「声入ってる?あーあー、音声聞こえてるかなあ?えーと、じゃあ、音声チェックを兼ねて自己紹介していこっかな~?もし、誰かの音声が小さかったら教えて欲しいな。じゃあ、まずはセイちから!」
うぃんたそに振られてセイラが喋りだす。
「星よ煌めけ!ボクが届けるみんなの願い星!星羅セイラ!えーと、次は秋城クン‼」
「こんしろ~うぃんたその枠での生放送はっじまるよ~ゆっくりしていってね。で、これでうぃんたそに返す、と」
「あは、バトンをきっちり受け取りました。勝利を運ぶっ、鈴の音鳴らすVTuber‼鈴堂うぃんだよ~~‼」
俺達の各々の自己紹介が終われば、コメント欄が賑わいだす。
『秋城少し小さい』
『声低いからもう少し大きくして』
『うぃんたそはいい感じ』
『セイちも問題なさげ』
「りょうか~い、じゃあ、秋城さんだけ少し大きくするね。……秋城さん喋ってみてー」
「あーあー、これでどうだ?」
『グッド』
『よさげ』
『問題なし』
『OKだよ~』
「よしっ、問題なさそうだね!じゃあ、改めてわたあめシチュエーションボイス配信していくよ~!」
『わ~』
『うぃんたその甘々ボイス待機』
『セイち~~~俺の投稿読んでくれ~~』
『秋城、楽しみにしておけよ』
ということで。今日はわたあめシチュエーションボイス配信……わたあめで募集したシチュエーションボイスの台詞を俺たちが読み上げる放送だ。
「そうそう、ボクとうぃんちゃんの都合でわたあめには一定の検閲が入っているので読まれなかったわたあめに関してはそう言う事情だと思って欲しいな」
「あたしたちがハブいた訳じゃないので!ごめんねぇ」
まあ、これは仕方ない。うぃんたそとセイラに関しては明確に俺と違って売り出したい方向性がある。営業妨害されたらたまったものではないからな。そんな注意も程ほどに。
「じゃあ、早速!……まず誰からいこっか?」
「とりあえず、枠主から?」
「ふふ、こういう時はセイんちゅや信者、お前らに聞くのが一番じゃないかい?」
セイラの提案を受けて、うぃんたそが爆速で簡易アンケートを設置する。
「公平にセイちの案で行こうかな!じゃあ、1分以内にみんな投票お願いね~」
うぃんたそが両手を合わせて言えば、早速アンケートのグラフがぐいんぐいん伸びていく。こういう時に2人の放送の上手さ、というか視聴者を巻き込む案がよく出てくるな、と関心するものだ。流石プロ。
「お、やっぱりうぃんたそとセイラが勢いよく伸びてるな……誰しも最初は推しの声を聞きたいよな」
分かる分かる。そう腕を組んで頷いていれば、うぃんたそが声を上げる。
「ちなみに、秋城さんを一発目にすると綺麗な出オチが見れます」
「ちょ、うぃんたそ!」
それはそうなんだけど!俺のわたあめ1枚目かなりの出オチだったんだけど!それを言ったらハードルが上がるというか、ねえ⁉
そんな俺の心中とは関係なく、うぃんたそとセイラに注がれていた票が一気に秋城に集中する。お前らそんなに俺を辱めたいのか?
