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『ドワーフ達の村 1』

 四名は、地底街アンダー・ワールドを出る為の地下鉄に乗っていた。


 次の目的地は『ドワーフの村』に訪れようと思った。

 ドワーフ達は探鉱で生活している者達が多い。

 赤ら顔で、人間よりも低身長の人間に似た種族。酒と肉を嗜む者が多い。

 鍛冶や石工の職に就いている者が多く、建築業に携わっている者も多い。地底街アンダー・ワールドは、ドワーフ達の絶え間ない努力によって作られたものだ。


 そんなドワーフ達の村へと、四名は向かっていた。

 ロンレーヌは幽霊の姿のまま、自らが入る人形を抱きかかえていた。

 こうして見ると、長い金髪を伸ばした清楚な服装のロンレーヌは美しい。

 幽霊が見える者以外は、ロンレーヌの姿を見る事は出来ないみたいなので、列車に乗る際は三人分の乗車券で充分だった。


「私が見えているのなら、四人分の乗車券で良かったのに」

 どうやら、車両の乗務員は誰一人としてロンレーヌの姿が見えないみたいだった。ちなみにロンレーヌが手にした人形を知覚する事も出来ないみたいだ。


「やはり、幽霊って不思議な気分だね」

 ロンレーヌは我ながら自分の存在を胡乱に思っているみたいだった。


「少し前は、吸血鬼の少女と一緒に旅していたぞ。少女、と言っても、少女に見えるだけで、実際には数百年くらい生きているのかもしれないけどな」

 リシュアはくすりと笑う。


 それにしても、リシュアが共に旅しているメンバーは不可思議な素性をしている者ばかりだった。魔女と呼ばれ、数十年も森の中に閉じ込められていたエシカに、青い小さなドラゴンのラベンダー。そして、スカイ・フォールまで一緒に旅をしていた桃色の髪をした吸血鬼の女であるローゼリア。街の為に生贄に捧げられた幽霊の少女であるロンレーヌ。それから占い師のティアナとも旅をしていた。


 旅をしていて想い出すのは、これまでに旅で出会った人々だった。

 彼らの顔を想い出しては消えていく。

 宿に付く度に、あの街はこうだった。あの国は、あの村は、馬車に乗っている途中でこんな事があった、などなど、様々な話になった。


 特に馬車や列車の中にいると、会話が単調になってしまう。その時に、過去の旅の想い出に話題を咲かせている。


「もっと私、早く、みんなと仲間になりたかったなあ」

 ロンレーヌは、そんな本音を漏らす。


「これから、沢山、想い出を作っていきましょうね」

 エシカはロンレーヌの手を握りしめる。


 他の乗客から見ると、エシカ達が何も無い空間に向かって話しかけているように映るのだろうか? よく分からない。


 ロンレーヌは、キテオンに来る前のみんなの旅の話を聞くのが大好きだった。ヒュペリオンの神話。アンダイイングでの悪魔宗教。同じような教会の街での悪魔を信仰していたシスターの話。ローゼリアという少女と共に、ブラッド・サッカーという吸血種族達と戦った事。全部、全部がみなの想い出として記憶している。


 ロンレーヌは、本当に楽しそうだった。

 そして、いつかローゼリアやティアナと会ってみたいと言った。



 やがて、列車はドワーフの街へと辿り着いた。


 採掘所が目立ち、石炭を運んでいるドワーフや石を切っているドワーフなどを見かけた。みんな仕事熱心そうだった。夜になれば、彼らは大酒を飲むのだと聞く。とても陽気な民族だな、と、リシュアは呟く。


「ドワーフ達の提供する旅の宿とは、どんな場所なんでしょうか?」

 エシカはいつもの通り、眼をきらきらとさせていた。

 そう、この街はどんな街なのだろうか。

 リシュアも、それが気になっている。


 やがて、四名は列車を降りた。


 結局、何名かの乗客には、ロンレーヌが見えていたみたいで、ロンレーヌを怖がっている乗客もいた。乗務員はそれに気付いているみたいだが、幽霊から乗車賃を取るわけにはいかなかったのか、見て見ぬふりをしているみたいだった。


 そして、四名は宿を目指した。

 宿に泊まって落ち着いたら、何か依頼を引き受けて、旅の路銀を稼ごうという話になった。


 しかし、此処で出来るとすれば、肉体労働とかなのだろうか。

 リシュア達が倒せる程度の怪物退治などなら、喜んで引き受けてもいい。

 ただ。モグラ人達との件もある。

 関わるなら、慎重に関わるべきだろうという話になった。


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