「でも、それ分かるかも。秋城さんちゃんと告白されたら保留とかにはしなさそうだよね」
「キープって概念、秋城クンの頭の中になさそう」
「ねえな。そういうのは相手に失礼って言うのもあるけど……普通に落ち着かなくね?自分が」
多分そんなことをしたのなら、その相手と話すたびに、相手の告白の答え保留してんだよな、みたいなこと俺は考えてしまう。そんなノイズの入った日常生活はお断りだ。
『でも、秋うぃんはするし秋セイもする』
『これは実質浮気では?』
『どっちなんですか!』
『セイラなんですかうぃんたそなんですか!』
「秋うぃんで頼む」
「あーっ、そうやってボクから逃げる‼」
「再三言ってるだろ?秋セイはない」
セイラがぎゃんぎゃん吠えてるのを聞き流しながら、俺は視線を斜め明後日に向ける。聞いてませんよーというポーズだ。
「でも、実際、うぃんちゃん的に秋うぃんある派なの?」
セイラの問いかけにうぃんたそが首をぐりん、と動かしてうぃんたそがセイラを見る。
「秋うぃんはあるよ‼ていうか、うぃんたそのデビューしてからよりうぃんたそが秋城さん推してる歴の方がずっと長いんだから‼秋うぃんはあります‼……ていうのが秋城さん推しのヲタク的うぃんたそな回答かなあ?」
その目は真剣だった。爛々と瞳を輝かせ、鼻息を荒くしながらの早口回答、まさにその姿はヲタクである。
「えー、秋うぃん両想いかあ。でも、アイドルとしてそれはよろしくなくないかい?」
「それ言ったら秋セイもなくなるけどいい?」
「あっ」
『あっ』
『頓死したwwwww』
『自爆wwwww』
『秋うぃんも秋セイもないし、2人に絡む男は消えればいい』
見事な自爆だったな。なんとか秋セイの隙を作ろうと投げ込んだ言葉が自分を焼くとは思わなかったのだろう。俺は笑いを噛み殺しながら口を開く。
「まあ、秋うぃんも秋セイも視聴者が二次創作する分には全然俺はいいと思うわ。俺が秋うぃん派なのは俺の推しがうぃんたそだっていうだけだしな。あとそもそも、てえてえは押し付けるものじゃなくてこう、な?」
『自然発生するもの』
『俺たちが見出すもの』
『てえてえはしようと思ってするものじゃない』
『てえてえは感じるもの』
まあ、一部うぃんたそによる作為的なてえてえはありますが。それを視聴者に感じさせてはいけないのだ。あくまでなんか偶然生まれた、だからてえてえと感じるのだから。
「つまり、自然発生したボクとのてえてえなら秋城クンも肯定してくれるってことかな?」
「まあ?あ、でも、その後ごり押されたらばっさり切るからなー」
「ぐぬぬぬ……難しい」
セイラが難しそうな顔で首を捻っていると、うぃんたそが人差し指をくるくると回しながら口を開く。
「ていうか、そもそもなんだけど。セイちはなんで急に秋セイを推しだしたのかな?」
そんな、疑問。確かに、秋うぃんは幕開け配信で何故か見出された概念だったが、秋セイに関してはセイラがコラボ当初から推していた気がする。無論、コメント欄も———。
『確かに』
『気になる』
『kwsk』
『セイちは秋城推してたっていうのも聞かないしな』
「理由かー。あ、でもこれボク分かるよ。下手なこと言ったら炎上するやつだね……ということでボクからはノーコメントさ。決して、秋うぃんを見てバズ狙えそうとか思ってないからね!」
『言ってるwwwww』
『つまり秋セイはビジネス?』
『ビジネスてえてえはそれはそれで』
『秋セイはビジネス、覚えましたし』
なるほど。これなら視聴者の中に秋うぃんも秋セイも両立させられる、と心の中で拍手を送る。偶然生まれた秋うぃんに対して、意図的なてえてえの秋セイ。実際はどうなのかは置いておいて、これはビジネス秋セイと言い張れるメリットはでかいだろう。
こういう対応の上手さにセイラのVTuberとしての活動歴の長さを思い知る。
「お、俺は何も聞かなかったぞー」
「うぃんたそも聞いてないよー」
そんな風に流しながら、うぃんたそが「あ」と呟いた。
「そろそろお時間だねっ。結構わたあめ読めたね~」
「そうだね。でも、全部を読めなかったのがボクは悔しいかな……。こんなにいっぱいわたあめを貰ったのに……」
「それはそうだな。まあ、言ってもこれが最後って訳じゃないし、次の機会に読んでいこーぜ」
『次があると聞いて』
『やはり、多人数コラボはええなあ』
『次はニキにも甘々とかやってもらいたい』
『秋城の黒歴史量産計画』
「俺の甘々シチュエーションボイスとか何処向けだって。お前らが切り抜いて玩具にして終わりだろ」
「え、でも、うぃんたそ聞きたいよ?」
「ボクも気になるね」
「……善処と検討を重ねさせていただきます」
『やらんやつやんwwwwww』
『wwwwwwwww』
『やれwwwww秋城wwwwww』
『次は秋城シチュボ配信だな』
なんだその需要のなさそうな配信は。いや、今日のシチュエーションボイス配信も俺だけかなり謎だったけどな?
「でも、実際に秋城さんが甘々シチュボ配信やったら噛み噛みシチュボ配信になりそうだよねぇ」
「確かに」
それは一理どころか百理ぐらいあった。絶対やる、大事なところで噛み噛みになる、それが俺だ。
「ふふ、ボク大爆笑する自信あるね」
「なんでやる前提なんだ」
「やらないのかい?」
「やらんわ!」
『噛み噛みシチュボ配信』
『新しいwwwww』
『最早何を言っているか分からなくなる』
『何度でもリテイクしてやろう』
「いや、やらんが?やらないからな??……余程やることが無くなったとき以外」
コメントが草で溢れる。まあ、こういうのはいつか忘れた頃にやるものだろう。ということで、しばらくはやらない。覚えてるうちはやってなるものか。
「じゃあ、秋城さんにいっぱい放送をやらせてネタを吐かせなきゃだねぇ。じゃあ、そろそろ放送閉めようかな?セイち、秋城さん、おつうぃん、でいくよー?」
「あいよ」
「了解」
「せーのっ」
「「「おつうぃん~~~~~」」」
『おつうぃん』
『乙』
『次はASMRで』
『おつうぃん~~~』