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第33章 囁き声に尊死ってアリですか?②



「こんうぃ~ん、みんな声届いてるかな?」


『届いてるよ~』

『問題なし』

『今日もうぃんたそは可愛い』

『おら、もう1人も声出せ』


「ほいよ、俺の声も問題ないか?」


『出たな秋城』

『問題なし』

『ちゃんと聞こえてるやで』

『問題なかったことにしてやろう』


「俺の方も問題なさそうだな。じゃあ、うぃんたそから挨拶行くか」

「らじゃっ。勝利を運ぶっ、鈴の音鳴らすVTuber‼鈴堂うぃんだよ~~‼みんな~こんうぃん~~~!」


 いつも通りうぃんたその元気な挨拶がヘッドフォンから届く。そして、うぃんたそから一拍開けて。


「こんしろ~うぃんたその枠での生放送、はっじまるよーゆっくりしていってね」


『こんうぃん~~~~!』

『婚姻~~~~!』

『こんしろ』

『こんうぃん~!』


 そんなこんなで生配信開始だ。


「さてさて、みんな昨日のバースデイライブ、もう見てくれたかな?」


『見た!凄い神ライブだった……!』

『アーカイブも何回も見直したぜ』

『毎年ほんとにすごい』

『流石うぃんたそのライブ』


「今日はそんなバースデイライブをまったり振り返るアフターお茶会、秋城さんを添えてだよ~。ということで、写真どーんっ」


 そんなうぃんたその掛け声とともに画面中央に表示される、なんかやたら高そうなティーカップに注がれたオレンジ色の紅茶、その横にお皿にピラミッド状に置かれたスコーンの写真。


「えっ、お茶会ってガチお茶会だったの⁉俺なんも用意してねー!」

「まあまあ、秋城さんにお茶会の用意してねって言って用意出てきた?」

「……出てこないな」


『知ってた』

『秋城は水でも飲んでてくれ』

『うぃんたそと飲むために高い紅茶開けたよ!』

『俺クッキー焼いた!』


「く、次のお茶会時にはせめて……煎餅と緑茶ぐらいは用意できるよう努力しよう」

「わー、和だねえ」

「ということでコメント欄で言われた通り、水取り出すわ……」


 そんなことを言いながら、俺はミニ冷蔵庫から水を取り出す。まあ、そもそも今日の枠自体が突発だったしね!仕方ないね!


「ちなみに勘のいい人は気づいているかもしれないけど、昨日のライブの振り返りはみんなから募集したわたあめを見ながら行うよ~!突発募集だったのにみんないっぱい感想をくれてありがとね」


 お、どうやらそれなり以上にわたあめが集まったようだ。流石うぃんたそ。


「じゃあ、ゆったりと振り返っていこうかな?あ、ちなみにこのわたあめ企画は秋城さん発案なんだよ~!秋城さんありがとね」

「いやいや、どうせなら俺以外のライブの感想とかも見たいしな。他の信者がどう思っているか、どう解釈したかみたいなの見てるのを俺が好きなだけ」


『さては秋城、見た映画の感想検索するタイプだな?』

『ゆったー順繰り見てそう』

『秋城、ほれ、ブクマ欄晒してみ?』

『いいねが見れないのをこれほど悔やんだことはない』


「言っても、俺も検索で出てきたのをブクマしてるだけだから信者の方々と情報量は変わらないと思うぞ」


 別に有名だからって検索欄が忖度してくれるわけでもないしな。


「それを秋城さんがいいねしてるっていうのが大事なんだよ~秋城さん今度うぃんたそにいいね欄見せて~?」

「……それは遠慮させてください……普通に恥ずかしいです……あと男の子のプライバシーがですね……」


『男の子のプライバシー』

『男の子のプライバシーはね……』

『珍しくうぃんたそを拒否ってるw』

『明日は隕石かwwww』


「秋城さんにうぃんたそのおねだりが通じないッ……これは余程だね!」


 余程なんですよ。ほんと。


「さてさて、オープニングトークはこれぐらいにして。じゃあ、早速わたあめの方と絡めて振り返り雑談していこうかな~?じゃあ、一枚目!」


【うぃんたそこんうぃん!初わたあめです!

