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『悪魔に呼ばれて 3』

 四名はナイト・ウッシュの街へと戻っていた。

 寒空の夜だ。

 あれから、少しばかりの時間しか経過していない。


「なんだったんだよ? 一体」

 リシュアは小さく溜め息を付く。


「何かされなかったか? ローゼリア?」

 リシュアは心配そうな表情になる。


「いえ。何も、私でしたら、大丈夫ですわ…………」

 ある意味で、意外にも紳士的な対応だった。

 ぽつり、ぽつり、と、雪が降ってくる。

 今夜もまた、吹雪になりそうだ。


「さて、泊まって宿に戻りたいですわ。美味しいご飯も食べたいですし、夕食、まだですのよね…………」

「ああ、そうだよな。一緒に晩飯を食べよう」

「とにかく、ローゼリアさんが無事で良かったです」

 エシカもローゼリアの様子を見て、喜んでいた。


 ラベンダーは思慮深そうに考えていたが、何も答えなかった。

 おそらく、これから、何もなければ良いのだが、といった事でも考えているのだろう。

 悪魔の本拠地に向かったのだ、本来は無事では済まされないだろう。

 みな、ローゼリアの身に何も起こらない事を願った。



 ローゼリアにとって、仲間達とは不思議な感覚だった。

 リシュアにしろ、エシカにしろ、ラベンダーにしろ、みんな自分の事を思って助け出しに来てくれた。それがどうしようもなく堪らなく嬉しかった。

 仲間とはこういうものだな、と思う。

 人間よりも遥かに長生きである吸血鬼の目線からすると、旅の仲間というものは本当に不思議なものだった。

 悪魔の棲み処から帰ったローゼリアは、未だガクガクと震えながら、温かい紅茶を貰って恐怖に打ち震えていた。

 いくら吸血鬼と言えども、悪魔達の群れに勝つ事なんて出来ない。

 無事、帰ってこれたのは、ある意味で奇跡のようなものだった。

 仲間がいるというのは、本当に嬉しいものだった。

 こんなに自分の事を想ってくれる仲間がいるというのは………………。

 ……私は今、人生で一番、幸せな時期なのかもしれませんわね。

 ローゼリアはふと、そんな事を考える。


 兄の城で半ばひきこもり状態だった時には、余り感じなかった感覚だった。

 だからこそ、仲間をこれからも大切にしたいと思う。

 ローゼリアにとって、おそらく人生の一部になってきたのだろうから。



 極寒のせいで、身動きが取れず、ナイト・ウッシュの街にしばらくの間、留まる事になってしまった。本当はローゼリアが悪魔から眼を付けられているので、今すぐにでも街を出たい。

 だが、やはり寒さというものは、人の身動きを取れなくするものだった。


 どのみち、悪魔達が本気になれば、どこに行っても無駄だろう。

 そう踏んで、みなナイト・ウッシュに留まっていた。

<今回は無事、ローゼリアを取り戻せたが。俺達はいつか、悪魔達と何らかの決着を付けないといけないかもしれないな>

 ラベンダーは不穏な事を言う。

 だが、確かにそうだとは思う。

 リシュアは小さく溜め息を付いていた。

 自分達に、悪魔をどうこうする力は無い。

 一体、一体ならともかく、大勢から狙われたら、おしまいだろう。

 当のローゼリアの方はというと、もう気にしていないみたいだった。

「無事、帰してくれたみたいですから、別にいいじゃないですの」

 そう言って、飄々としている。

「本当に何もされなかったんだな?」

 リシュアの顔は心配そうに曇る。

「何もされていませんわ。ですから私なら大丈夫ですわ。これ以上、言うのなら怒りますわよ?」

 ローゼリアは少し不機嫌になった。

 リシュアはふうっ、と、小さく溜め息を付く。確かにもう終わった事だ。もうそれを気にしても仕方が無い。ある意味で言えば、なるようにしかならないのだ。


<次の街に行く準備を整えよう>

 ラベンダーはそう言った。

 此処から更に北に行けば、寒さが酷くなる一方だ。

 なら、少し西か東の方へと向かってみるか。


「次は空中都市スカイ・フォールに向かおうか」

 リシュアは地図を見ながら言った。

 みな、異存は無かった。


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