「わあ、秋城さん、凄く秋城さんが伸びてる!」
『出オチ期待』
『とりあえずトップバッタ―やらせようぜ』
『とりあえず秋城で』
『とりあえず、ね』
「俺は生ビールかなにかか?」
「とりあえず秋城クンで!」
そうして、あっという間に1分が経ち、棒グラフは圧倒的に俺を指し示していた。
「圧倒的だね!じゃあ、秋城さん一発目行けるかな?」
「お、任せてくれ。今わたあめ開くな~」
そうして、事前に久来さんによって送られてきた選別済みわたあめのファイルを立ち上げて画像を表示する。それを確認して、俺は机の周りに無造作に置かれているバトマスのカードを4、5枚手に取る。そして———完全に手癖で始めるシャカパチ。
『シャカパチ⁉』
『まさかのシャカパチASMR⁉』
『あ~~~実家の母親の声より聴いた音』
『↑もっと親の声を聞け』
「いや、これは雰囲気づくり。まあ、シャカパチ音をちゃんと拾ってるようで何よりだ。……じゃあ、うぃんたそわたあめを頼んだ」
「はぁいっ」
そうして、うぃんたそがわたあめを放送画面に貼ったと同時にマイクにエコー効果を入れる。シャカパチをしながら俺はわたあめを読み上げる。
「負けでいいですぅ……?負けました、だろぉう⁉」
『wwwwwwwwwwwwww』
『マジで出オチやんけwwwwwwww』
『そうしてCS出禁へ』
『これは非紳士的行為』
そうして、エコーをオフにして俺は手元のカードをキーボードの横に置く。
「一応言っておくが、俺は実際のCSでこんなこと絶対に言わないからな⁉お前らも言うなよ?身内ネタだから許されるやつだからな⁉」
こうでも言っておかないとやるやつが出かねないので、一応。
『分かってるwww』
『マジでやっちゃいけないのは伝わった』
『はーい』
『秋城必死の注意喚起』
「というか、一番最初がこんなTHE・内輪ネタでいいのか……」
「ふっ、ふふ、い、いいんじゃないかなあ……?」
「ぶふっ、ボクもいいと思うよ?」
うぃんたそもセイラも笑いを堪えてますねえ。というか、マイクオフにして笑ってた疑惑しかない。
「さて、一番最初は態度の悪いカードゲーマー秋城さんでしたぁ!一枚目から秋城さんらしいわたあめが来たねっ」
「カードゲームネタだから、らしいと捉えておくことにするわ。マジで実際にこんな態度取らないからな~」
『分かってるやで』
『大丈夫だよ、ニキ』
『安心してくり~』
『秋城は紳士だからな』
「ふふっ、秋城クンが紳士は意味合いが変わってきそうだけどね。さて、じゃあ、次はボクかうぃんちゃんか……」
「あ、あたし行っていい?」
「いいよ~、じゃあ、お次はうぃんちゃん‼」
そうして、パッ、とわたあめが切り替わり、うぃんたそのマイクにエコーが入る。
「今日ちょっと寒いねぇ……信者さんたちと出会って何十回目の冬だろ。ねえ、信者さん……うぃんたそとあとどれだけの冬を、越せるんだろうね?」
うぃんたそ迫真の悲恋演技。うぃんたそはあくまで大天使なので人の寿命に縛られない、それ故に人との寿命差に、信者たちとの未来を憂ううぃんたそ、これはいいうぃんたそシチュエーションボイスだ。
『うぅぅううっ……』
『うぃんたそのために長生きします』
『うぃんたそいきなりかましてくるなあ』
『うぃんたそのためなら寿命を延ばしてみせるぞッ‼』
そうして、エコーを切ったうぃんたそが演技モードからいつも通りの笑顔に戻る。
「たは、ちゃんとみんな長生きしてよね~このみんなは信者のみんな、だけじゃなくて、セイんちゅのみんなもお前らのみんなも、だよ?」
『お、俺らも……?』
『うぃんたそが全てを包み込んでいく』
『包容力すげえんじゃ~~~~』
『信者になっちまう』
「ボクも長生きしてみせるよ……」
「いや、セイラはどっちかというとうぃんたそ寄りだろ」
これはセイラ———、星羅セイラの基本設定のお話になるのだが、セイラは宇宙から降り注いだ星が自我をもってアイドルになった、というのが基本設定である。なので、寿命の話になるならどっちかというと人間よりはうぃんたそ(大天使)寄りになるであろう、というお話だ。
「どうだろう。星と天使の寿命なんて比べたことないからなあ」
「でも、天使は寿命とかないと思うし、セイちの方がギリギリ寿命短いって言えるのかな……?」
『明るく暗い話題を話すなwwwwww』
『これがご長寿談義』
『ご長寿(何百歳レベル)』
『有限と無限じゃあなあ』
「ま、この中で一番寿命が短いのは間違いなく俺だな。頑張って長生きするわ」
「え、でも、秋城さんは奥義・転生があるから……」
「死んでも生き返るのは無限扱いだろう?……あれ、結局死ぬのボクだけ?え、やだ———ッ、ボクだけ仲間外れじゃないかい!」
論点はそこなのか?とかツッコミたいことはあるが。
「まあ、宗教チャンネルじゃあるまいし寿命の話はこれぐらいにしておこうぜ」
これ以上はこの生放送の趣旨が分からなくなる上に、デリケートな話題を続けるのは収益状よろしくない。具体的にはそういうデリケートな話題が嫌いな視聴者が離れていってしまう、それはよろしくない。その雰囲気をセイラも感じ取ってくれたのか、うぃんたそと共に適当に流してくれる。