ローゼリアは残忍で残酷な処がある。
多分、それはどうしても一人の人間として分かり合えない部分なのだろう。リシュアは正直な話、そう思う。
「やはり、ローゼリアさんは、その……何というか、人とは少し違う……吸血鬼の残酷な血を引いていらっしゃるのですね…………」
エシカは少しだけ震えていた。
「人間だって、残酷な部分はあるさ。そう、誰にだってある。大なり小なりさ。それに吸血鬼全員がローゼリアのように残酷な側面があるのかどうかは分からない。ローゼリアいわく、吸血鬼それぞれによって違うらしいんだけどな…………」
今、エルベルクが貸してくれた部屋の一室の中では、鱗がべりべりっ、と剥がされていく音が響いていた。阿鼻叫喚の悲鳴が部屋の中から聞こえてくる。他にも少しずつ足の骨を砕かれていった者もいるらしい。もし同胞の事を自白すれば、裏切り者として処分されるかもしれない。だが、それでもなお、生き物である以上、苦痛には抗えない……。ローゼリアはその事を存分に理解しているみたいだった。
そして、ローゼリアは怒りを向ける対象に対しては何処までも残酷になれるのだと、リシュアもエシカも知っていた。
「ふふふっ。結構、色々と有益な情報を吐いてくださいましたわ。ブラッド・サッカーの首領は後二人程いるのですね。一人は街に、もう一人は貴族階級の中に」
ローゼリアは楽しそうな顔をして扉から出てきた。
彼女の全身は真っ赤に染まっていた。
「ふふふっ、本当に身体に聞くのが一番、有効な事ですのね。他にも色々と喋ってくださいましたわ。あの海の中には、まだ何名か首領の後継者として何名かのブラッド・サッカーがいるのだと。私は今から彼らを始末する事が心が躍って仕方がありませんわ」
おそらくローゼリアは闇討ちでもして殺して回ろうと考えている。
リシュアは少し呆れ顔になる。
残忍性。
それも確かなローゼリアの一面なのだ。
†
ローゼリアとラベンダーの二人で、海岸のビーチに残ったブラッド・サッカーを駆逐する事になった。リシュアとエシカの二人は多少の怪我を負っていたので、宿で休ませて貰っていた。
「あの二人、仲良いよなあ」
リシュアはベッドに横になりながら窓を開けて、海岸の方を見ていた。
先日の戦いで、リシュアは全身の所々を負傷していた。エシカが回復魔法で傷を多少、癒やしたが、エシカ自身疲労していた為に、上手い具合にリシュアの身体に出来た傷を塞ぐ事が出来なかった。
「とにかく、俺達はあの二人が後方支援を願い出るまで待機だな」
「リシュア……。信じてあげてください。ちゃんと休んでください」
エシカは、ふうっ、と溜め息を付く。
リシュアは戦いの時に頻繁に無茶をする。
エシカは彼のそんな姿を見て、いつもハラハラしていた。もう少し自分を労わってもいいのではないかと思ってしまう。
夜景は星屑を照らし出していた。
リシュアは空の星々に見惚れていた。
月と星が照らす中、血生臭い戦いが昨日に引き続き行われている。ビーチは紅く血に染まっているのだろう。そう言えば改めて考えると自分達は旅の仲間として見ると、強いパーティーなのかもしれない。これまで様々な困難を乗り越えてきたような気がする。この前は悪魔達からローゼリアを取り戻す事なども行った。
「…………。ローゼリアはこの街に残るんだよな…………。問題を解決する為に…………」
「そうですね。……しばしの間、寂しくなりますね…………」
二人はしんみりと笑った。
†