私は信者1年未満の新参信者なのですが、うぃんたそのライブって毎年こんな豪華なんですか……⁉

うぃんたそ以外の方々の衣装も凝っていて……いや、もちろん一番かわいいのはうぃんたそなんですが!


大好きです!いつも応援しています!


PS:秋うぃんいつもてえてえしてます♡】


 若い。文体が圧倒的に若い。そんな若さに若干の眩しさを覚えながら、俺が口を開こうとすれば先に読み終えたであろううぃんたその声が届いた。


「わー!新参信者さんだって!ということは昨日のがもしかして初ライブだったのかな?」

「だろうな。毎年こんな豪華なんですか?って言ってるし」


『新規だー‼囲め囲め!』

『うぃんたそのライブは毎年分アーカイブが残っているぞ!』

『しかも無料だ!』

『時間があるときに見てくれよな!』


 信者が新参者を発見して囲み始める。超分かる、その気持ち。


「日々、新しい人がうぃんたそを見てくれているって嬉しいな。えへへ……ちなみにうぃんたそ以外のメンバーの衣装はうぃんたその我儘でポケットマネーを使って何年に1回かは新規衣装にしてもらってるんだよ~」

「……すげえ、えげつない金額かかってることは予想着いたわ」


『まあ、ライブそのものをポケットマネーするVTuberもおるし』

『うぃんたそのこだわりを詰め込んだ衣装ってコト……⁉』

『え、@ふぉーむからの支給衣装じゃないの⁉』

『うぃんたそからメンバーへの贈り物やんけ……』


「みんなの初期衣装もすっごく可愛いんだけど、やっぱりライブっていう特別な場だから、うぃんたそもみんなも一体感を持ってやりたいなあって言うのを思っててね。だから、かなり無理を通してもらって衣装お仕立てしてもらったんだ!あ、もちろん、その後衣装はみんなも使えるように贈ってるよ!」


 うぃんたそのライブへのこだわり。1人で作るものではなく、みんなで作るものという意識が伝わってきて、俺はそれだけで鼻奥をツーン、とさせていた。


「俺はそのうぃんたその言葉だけで正直感涙して泣きそうなんだが。……でも、うぃんたそ流石というか」

「ほえ、なにが?」

「いや、過去うぃんたそのライブで使われた衣装ってほかの@ふぉーむメンバーのライブでも使われてたりするじゃん?うぃんたそのポケットマネーで仕立てたのにうぃんたそとのライブ以外の場所でも使わせてくれるって懐が深いなあ……って俺は思うんですヨ」


『分かる』

『うぃんたそのプロ意識だよな』

『だから俺はうぃんたそが好き』 

『秋城、ナイス解説』


 俺は画面には反映されないが、親指をサムズアップして信者のコメントにうんうん、と頷く。


「うぃんたその懐が深いって言われると照れるね⁉でもーこれはうぃんたその我儘かなあ。結構、使ってくれると嬉しいですーっみたいに押し付けちゃってる節あるし……」


 にへら、と苦笑するうぃんたそ。謙虚、本当に謙虚。俺は更に鼻の奥をツーンとさせながら口を開く。


「でも、みんなが使ってくれてる、それが答えだろ?みんなうぃんたその懐の深さに救われてるって」

「だといいな~。毎回、ライブ終わって衣装データ送るときに押し付けてないかなあ、って不安になるんだよね」


『大丈夫だって』

『ありがたく使ってくれてるよ』

『ていうか、うぃんたそに感謝する切り抜きなかったっけ?』

『あったあった』


「ほら、大丈夫だって。うぃんたそ」

「だね。あまり、心配性してても@ふぉーむのみんなを信用してないみたいになっちゃうし……!じゃあ、そんなこんなでわたあめ2枚目~!」


 うぃんたそが1枚目のわたあめを剥がして、2枚目のわたあめを貼りつける。



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