そしてかきさんがロストしたので、ゲームが3回戦目に自動で移っていく。
「く、かきさん……‼君のことは忘れないよ!ボクは最後まで残ってみせるからね!」
「いや、見事な昇天だったな。流れとして完璧だったわ」
『それな』
『いいセイんちゅだったよ、かきさん』
『かきさん、あんたVに向いてるよ』
『というか秋城の手番が回ってこないな』
「それな。俺がカードを出す前にゲームが終わってる……これ最早俺なにもしなくても勝てるのでは?」
「そうはさせないよ!かきさんの思いを継いでボクが最後まで残ってみせるんだ!」
「ハロさん、セイラ積極的に告発してこうぜ」
俺の声かけにこくこくと頷くハロさん。
「そ、それはナシじゃないかい?2対1はズルじゃないかい⁉」
「まあ、ほら、俺も秋うぃん派閥なんで……」
ハロさんも申し訳なさそうにこくこくと頷く。お、これは勝った気しかしねえ。
『セイちの敵しかいないwwww』
『これは死にましたねえ』
『可哀そうに』
『実質信者VSセイラ』
「えーと、かきさんが落ちたから次の手番はハロさんか。んで、俺、セイラ、と」
確認している間に手札が配られる。テーブルの指定スートはダイヤ。俺の手札はダイヤが3枚にハートが1枚ジョーカーが1枚。激強だ。これは負ける気がしない。
「……ハロさん、俺がダイヤを3枚持ってるからハロさんの手札と照らし合わせてセイラを告発してくれ~」
「え、え、本当にそういうズル始める気かい⁉え、でも、それってボクが聞いてよかったの……?」
「問題ねえな。この情報を元にハロさんがどう動くかはハロさん次第だし、セイラも俺が言ってることが嘘か本当か分からないだろ?」
『まさに伸るか反るか』
『ハロさん視点だと半分のダイヤの居場所が分かったからなあ』
『今この場でハロさんに嘘つくメリットないし』
『告発を通しやすいよな』
そうそう。まあ、セイラが配信画面を見ていたらどうにかなってしまうのだが……まあ流石にそんなことはしていないだろう。そして、ハロさんが2枚のカードを場に出す。当然、告発はしない。
「え⁉2枚⁉ボクが2枚持ってるのにそれはないよ~……あ」
セイラの時が止まる。
『自爆したなあ』
『分からん、これは策略かもしれん』
『↑セイちそんな器用じゃないってえ』
『「あ」が素だったからなあ』
「セイラがダイヤ2枚な~」
俺はそう言いながらジョーカーを1枚差し出す。すると、俺の差し出したカードの枚数を見てセイラがガタッと揺れる。
「……秋城クンなんで1枚?」
「別にこれは手札を消せば勝てるゲームじゃないからな。いかに安全な手番を確保するか、だろ?」
「ふっふっふっ、安定志向なんて秋城クンらしくないんじゃないか~い?ボクは考えるね!最初に危険なカードを切ろうとしたんだろう、って!つまり!」
セイラの兎のアバターが机をダン!と叩く。
「殺られる前に殺る‼秋城クンを告発だ!」
そうして、カードが自動で動き俺の出したカードがオープンされる。そのカードは———。
「ふぇ?」
「は、残念だなセイラ」
『うーん、お見事』
『そうだね、ダイヤではないよ』
『ダイヤ以外にも有効カードあるんやで』
『ガチで勝ちに来てるやんけw』
オープンされたカードはどこのスートにも属するジョーカー。そして、カードがオープンされればセイラの兎のアバターがリボルバーを手に取り、こめかみに銃口を当てる。
「あ、あ、あ、だってえ~~~待ってたらボク確負けじゃん~~~~自分から仕掛けにいくしかないじゃん~~~~~」
「まあ、この状況になった時点でお前の負けだ、セイラ」
そして、トリガーが引かれ———パァンという破裂音。飛び散る脳漿、ガタンと机に突っ伏し、びくっびくっと何度も跳ねるセイラの兎のアバター。
「し、死に様リアルだな……」
俺はついつい、片目を瞑ってセイラの兎のアバターを見ないようにしながら水を飲む。
「うわ~~~ん、秋城クンに殺されたよ~~~」
「はは、ちなみに今のゲームは手札がダイヤ3枚にジョーカー1枚、ハートが1枚だったから俺を告発する方向で殺すのはほぼ不可能だったんだよな」
「つまり告発した時点でボクの負けだったってコト……?」
「そういうこと」
セイラ大絶叫である。まあ、ほぼ嵌め殺しみたいなもんだったしなあ。今後はこういう心理陽動はできるだけやらないようにしてやろう、そんなことをぼんやり考えながら手札が配り終えられる。
「さて、ハロさん二人きりだな。もうゲームも終わりだ、楽しかったか?」
ハロさんがこくこくと頷いてくれる。
「お、それは俺も嬉しい。さて、次のスートは……」
テーブル指定のスートはスペード。俺の手札はスペード1枚にハートが3枚ダイヤが1枚。これは死んだか?なんて思っていると———ハロさんが手札三枚を出してくる。
