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第117話

 俺が世界を見ようとアマテラス様の力を使おうとしたその時

 エルフの美しさもかすむような、二人の少女が現れた

 その後ろにいる子もきれいだが、前二人の美しさは神がかっている

「あの、あなたがカズマさんでしょうか?」

 白い方の少女が口を開く

「私は鬼人の姫、ハクと申します。こちらは姉のクラと」

「サイラのカガミです」

 白と黒の少女はハク姫とクラ姫という鬼人の姫らしい

 聞いたことがある

 鬼人の国に知らぬ人なしと言われるほどの美しさを誇る

 まさに宝珠、宝玉と言われるがふさわしい姫

 それが彼女たちなのか

 確かに、言われてみれば、目を奪われるほどの美しさだ

「旦那様?」

 げ、ファンファンがめちゃくちゃ睨んでる

「な、なんでもないよファンファン」

 二人はファンファンを見て不思議そうな顔をする

「あ、この子は」

「魔人、いえ、そんな力でおさまっていない。何者ですか?」

「俺はファンファン! カズマの嫁で、魔神だ!」

「魔神!? まさか魔人のさらに上がいるなんて・・・。あの魔王以上です!」

 どうやらファンファンの力を理解して少し怯えているようだ

「ファンファン、威嚇やめい」

「でもこいつら色目を使って旦那様を」

「そんなわけないだろう。ところで用があるみたいですけど」

 二人はここに来たいきさつを話してくれた

「なるほど、やっぱり仲間がいる、のか」

「その少女は力をジ・エンドと言っていました」

「ジ・エンド。終わりか」

 能力名から終わりをもたらすと考えられるが、終わり・・・

 もしかしてセイヴはこの世界を終わらせようとしているのか?

 何故? 目的は一体

 考え込んでもしょうがないか

「今から俺はその、異世界の力を使って奴らの位置を探ります。えっと、ハクさんとクラさんと、カガミさん。あなた達も一緒についてくるってことでよろしいですか?」

「もちろんです。私達も、国を、同胞を、数多く失いました。私達は奴に復讐を! それと、私達にさん付けは不要です。どうぞ名前だけで及び下さい」

 鬼人はキガシマ以外にも様々な場所に散らばっているが、大本はキガシマだ

 鬼人とは違いサイラは・・・、あの島にしかいない

 カガミさん一人になったということは、絶滅の一途だろう

「わかった。よろしく頼むよ」

「はい!」

「ついてくるのはいいが、カズマは俺の夫だからな。お前らは第三、第四、第五夫人な」

「おい待てファンファン、この人たちはそういう人たちじゃないから」

「私はいいですよ。種族が滅びる瀬戸際ですし、あなた、強いですよね相当」

「確かに、一見すると非常に弱弱しいただの人間族に見えますが、それは恐らく擬態。歴戦の風格すら漂っていますね。これは私達も立候補して良いのでは? ねえハク」

「はい姉様」

「ちょ、君らね」

「でもまあ、実力をこの目で見ないことには認められませんね。ではお願いしますカズマさん」

「俺もカズマでいいよ。じゃあいっちょ探しますか!」

 俺はすぐにアマテラス様の力、天の目を開いて世界を見通す

「おお、なんだこれすご」

「何で自分の力に驚いて、あ、神様にお借りしてるんでしたね」

 ハクが何か言っているけど気にせず続ける

 まるではるか上空から世界を見ているかのような感覚だが、段々となれてきた

「これは、どこだ?」

「何が見えてるんです?」

「えっとこれは、白い塔だ」

「恐らく賢者の塔だと思います。賢者のみが住まう場所」

「ここは大丈夫そうだ」

「まあ偏屈な老人たちが住んで日がな一日よくわからない研究に明け暮れてるだけの場所ですから、奴らも狙う理由がないのでしょう」

「賢者なんだろう? 凄い魔法とか研究しててまっさきに狙われそうだけど」

「いえ、彼らが研究しているのは科学と呼ばれる部類が多いようです。魔法は頭打ちですからね。出来ることはほぼ研究しつくされているのですが、化学は別です。遥か遥か昔に異世界人がもたらしたという、技術です。ただ・・・」

「ただ?」

「全て御伽噺で四方山話。本当なのか嘘なのかも分かっていません」

「ああ、化学はあるよ」

「え!?」

「俺の話は聞いているんだろ? 俺は転生者だ。あっちでは魔法なんてものは御伽噺で、化学が普通だったんだ」

「化学が、普通」

 この世界で化学が発展していないのは、魔法があるからだろう

 魔法の利便性により化学はすたれたんだ。多分

 そんな話をしていると、俺の視界に不思議な力が移った

「これは」

「見つけましたか!?」

「たぶん。ここはどこだ」

「目安になるものはありますか?」

「華麗な街並みだ。まるで中華街のような」

「中華街?は分かりませんが、華麗な街並み。龍人の国シュウロンかもしれません」

 シュウロンか

 確かアルビオナ様が加護を与えていたもう一つの国

「男が一人。ものすごい力だ! 急ごう!」

「転移門を出します!」

 二姫がパンと手を合わせると、空間に裂け目ができた

「これは」

「これですぐにシュウロンへ行けますよ」

「ありがとう二人共」

 二姫のおかげですぐに駆け付けることができた

 目の前に立つ男

 どう見ても日本人だ

「ハッ! 何だお前ら。破壊されたいのか?」

「お前、奴らの仲間だな」

「お、誰かに会ったのか? 生き残ってるってことは強いってことか」

 男はニタッと笑った

 こいつ、今までのどんな敵よりも、ヤバイ

 一瞬でそれが分かってしまった


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