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第119話

 北島を捕らえてフェンリナイトへと戻る

 ひとまず彼は牢に入れておくことになった

「死刑で構わんだろう。フローレンス王国を壊滅させた男だぞ! 被害も甚大だ。即刻死刑だ!」

 そう言った声がいくつか上がったが、フェンリナイト王のツルの一声で俺に裁量の判断はゆだねられた

「確かに死刑に値する罪かもしれません。ですが、反省を促し、その罪を償わせることが大人の役目です」

 まだ少年と言っていい北島

 彼はこれから生涯をかけて罪を償わせる

 力ももうないし、本人ももう暴れる意思もないようだ

 彼を牢につなぎ、ひとまずは任せることにした

 俺がいない間に処刑されることはないだろう。王達の言質はとれてるしな

「さて、次だ! 早く止めないとな」

 再び目を使って世界を見る

 北島に情報を聞いたところ、他にいる異世界人は二人

 能力は知らないそうだ

 それが仲間のための嘘なのか、本当に知らないのかは分からないが、人数が分かったのはありがたい

 それと、その異世界人以外に真っ白な見た目の少年少女がいるらしい

 そっちの方はセイヴと行動を共にしていることが多いらしく、彼が知っていたのはスクイとタスクという二人

 得体が知れず、自分でも確実に勝てないと言っていた

 そのことから恐らく、残り二人の異世界人よりもはるかに強いんだろうな

 その白い者は他に何人いるのかは全くの不明

 詳細が分からないからどう警戒していいのかも分からないな

 とりあえず今はその異世界人を探すか

 セイヴ自体は世界を渡るらしく、常に隠れているんだろう

 この力はそう言った世界すら越えてみることができるらしい

 が、まずは部下を叩き、奴を引きずり出す


 それからしばらく世界を見続けたが、ひとり倒されたからなのかいくら探しても痕跡すら見つけることができなかった


 さて、ここがカーネン商業国か

 アルトロ空国と同じく商業の要だ

「消えろ。ザ・ロス」

「待ってくれるかなエイジ」

「セイヴ様!?」

「実はレンタロウがやられてね」

「!? レンタロウがですか? 彼は僕と同じくらいの実力があったはず。単純な戦闘能力なら彼の方が上のはずです。とてもこの世界の者に倒されるとは思えないのですが」

「それが倒されちゃったんだよねぇ」

 嬉しそうだなセイヴ様

 強敵と戦いたい、みたいな戦闘狂の一面があるのだろうか?

 レンタロウとはそこまで親しい間柄ではないけれど、一応は仲間だ

 僕と同じような悩みを抱えた仲間

「彼は無事なのですか?」

「大丈夫。向こうは甘ちゃんだから、殺したりはしないよ」

「ほっ、それならよかったです。救出に行きましょうか?」

「いや、少し姿を隠すよ。相手はこっちの位置を正確に把握できるみたいだからね。いったんこの世界から姿を消して体勢を立て直そう」

「分かりました。そう言うことでしたら従います」

 セイヴ様は別世界に行くためのポータルを開き、僕の手を引いてくれた

 温かい手だ

 彼は優しい。僕が元居た世界にはいなかった、僕を認めてくれる大人

 彼のためなら僕は、どんな非道だろうと外道だろうと出来るだろう

 それほどまでに心酔している

 口は悪いけど、レンタロウもそうだと思う

 ミナも正義を成すため、セイヴ様の指示で動いている

 僕たちは、彼に出会えてどんなに救われたことか

 だからこそ彼は、救世主なんだ


 セイヴ様とともにまたあの発展した世界へ戻った

 そこのビルの一室、社長室なのかな?

 その椅子に座るセイヴ様

 どうやらこの世界で会社を興して大成功しているらしい

 これだけのカリスマ性と、人心掌握に長けた話術

 彼が成功しないわけがない

「さてみんな、予想外だったけど、あの世界にもかなりの強者がいるようだ」

「セイヴ様の邪魔するなら、私が終わらせる。正義の邪魔するなら許さない」

「まあ待ってミナ。君もやられただろう」

「でもー」

「はいはいわがまま言わない。ミナ、セイヴ様を困らせちゃだめだ」

「はーい」

「そこでだ。君たちをもっと強化しようと思うんだ」

「いいのですか!?」

「うん、ただね、結構辛いと思う。もしかしたら自我を失うかもしれないし、最悪死ぬかもしれない。それでも良いな」

「もちろんです!」

「やって!」

 僕もミナも、すぐに了承した

 そりゃそうだ。彼の役に立つって言うのが僕らの至高なんだから

「ありがとう。君たちには感謝してるよ。それと、レンタロウの救出も頼めるかな?」

「はい」

「彼は力を失っているから、もし行きたくないと言ったら僕に言って。元の世界に返すから」

「分かりました」

 元の世界。あの地獄に帰る? レンタロウは帰りたいと思うはずがないさ

 きっと僕の手を取ってまた共に戦ってくれるさ

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