「マジか。手札つぇえな……それなら……」
と、俺が手札のカードを選ぼうとしたとき。ハロさんがじっと視線を斜め下に逸らす。
「ん……?ハロさん?」
斜め下を見続けるハロさん。そのハロさんの行動は何か意思を持ってそうしているようで。もしかして、と思い俺は声をかける。
「もしかして……勝ちを譲ろうとしてくれてるのか?」
俺の方をちらり、と見てゆっくり頷くハロさん。
『ハロさんとの間に友情が芽生えてる……』
『ハロさん、いいやつじゃねえか』
『本当に秋うぃんが好きなんやなあ』
『ハロさん……』
そんな思いを無碍にはできなくて、でも、ハロさんといういい人を此処で殺してしまっていいものかとついつい葛藤してしまって。
「く、う……‼このテーブルについた時点でこうしなきゃいけなくなる運命だったんだな……分かった、終わらせよう、ハロさん」
そして、俺はハロさんの3枚のカードに対して告発をする。豚のアバターが机をダン!と叩き、カードが宙に浮く。その瞬間、満面の笑みになるハロさんの豚のアバター。ああ、今送ってやるよ、そんな気持ちでカードを眺めてれば———。
「え」
『草』
『wwwwwwwww』
『やーい、嵌められてやんのwwwww』
『見事に裏切られたなwwwww』
そこには3枚のスペードのカード。つまり。
「え、え、え……?」
ハロさんの満面の笑み、自動で俺の豚のアバターのこめかみに突きつけられるリボルバーの銃口。
「うわあああああああぁああぁぁぁ!」
パァンッ、そんな乾いた音共に視線が落ちる。どうやら、ロシアンルーレットにも負けたようだ。そして、このゲームの勝者であるハロさんが画面に表示される。
『ハメてハメられたな』
『いやあ、面白かった』
『こういうのがこのゲームの醍醐味だよな』
『秋城プギャーm9』
「おおう……まさかハメられるとはな……」
「いや!ハロさんありがとう!よくやってくれたよ!ついでにセイんちゅにもならないかい⁉」
『セイち活き活きしてんなw』
『敵討ちしてくれてよかったね』
『でも別にセイちのためじゃないんだろうなあ』
『ハロです。秋城さんは虐めるといい声出すって知ってたので……』
「俺はつついたら鳴る玩具か?……いや、でも、最後のアレはやられたーって感じでいいゲームだった!来てくれてありがとな~」
「ボクからも感謝を!さて、じゃあ、次のゲームに行こうか、秋城クン」
「そうだな、ルームコードは同じだから……って言ってたらもうきたか。さて、ゲームスタートだ!」
そんなこんなで何回目かのゲームを終えて。そろそろ、ちょっと雑談して枠を終える流れになった。
「いや~、セイんちゅやお前ら以外にもいっぱい来てくれたな」
「だねえ~というか秋城クンの口からセイんちゅや信者やお前ら以外のファンネームが出てくるのが意外だったよ」
「忘れられてると思うが、俺は割とVTuberヲタクだからな」
『信者の部分がでかすぎてな』
『シスターズとか神待ちとか男Vのファンネームも分かるとは思ってなかったわ』
『マジで知識の幅広いな』
『流石V豚』
ちなみにシスターズがうぃんたそと同じ天使族のリトエルさんのファンネームで、神待ちが男アイドル系の神楽坂さんのファンネームだ。
「まあ、それでも追えてない箱はいっぱいあるがな。実際@ふぉーむさんぐらいだし、全体的にカバーできてるのは」
「まあ、@ふぉーむだけでもそれなりの人数居るし、追えてるだけ凄いじゃないかい」
『まだ、30人ちょいだからいけるいける』
『推す箱増やそうぜ』
『Conp@sとかいい子揃ってるよ』
『キングダム社もよいぞ』
お、布教モードに入ったヲタクたちのゴリ押し。俺は頬をぽりぽりと掻きながら答える。
「いや~、たかが30人されど30人っつーか。@ふぉーむさん以外のVTuberまで見始めたらマジで放送時間が消えるわ」
「前世?みたいに睡眠時間削るって言わない辺り偉いじゃないかい」
「身をもって思い知ったからな」
『そして秋城二度目の転生へ———』
『↑俺たち次の秋城が来るまで生きてるかな』
『もう死ぬのはなしやで』
『心臓に悪すぎるw』
「大丈夫大丈夫。マジで健康には気を付けてるし、死ぬような無茶はぜってーしないって決めてるからな。……さて、じゃあそろそろ配信閉めるか~」
「そうだね、セイんちゅやお前ら、それ以外にも今日遊びに来てくれたみんな。今日はありがとう、とても楽しかったよ!」
「また、視聴者参加型はやる気があるから機会があったら是非来てくれ~。んじゃあ、せーのっ」
「「おつしろ~~~」」
『おつしろ~~~』
『乙~~』
『おつしろっ!』
『おつしろ~』