暗い、暗い道の中を歩く
ただただたんたんと歩き続けてそれでもこの暗闇から抜け出せない
もう何をしていたのかも、自分が誰なのかも薄れてきて分からない
だが、光が差した
希望をそこに見出して重い足を、引きずりながらでも、あるく
奴が見ていることは分かっているが、現状防ぐ手立てはない
あの目は恐らく世界すら越える
今は仲間が攪乱してくれてはいるが・・・
ああ、彼らは裏切ったわけじゃない
結局のところカズマを翻弄してくれればいいんだ
本当に、いい仲間を持った
僕の大事な仲間
あの時のようなことはない。僕は守れるだけの力を得たからね
もう、誰も殺させない
それに、カズマが誰かを殺すことがないのは今まで得た情報から分かっている
あれは根っからの、魂に癒着するほどのお人好しだ
ランスと同じくね
だからこそ付け入るスキがある
カズマさえなんとかできれば、後はとんとん拍子に事が運ぶはずだ
フェンリナイトにカズマの気配はない
「いいよ、エイジ」
僕の合図でエイジの力が発動する
カズマは彼の力を封じたつもりだろうけど、彼の力はロストじゃない
彼の力の本質はなくすことではなく、消すことにある
彼の本来の力の名は
「ジ・イレイズ」
セイヴ様の合図が出た
消去、消去、消去
消したい。それが僕の願い
何もかもなくなってしまえ!
僕の周囲からなくなっていく
今はヒト以外だ。ここからはヒトを消さず殺さず、セイヴ様の世界の礎とするために動いてもらわなくては
「なん、だよ、これ」
「ああ裏切り者のレンタロウ。僕はここにわざと掴まりにきたんです。何も阻むものがなくなったでしょう? この国は間もなく完全にこの世から消える。世界の主軸を担っていたこの国は消えるんだ。もはやこの世界は国では機能しなくなるよ」
「エイジ、もう止まらないのか?」
「ああそうだねレンタロウ。止まるわけにはいかないんだ。それが、犠牲を出してまでこのワールドオーダーを担う僕達の、覚悟で贖罪だ」
「それが本当に贖罪になると思ってんのか?」
「そうなるように変えるんだ。世界を」
レンタロウと決別し、僕は再び北方の国、ラファルへと戻った
ラファルではすでに魔物との戦いが始まっていた
「何処へ行っていた新人」
「すみません、緊張して少しトイレに」
「そうか、では気を引き締めてかかれ」
「はい」
僕は魔物へと向かって走り出す
「おい新人、武器は!」
「いりません、僕にはこれがある」
僕はイレイザーの力を込めた短剣を抜く
「あの小僧、あの武器何処から出した?」
そんな声が聞こえたけど、気にせず魔物を斬り、ズタズタにし、戦場の真っただ中へと入って行った
ここまで出て来ている魔物はどうでもいい
僕が目指すは魔物が出て来ている穴
その深淵へ
「新人! 出すぎているぞ! 戻れ!」
止める声も聞かず、僕は一直線に穴へと走り、落ちた
暗い穴を落ちて行く
「ジ・イレイズ」
力を使って落ちるという事象を消し、体を浮遊させる
落下するという現象がなくなり、浮遊するという現象だけを残した
これにより僕は安全にその穴の底へと落ちた
穴の底に降り立ち、そこを進み始めた
なるほど、この道を通って魔物たちは這い出て来ていたのか
どの魔物もこの世界では見たことがないと聞く
でもあの国の人間で対処できるってことは大したことないってことだ
そのまままっすぐ進み続ける
分かれ道などがないことがせめてもの救いだろう
セイヴ様はここの最深部に向かってほしいと言っていたけど、一体何があるんだ?
あの方でも最深部まで見えないと言っていた
時折魔物が群れて襲ってくるが、問題ない
ただ、奥へ進むほどに魔物は強くなっていってる気がする
いや、どれもこれも一撃で鎮めれるからあまり変わりはないか
体感で強くなっているかな?と感じるくらいだ
長い長い道を進み、数多くの魔物を倒しながら進んでいるが、かれこれ二時間近く歩き続けても深部にはつかない
険しくはない。魔物も十分対処できている
順調すぎて怖くなるほどだけど、今は考えないようにした
あてどない道をとにかくまっすぐに進み、ついに僕は最深部へとたどり着いた
あまりにも広いドームのような場所に出た
ところで異様な気配がすることに気づく
そしてそこにいたモノを見て、僕は驚き、思わずたじろいで、足が自然と後退していた
「なんだ、これは・・・」
その異質さと形容しがたさは、僕の心をかき乱し、不快にした
これは、これはまるで・・・
そのナニカはゆっくりと首を持ち上げてこちらを見た
恐ろしい。ただその感情だけが僕の心を支配している
コレはなんだ? 一体僕はナニを見ているんだ!?