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第64話 姉妹

 首都ダルクに到着し、そこからホワイトパレスを案内され、教皇であるミカエルに謁見し、色々な事情を聞けると思っていたが、今アル達が居るのはホワイトパレス内にある客室である。

 なぜ客室に居るかというと、アルを見たミカエルが暴走し、それを宥める為にジブリールがゲンコツをし、その度に二人の言い合いになった挙句、子供みたいに駄々をこねるミカエルを見て大司教であるシドが白目をむいて倒れてしまった。なので、一旦落ち着かせるために時間をおこうとなり、アル達は客室で待機することになった。


「もう外が暗くなってきたな。ミカエルはいつまで待たせるつもりなんだろう」


 アルがそう独り言を言うと、ジブリールがそれに反応する。


「シドが状況を飲み込めるまででしょう。ミカは今まで相当な猫を被っていた様ですから」

「猫ねぇ。ていうかジルはミカエルのことミカって呼ぶんだな」

「あっ! すみません、昔の癖で」

「いや、俺達に気にする必要は無い。1000年以上の知り合いなんだしな」

「そ、そうですね~……」


 何故かジブリールが言い淀み、目も泳いでいる。これはまだ何か隠していると感じたアルが追及する。


「なぁジル。俺達も人間にしては長い付き合いになったよな」

「いきなりどうしたんですか?」

「付き合いが長いとお互いの事が色々分かってくる」

「まぁそうですね」


 自分達の関係をジャブに使い、今度はストレートを放つ。


「ジル、ミカエルについて何か隠してるだろ?」

「っ!?」


 アルの質問にジブリールが明らかに動揺する。


「ななな、何のことでしょうか?」

「俺達の知らない何かを隠してるんだろ?」

「そ、そそそ、そんなことはあ、ありませんよ!」


 どうしてそれで誤魔化せると思うのか不思議なくらい動揺しているジブリールを見て、クレアもつい口を出してしまう。


「ジブリール様、そんなに動揺していては何か隠していると言っている様なものですよ」

「ク、クレアまで何を言っているのですか! か、隠し事なんてありませんよよよ!」

「はぁ~、お忘れのようですがワタシはウリエル様と同化しています。勿論記憶も。この意味が分かりますよね?」

「はぅあっ!?」


 クレアのとどめの一言で今まで震えていた身体が一瞬にして固まる。そしてぎこちない動きでクレアの方を見ると、クレアが更に追い打ちをかける。


「ジブリール様から話さないのであれば、ワタシから話しますよ?」

「そ、それはダメです! ……わ、分かりました。話します」


 観念したのか肩を落としたジブリールがアルに向き直り、硬い口を開いた。


「最初に言っておきたいのですが、私は決してよこしまな気持ちで話さなかった訳ではありません」

「ああ、分かってる。何か事情があったんだろう。だから隠していた事について怒ったりしない」

「ありがとうございます。……じ、じつは……」

「っごく……」


 ジブリールから発せられる緊張感にアルも飲まれ、固唾をのんで言葉を待つ。

 そしてジブリールから語られた秘密がアルの言葉を撤回させる。


「私とミカエル──いえ、私達四大天使は姉妹なのです!」

「はぁああああ? なんだってぇ!!」

「お、怒らないと言ったではありませんか!」

「別に怒ってる訳じゃない! ただ何でそんな重要な事を黙ってたんだと言ってるんだ!」

「ほら! 怒っているじゃありませんか!」

「だから怒ってないって言って──」


 バァンッ!


 二人の言い合いが過熱していく中、突然客室の扉が勢いよく開かれた。そしてそこに立っていたのはミカエルだった。


「話しは聞かせて貰いました! その話の続きは会議室で話しましょう。ジルもそれでいいですね?」

「そうですね、その方がいいでしょう。アルもそれで良いですか?」

「ああ、二人から──いや、クレアを含めた3人からキチンと聞きたいしな」

「なら、私について来てください」


 そう言ってミカエルを先頭に客室を後にした。

 会議室で詳しく話すと言い、会議室を目指しているはずなのだが、既に何回曲がり角を曲がったか分からない。曲がり角だけでなく二股に別れた通路もあった為、もう自力で客室には戻れないだろう。

 何故こんなにも入り組んでいるのか前を歩いているミカエルに尋ねる。


「どうしてホワイトパレスの中はこんなに入り組んでいるんだ?」

「簡単な話です。万が一敵が攻め込んできた時用に分かりづらくしているのです」

「敵? ダルク教に敵なんて居るのか?」

「居ますよ。ただ、今はまだ話せません」


 そう答えてミカエルは口をつぐんでしまった。

 それから何回かの曲がり角を曲がり、ようやくミカエルが足を止めた。

 会議室と言っていた部屋の扉をノックせずに開けると我が物顔でミカエルが中へ入っていく。それに続きアル達も中へ入ると大きな円卓があり、その上座らしき場所にミカエルが腰を下ろした。

 アルが何処に座るべきか悩んでいると、ミカエルが「私的な利用なので話しやすいよう隣に座ってください」と言ってきたので遠慮なくミカエルの右隣に座った。ジブリールとクレアはミカエルの左隣に順番に座った。

 並びはアル、ミカエル、ジブリール、クレアという順番になった。恐らくミカエル側が天使という事なのだろう。

 全員が席に着いたのを確認したミカエルが最初に口を開いた。


「先程は突然の無礼をお詫びします」

「いや、それは大丈夫だ。あのままだったら話が進まなかったと思う」

「寛大なお心遣い感謝致します」

「というか、もうミカエルの素を見てるんだから普通に喋ってくれ」

「では、お言葉に甘えさせていただきます」


 ミカエルはコホンとひとつ咳払いをしてから改めてアルに質問した。


「ジルからはどこまで聞きましたか?」

「四大天使が姉妹だってことしか聞いてないよ」

「えっ! それだけですか?」

「え? 他に何かあるのか?」

「そ、それは~……」


 視線を逸らすミカエルを見て、ジブリールとミカエルが姉妹だという事が良く分かった。しかし、ミカエルの反応からしてまだ隠し事があるのは確かだと判断し、ジブリールをひと睨みしてミカエルに向き直る。

 ジブリール達が姉妹だったことだけでも驚きの真実だったが、ミカエルからはどんな隠し事が飛び出してくるのかと身構えるアルだった。

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