四名はナイト・ウッシュの街へと戻っていた。
寒空の夜だ。
あれから、少しばかりの時間しか経過していない。
「なんだったんだよ? 一体」
リシュアは小さく溜め息を付く。
「何かされなかったか? ローゼリア?」
リシュアは心配そうな表情になる。
「いえ。何も、私でしたら、大丈夫ですわ…………」
ある意味で、意外にも紳士的な対応だった。
ぽつり、ぽつり、と、雪が降ってくる。
今夜もまた、吹雪になりそうだ。
「さて、泊まって宿に戻りたいですわ。美味しいご飯も食べたいですし、夕食、まだですのよね…………」
「ああ、そうだよな。一緒に晩飯を食べよう」
「とにかく、ローゼリアさんが無事で良かったです」
エシカもローゼリアの様子を見て、喜んでいた。
ラベンダーは思慮深そうに考えていたが、何も答えなかった。
おそらく、これから、何もなければ良いのだが、といった事でも考えているのだろう。
悪魔の本拠地に向かったのだ、本来は無事では済まされないだろう。
みな、ローゼリアの身に何も起こらない事を願った。
†
ローゼリアにとって、仲間達とは不思議な感覚だった。
リシュアにしろ、エシカにしろ、ラベンダーにしろ、みんな自分の事を思って助け出しに来てくれた。それがどうしようもなく堪らなく嬉しかった。
仲間とはこういうものだな、と思う。
人間よりも遥かに長生きである吸血鬼の目線からすると、旅の仲間というものは本当に不思議なものだった。
悪魔の棲み処から帰ったローゼリアは、未だガクガクと震えながら、温かい紅茶を貰って恐怖に打ち震えていた。
いくら吸血鬼と言えども、悪魔達の群れに勝つ事なんて出来ない。
無事、帰ってこれたのは、ある意味で奇跡のようなものだった。
仲間がいるというのは、本当に嬉しいものだった。
こんなに自分の事を想ってくれる仲間がいるというのは………………。
……私は今、人生で一番、幸せな時期なのかもしれませんわね。
ローゼリアはふと、そんな事を考える。
兄の城で半ばひきこもり状態だった時には、余り感じなかった感覚だった。
だからこそ、仲間をこれからも大切にしたいと思う。
ローゼリアにとって、おそらく人生の一部になってきたのだろうから。
†
極寒のせいで、身動きが取れず、ナイト・ウッシュの街にしばらくの間、留まる事になってしまった。本当はローゼリアが悪魔から眼を付けられているので、今すぐにでも街を出たい。
だが、やはり寒さというものは、人の身動きを取れなくするものだった。
どのみち、悪魔達が本気になれば、どこに行っても無駄だろう。
そう踏んで、みなナイト・ウッシュに留まっていた。
<今回は無事、ローゼリアを取り戻せたが。俺達はいつか、悪魔達と何らかの決着を付けないといけないかもしれないな>
ラベンダーは不穏な事を言う。
だが、確かにそうだとは思う。
リシュアは小さく溜め息を付いていた。
自分達に、悪魔をどうこうする力は無い。
一体、一体ならともかく、大勢から狙われたら、おしまいだろう。
当のローゼリアの方はというと、もう気にしていないみたいだった。
「無事、帰してくれたみたいですから、別にいいじゃないですの」
そう言って、飄々としている。
「本当に何もされなかったんだな?」
リシュアの顔は心配そうに曇る。
「何もされていませんわ。ですから私なら大丈夫ですわ。これ以上、言うのなら怒りますわよ?」
ローゼリアは少し不機嫌になった。
リシュアはふうっ、と、小さく溜め息を付く。確かにもう終わった事だ。もうそれを気にしても仕方が無い。ある意味で言えば、なるようにしかならないのだ。
<次の街に行く準備を整えよう>
ラベンダーはそう言った。
此処から更に北に行けば、寒さが酷くなる一方だ。
なら、少し西か東の方へと向かってみるか。
「次は空中都市スカイ・フォールに向かおうか」
リシュアは地図を見ながら言った。
みな、異存は無かった。