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第30章 アニマルの森でチル配信ってアリですか?

「こんセイち~、今日の最後をボクの配信で彩りを添えようと思うよ。えー、星よ煌めけ!ボクが届けるみんなの願い星!星羅セイラだよ~。じゃあ、お次。秋城クン」

「こんしろ~、セイラ枠での生放送はっじまるよー、ゆっくりしていってね」


『こんセイち~~~』

『こんしろ~』

『こんセイち』

『わこつ』


「さて、今日の生配信……秋城クンにとあるゲームを布教しようと思ってね」


 そう今日の配信はセイラから突如俺のゲームアカウントに送信されてきたゲームについての配信だ。


『セイちが布教しまくっているゲーム……アレか』

『@ふぉーむ内以外にもバラまいているだと?』 

『まあ、秋城だし』 

『セイち一体このゲームにいくらかけてるの?』


 そう、そのゲームはセイラが今絶賛@ふぉーむ様のVTuberに布教という名の配布を行っているゲームである。セイラ曰く「色んな人の島を見たい」とのことで。


「いくらぐらいだろ?一本6000円ぐらいだからー……うん、考えないようにしよう」


 こらこら。


「ということで今日のゲームは~……『つどえ!アニマルの森』だよ~」

「ちなみに俺はキューブボックスの頃にちらっと触った程度だな。ほぼ記憶も霞んでるから初見と同じ程度だと思ってくれ~」


『キューブボックス⁉』 

『そういえば、転生者なんだっけ?』

『QS時代ですらないだと……』

『秋城何歳?』


「ちなみに秋城クン、キューブボックスって何?」


 セイラの声に俺に走る衝撃。え、キューブボックスをお知りにない?知らない?マジ?俺は驚きの余り口を開けた表情のまま固まり、そのままワナワナと口を動かし始める。


「に、2001年に出た54の次の家庭ゲーム機……」

「ゴーヨン?」


 俺はセイラの恐らく54すら理解してないであろう声に驚きの余り口を覆って固まってしまう。


「ふ、ふふ……カフェイン飲料飲むぜ……」


 動揺を隠すように俺はカフェイン飲料の缶をカシュッ、と開けて一口飲む。ふう。


「この話題辞めよう。俺の負けだ、セイラ」

「え、なんかよく分からないけど勝ったのかい?い、いえーい?……ということで、今日はほぼ初見の秋城クンのアニマルの森を見守っていくチル配信って訳だね」


『セイちがいる時点でチル配信は無理かと』

『セイちに一番できないジャンルじゃねーか』

『秋城チルれそう?』

『クソデカセイちボイス』


「はっはっはっ、セイラと配信する上で一番無縁な言葉だな。チル配信?俺は常に心臓バクバクだわ」

「え、ボクが美しすぎて?」

「お前が奇行に走るからだよっ」


 もうこのツッコミの時点でチルとはかけ離れている。寝させる気の欠片もない。そもそも、あの星羅セイラだぞ?チル配信なんてものとは一生無縁そうなVTuberだぞ?


「いやいやいや、今日こそはね。ボクが秋城クンに癒しを届けて見せるよ!ということで、秋城クンのゲーム画面だよ~」


 そんな言葉と同時に、俺のゲーム機に表示されているゲーム画面がそのまま配信に乗る。セイラ指示の下、キャラクリエイトまでは終わらせたが、肝心のゲーム本編はなんも、だ。そう思っていると、ゲーム画面上に「かわいいせいらの入室を許可しますか?」と出る。恐らくゲーム機のフレンド欄から入ってきたのだろう。


「あれ、この間まで「イケセイち」じゃなかったか?」

「秋城クンにボクの可愛さを刷り込もうと思って?」

「お、普段の行動から改めろ~」


『それはそう』

『まず暴走列車を押さえるところから』

『悔い改めて』

『でも、年末ライブときめいてたよね?秋城』


「え、年末ライブのときボクにときめいてたの?秋城クン?」


 きらきらとエフェクトを無駄に漂わせて凄い機嫌よさそうに聞いてくるセイラ。う、セイんちゅめ。


「ときめいてはいないぞー。いや、一瞬可愛く見えただけだ。アレは幻想」

「え、幻想じゃないよ。ボク可愛いでしょ?」


 顔面の圧。きらきらどころかぎらぎらとちょっとやりすぎなぐらいの大量のエフェクト。


「そう言うゴリ押しは可愛くねーな」

「まーたそうやってボクにだけ塩対応になる~うぃんちゃんだったらぜーったい「可愛い」って即答してたんじゃないかい?」

「ばっ、ったりまえだろ⁉うぃんたそだぞ⁉常に可愛い!」

「ボクにもその3分の1でいいから可愛いって思ってくれないかい⁉」

「ないッ!」


『即答wwwwwwwwwww』

『まあ、セイちは可愛く見えたら負けなので』

『↑セイちはかわええやろ』

『また戦争が起こりそうな話題を……』


 俺はいつもの宣言をしてからカフェイン飲料を口にする。そして、缶を机の上に置いてから口を開くのだった。


「とりあえずゲームを始めてこーぜ。このままじゃ雑談配信になっちまう」

「それはそう。でも、ボクの可愛さを秋城クンに認めさせるためなら雑談配信でも……!」

「あ、じゃあ、ここら辺で。お疲れっス」

「ちょ、ちょっと待って秋城クン!アニマルの森をしようじゃないか!ね?」


 秋城の3Dモデルがニコニコ笑顔で退室をしようとすればそれを全力で止めるセイラ。今日もセイ虐が捗りますねえ。


「冗談冗談」


 俺はそう言いながらかわいいせいらの入室を許可する。すると、画面の端に現在入室中のフレンド一覧が表示されて。


「はい、これで秋城クンの島をボクも一緒に開拓できるようになったよ~。初期じゃ絶対持ってないアイテムで秋城クンの島を豪華にしていくよ」

「俺が、セイラにキャリーされる、だと……⁉」


 まさか俺がセイラにキャリーされる日が来るとは思わず俺は口を覆いながら驚愕の表情を浮かべる。いや、対戦ゲーじゃないから正確にはキャリーではないのだが。


「キャリーってなんだい?」


 おっと通じなかった。


「上手いやつが下手なやつ介護すること」

「うーん、このゲーム介護みたいな概念が出てくる殺伐なゲームじゃないからね?」


 珍しくセイラに正論を言われてしまった。そうだ、今日は無人島をゆるゆる開拓しに来たのだ。つまりは、上手い下手は特に関係ない。


「わがっだ」

「分かってないやつだねえ、それ!」


 適度にボケつつ。俺はゲームのスタートを押すのであった。



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