ミカエルが何かを隠しているのは動揺している態度でわかる。ただ、それが四大天使が実は姉妹だったという事以外の秘密というのが問題だ。アルはてっきり先ほどジブリールから四大天使が姉妹という事実を聞かされ、その後にミカエルが話があると言って会議室まで連れてこられた。そしてミカエルから「どこまで聞いた?」と聞かれ、アルは四大天使が姉妹だという真実を聞かされたとこたえたところ、ミカエルの反応は「え? それだけ?」といった物ものだった。「他に何かあるのか?」と聞かれたミカエルはあからさまに動揺し、アルから視線を外した。
そんなミカエルにアルが重ねて質問する。
「何を隠してるんだ?」
「な、何もか、隠してなんかいませんよ……」
「なら何で視線を合わせない?」
「ち、
「ああ、よく分かってるよ。お前たち天使には魅了が通じないってな」
「うぅ……ジル~たすけてぇ~」
ミカエルはとうとうジブリールに助けを求めだした。
助けを求められたジブリールは「はぁ~」とため息を吐くと、ミカエルを見据えて冷徹に言い放つ。
「ミカが犯したミスなのですから、きちんと自分で説明してください」
「そんな……ジルまで私を見捨てるのね!」
「見捨てている訳ではありません。ただ、ミカの不注意でこうなったのですから、自分で尻ぬぐいをしなさいと言っているのです」
「うぅ……」
ジブリールから叱責され更に落ち込むミカエル。それだけ隠しておきたい事なのかと考えてしまう。
落ち込んでいるミカエルを見ていると、無理に今聞かなくてもいいかな? と思ってしまいそうになるアルだったが、ずっと沈黙していたクレアが口を開いた。
「ミカエル様、ワタシはウリエル様と同化しました。そして記憶も共有しています。なので、ミカエル様が喋りづらいのは理解できますが、この機会に全てを話した方が良いと思います。何故ワタシがアルさんと結婚しなければならないのか。そして、私達の子供が世界を救うのかを」
クレアの言葉をこの場に居る全員が真剣に聞いていた。
ジブリールは「そうですよ」とクレアに賛同している。そして、クレアの言葉に一番の興味を持ったのはアルだった。
クレアの言った通り、なぜクレアと結婚し、子供を作らなければならないのか。そして、その子供が世界を救うというのは本当なのか。
アルの旅の目的は母国の再建であり、皆が平等に暮らせる世界を作ることだ。その目的にクレアとの結婚や子供がなぜ必要になるのかが知りたかった。
なので、アルは先程よりも熱を込めてミカエルに言葉を掛ける。
「頼むミカエル! 教えてくれ! じゃなければ俺は納得して旅を続けられない!」
「……分かりました、お話ししましょう」
アルの必死な頼みとジブリールとクレアの説得により、ミカエルは覚悟を決め、話すことを決意した。
「その前に、アルファード様は四大天使のことをどの程度知っていますか?」
「どの程度と言われても、1000年前から存在している凄い天使としか知らないな」
「なるほど、それでは四大天使がなぜ存在しているかお話します」
「ああ、頼む」
ミカエルが姿勢を正し、アルを真っ直ぐ見据えて話し出した。
「まず、四大天使はその名称通り4人存在します。私ミカエルとこの場に居るガブリエルにウリエル。そしてラファエルの四人です。私達はそれぞれ火・水・土・風の四元素を司どっています。なので得意分野が
ミカエルの説明を聞いてアルは一つの結論に至った。
「それって、この世界はお前達四大天使が作ったということなのか?」
「その解釈で間違いはありません。もっと詳しく話すと、創造神ガイア様が世界の
「なんて……こった……」
アルはあまりのスケールの大きな話に面食らってしまう。遂に神の名前まで登場した。しかし、額を手で覆いながらミカエルの言葉を丁寧に咀嚼していく。すると、とある疑問を覚えた。
「秩序を作り出すって言ってたけど、その秩序というのは?」
「秩序とは調和と平和を保ちながら存在することを意味します。人が愛し合い子を成すのが当たり前のように。リンゴが木から落ちるのが当たり前のように。そういった当たり前にある秩序を作るのです」
「……なるほどな。だから世界を作るとも解釈できるのか」
「その通りです」
四大天使がそこまで凄い存在だとは思わなかった。創造神とい神が存在することにも驚きだが、今生きている世界を世界たらしめているのが四大天使が作り出す秩序だという。
話のスケールが大きすぎてアルの情報処理能力が追い付かない。
「えっと、ミカエル達四大天使が凄いというのは何となくだけど理解した。だけど、それと俺達の結婚や子供が世界を救うのとどう関係してるんだ?」
アルの疑問はもっともだ。そもそもミカエルが何を隠していたかはまだ何も話していない。ただただ四大天使が凄い存在だというのが分かっただけだ。
「……」
アルの質問にミカエルが意味深な
「────私達はこの世界の秩序を破壊します────」
その言葉はアルの心臓を止めるが如き破壊力を有していた────