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『ドワーフ達の村 3』

 数時間後、ゴールデン・リザードの討伐に、リシュアとラベンダーの二人はすぐに向かっていた。リシュアは短刀以外にも、予備の武器をドワーフの人々から借りる事が出来た。


「とにかく、わしらで歯が立たない。旅の人、くれぐれも無茶をするんじゃないぞ」

 ドワーフの男は、そう言ってリシュアの心配をする。

「大丈夫。何とかなると思っているよ」

 リシュアは、そう返す。


 山を登っていくうちに、危険な旅路へとなった。

 鉱山は熱を帯びており、危険そうな地帯も数多くあった。洞窟の中を歩く事になった。熱気が凄かった。火山地帯に近いのだとも聞いた。


 ラベンダーは平気な表情をしていた。


<しかし、洞窟の中にいると、リシュアを乗せてあがれない、というのもあるな。何とも面倒臭い事だ>

 そういう風に愚痴を吐いていた。


 やがて、二人は洞窟の中で、コウモリの姿をした怪物に襲われたり、干からびた樹木の形をしたモンスターなどに襲われる事になった。リシュアは慣れた手付きで、短刀を取り出して、光の刃を振るっていく。怪物達を簡単に倒す事は出来た。


 そして、更に時間が経過していった。

 いよいよ、洞窟の最深部だった。


 此処では、数多くの探鉱の資源が取れるのだと聞く。

 だが、居座られたゴールデン・リザードのせいで、どうにもドワーフ達は資源の採取を行う事が出来ない。本当に困ったといった感じだった。


 やがて、例のゴールデン・リザードが姿を現す。

 聞かされていた事よりも、遥かにその怪物は巨躯だった。

 全長が十メートル以上はある。


 とても強敵である事が容易に理解出来た。


 ただ、ここで引くわけにはいかない。


 リシュアは短刀を向ける。

 短刀の先から、光が伸び、神話のヒドラのように光が幾つもの形に分岐していった。

 ラベンダーも、電撃を放って、この巨躯の怪物へと放つ。


 戦いは、長い消耗戦だった。

 後から、ドワーフの戦士達とも合流して、この怪物と戦う事になった。

 ドワーフの戦士達は、手に手に剣や斧、ハンマーなどを手にして、怪物の身体へと叩き付けていた。


 リシュアとラベンダーの二人は、相当、苦戦しながら、これは報酬はみなで分ける事になるな、と、小さく溜め息を付いた。


 腹話術師のフリをして、芸みたいなものを行っていたものの、あまり芸らしき芸は出来なかった。それはやはり、エシカは手慣れておらず、ロンレーヌもどんな芸をすればいいか思い付かなかったからだ。


 なので、ただ人形が喋るだけの事を行って、結局は芸らしい芸を行う事が出来なかった。

 何故か、同情を誘ったのか、夕食一回分の投げ銭を得られる事は出来た。


「なんだか、悲しくなりますね………………」

 エシカは、うんうんと嘆いていた。


「でも、最後にお金を渡してくれたドワーフのお爺さん、とても親切だったね」

 再び、幽霊姿に戻ったロンレーヌは嬉しそうな顔をしていた。


 エシカはローゼリアが、ナイフ投げの曲芸で道行く人々を楽しませていた事を想い出す。彼女のナイフさばきは本当に素晴らしかった。やはり路上で何かをやるという事で、そう簡単にお金に結び付ける事は難しい。とぼとぼと、二人は、泊まっている宿へと戻る事にした。……エリュシオンから貰った路銀も、節約しなければ、すぐに底を付く。そう考えると、旅に必要なお金は幾らあっても足りないな、と思った。


 深夜に、リシュアとラベンダーが汗だくになりながら宿屋に帰ってきた。


 なんでも。探鉱に巣食う怪物、ゴールデン・リザードを倒せた事は良いものの、結局、百名掛かりでも大規模な討伐になってしまったそうだ。それ程までに、その金色のオオトカゲは強かったらしい。結局、怪物を倒す事によって得られた労働の対価は、想定の百分の一くらいになった。


「なんだか。やっぱり、俺達二人くらいじゃ、まだまだ勝てないモンスターもいるんだなって思い知らされたよ」


 そう言って、リシュアは嘆く。


<当然だろう。俺達はそれ程、強い冒険者のパーティーではないのだからな>

 ラベンダーは、そう自虐的に言う。

 考えてみれば、今まで、散々、危険な眼に合いながら、よく生き残ってこられたものだと思う。


「リシュア、少し汗臭いよ。お風呂入ってきて」

 ロンレーヌはそう言って笑う。


 なんだか、四名共、上手くお金稼ぎが出来なかった事に対して、みなで笑い合った。

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