくる
「旦那様! 朝ごはんだぞ!」
「厨房を借りれたのでご用意いたしました」
部屋に用意される朝食
久しぶりな気がするアネモネの料理だ
朝ごはんだから簡単なものだけど、アネモネの愛が詰まっている
「いただきます」
相変わらずのほっこりとした優しい味
俺が料理を教えたんだが、独自に進化させていた
「ところで旦那様、戦いはまだなのか?」
「ああ、そう言えば新しい力を借りたんだ。これで敵の居場所が分かるかもしれない」
「お! それじゃあすぐ戦える準備をしてくる!」
急いで食事をかき込んで、ファンファンは部屋を飛び出して行ってしまった
「アネモネ、君は残っていてくれるか?」
「私では、力になれませんものね」
シュンとするアネモネに首を振る
「違うよ。君にはここを守ってほしいんだ。信頼しているからこそ君に任せたい」
俺は彼女に武具全般と薬品を渡した
「これは俺の最高傑作。これで君は恐らく進化するはずだ」
「私が、ですか?」
「ファンファンにも後で渡すけど。アネモネ。どうかこれで、王たちを守ってほしい」
「分かりました」
アネモネに武具と薬を渡し、俺はアネモネを追いかけた
アネモネの部屋をノックすると入ってと言われたので扉を開けると、まだ着替え中だったのか、裸のファンファンが立っていた
小さなころから見てはいたが、こうも大人になると破壊力がすごい
まあ救うためとはいえ、キスまでした仲だ
意識しても仕方ない
「旦那様!」
そのまま抱き着いてきたファンファン
そして俺の口をその口でふさぐ
先ほど食べた朝食の味・・・
「えへへ、もしかしたら、最後かも、だし。な、旦那様。オレ」
そしてファンファンはゆっくりと扉を閉め、俺は押し倒された
数時間後
すっきりしたファンファンと疲れ果てた俺は部屋から出た
彼女にもアネモネと同じく武具と薬品を渡した
防具はキメラの魔石をはめ込んだ鬼神装備と言う名の一式
武器は神大剣、魔滅の鬼角
鬼系統魔人であるファンファンにぴったりだ
防具は武者の鎧のようで我ながらよくできたと自分で自分を褒めてやりたいところだ
「ゴクゴク」
ファンファンが薬を飲みほすと、彼女の体が輝き始めた
「お、おお、おおおおお! 旦那様!」
ファンファンは長く美しい白銀の髪に麗しい褐色の肌、金色の瞳、淡く光る白い角を持った魔人へと進化した
俺はアマテラス様の力で彼女を見てみた
すると驚きの変化を彼女に見た
魔人ではない。彼女は、魔神へと進化していたのだった
「普通ならここまでの変化は起きません。ひとえにあなたの愛の力が成せる偉業でしょう」
「え? アマテラス様!?」
「いつも見ていますと申したでしょう」
どうやら俺の目を通して見守ってくれているらし・・・
「あの、アマテラス様。営みを」
「あらあら、ふふふ」
「いえふふふではなくてですね」
「ふふ、ふふふ」
だめだこの女神様。むっつりだわ
そんな考えを読んだか読まなかったのか、アマテラス様の気配が消えた
「と、ともかくこれで準備は出来た。アマテラス様、お力お借りします!」
俺は目をつむって女神の力を使った
そして見えて来る世界
この世界を上から見ているような景色
早く見つけてセイヴを止めないとな