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第112話 答えを出したいと思った


「恋って難儀なものよねぇ」



 ギルドに戻ってきたフランはメルーナのはぁと吐かれた息と共に出された言葉に頷いた。


 ちゃんと伝えられていなかったゴロウも悪いのだが、聞かなかったキャロメにも問題は少しある。


 不安だけれど、聞く勇気が出なくてという行動も恋ゆえのことだ。束縛しているように感じられないだろうか。


 嫌われてしまうのではないかといった恐怖や心配。これらは相手を愛しているからできることだった。



「わたくしにあのような恋は無理だわ」


「メルーナちゃんははっきり聞きそうですもんね」


「聞くわね。この方はどなた? って」



 たったその一言で済むならばそのほうが楽でいい。メルーナの考えに彼女はそこまで悩まないタイプなのだろうなとフランは思う。


 フランは自分ならどうかなと考えて、聞いてみるかなと答えが出た。昔の自分ならネガティブ思考でうじうじしていたかもしれないが、今はそうではない。



「ハンター様だってそうでしょう?」


「聞くだろうな」



 当然のようにフランの隣の席を陣取っているアルタイルは二人の話を聞いて答える。キャロメの心境を理解はできるが、様子を見てもはっきりとしないのであれば、相手に聞くしかないのだからと。


 その通りだなとフランは同意する。アルタイルの答えが予想通りだったようで、メルーナはでしょうねと呟いて紅茶を飲んだ。



「恋愛とは関係なく、パートナーが知らない相手と一緒にいれば、誰か問うだろう」


「それはそうよねぇ。わたくしもパーティメンバーが知らない方と一緒だったら聞いてるわ」


「でも、二人みたいに勇気がでないっていう人もいると思いますよ」



 キャロメさんがそうでしたし。フランの言葉に二人はそれはそうかといったふうに顔を見合わせた。


 自分と同じような人もいれば、そうではない人もいるのだと。



「フランの場合、気を付けていないと後が怖そうですけれど」


「後からとは……アルタイルさんか!」


「うん、だいぶ鈍感が抜けてきたようね。フランに何かあれば飛んでくるのでしょう?」



 メルーナの問いにアルタイルは「そうだな」と頷きながらも、少し悩ましげな表情をしていた。その様子にフランは首を傾げ、メルーナは不思議そうにしている。


 いつもならばいろいろと突っ込みたくなるようなことを話すというのに。何かあったのだろうかとフランが聞いてみれば、アルタイルは「キャロメと似たような感情がある」と答えた。


 言葉の意味がよく分からずフランがなんだろうかとアルタイルに話を促す。彼はどう言葉にするかと迷いながらも話してくれた。



「彼女が束縛しているように感じないだろうかといった不安を俺も抱いたのだ」


「あ、それは理解していたのですわね」


「やはり、傍から見ればそう感じてしまうのか」



 メルーナの言葉にアルタイルはふむと考えるように顎に手を当てる。フランは彼の言葉にどの辺りが束縛だろうかと今までの出来事を思い出す。


 良くしてもらっていた記憶ばかりなのだが、確かにフランは手放さいや、誰かが自分より一番にされたら暴れると言っていた辺りは束縛のように見えるかもしれないとフランも思った。



「ただ、手放すつもりがないのも、誰かが一番になった時に暴れるのも嘘の感情ではない」


「アルタイルさん、嘘はつかないですもんね」


「つく必要がないからな。だが、それがフランの負担になったり、束縛されていると嫌な想いをさせてしまっているのではないか。そう考えていた」



 好きであるのは確かだが、相手に負担を強いたいわけではない。自分の一方的な感情で困らせてしまうのはよくないだろう。


 アルタイルは自身の行動が少々、行き過ぎているのではないかと自覚したようだ。


 そういえば、何か考えているような節があったとフランは最近のアルタイルの行動に納得がいった。このことを悩んでいたのだろうと。



「そうねぇ。わたくしだったら、嫌ですけど。フランがどう抱いたかによるのではないかしら?」


「私ですか? うーん、嫌って感じはしてないんですよね」



 こうもはっきりと想われたことも、愛されたこともないフランにとってアルタイルという存在は大きいものだった。


 どう反応すればいいのかも分からなったし、そもそもそういった感情を向けられるとも思っていなかったからだ。


 気づいてからやっと自分の鈍感さを自覚して、これでは駄目だろうと想いに向き合おうとしている。とはいえ、初めてのことなので自分の感情を整理できていないのは事実だ。


 けれど、別に嫌だと、束縛されていると感じたこともない。そう素直に答えれば、メルーナは「なるほどねぇ」と小さく呟いた。



「フランが嫌じゃないのならば、わたくしは良いとは思いますけれど。まぁ、暴れられたら困るのでそれは避けてほしいわね」



 ハンターが暴れたなんて誰が止められるのか。メルーナの言葉にフランはひぇっと鳴く。それは怖い光景だろうなと思って。



「まぁ、その辺りはカルロ様とか受付嬢さんたちがどうにかしてくれそうではあるのだけれど。ハンター様はフランの事をよく考えて行動してくださいね?」



 わたくしは他人の事を言えた義理ではないけれど、好きな相手に迷惑をかけるのはよくないでしょうから。メルーナのアドバイスにアルタイルはそうだなと頷いた。


 メルーナも自分がやってしまった行いというのを今も反省しているようだ。フランはもう気にしてないのだが、彼女は自分の行いを忘れないように覚えているのだろう。



「フランもちゃんと考えなさいね?」


「わかりました!」



 メルーナに貴女もよと指を指されてフランは返事を返す。確かに自分もそうだよなと。アルタイルは別に急いでいないとは言うけれど、待たせ続けるのは失礼だろうとフランでも思うことだ。


(ちゃんと、考えなきゃ)


 フランは自分の中にある感情を整理しようと決めた。答えを出したいと思ったから。



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