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第4話

 夕食後、和也がリビングのソファでくつろいでいると、傍らで美貴がごろごろと懐いてくる。

 しばらく前、玄関先でけんもほろろにあしらわれた頃と比べると、彼女の態度には天と地の開きがある。今生の別れと思っていたのに再び会うことが出来て、許しも得て、こうして想いを交わすことが出来るようになった。

 これを神の奇跡と言わずして何と呼ぶべきなのか。まあ、神がちょっとナニなのはアレだが。


「和也ぁ……」


 美貴が甘ったるい猫なで声で自分の名前を呼ぶ。

 普段は高慢ちきで我が儘放題のお嬢様だが、和也との睦言の最中は最大限に甘えるツンデレぶりだ。和也だけが知っている、彼女の別の顔。


 これは夢なのか? 和也は脳がとろけそうな心地になった。


 幾度も妄想してオカズにしていた美貴が、リアルで自分の腕に抱きついて豊満な胸を押しつけたり、己の胸に顔を押しつけて猫のように、ゴロゴロと甘えている。

 否が応でも心拍数は上がり、下腹部の血流が増加してしまう。


「んー……。よしよし」

「むうう~~~」


(あれ? 怒ってる。対応を間違えたか)


「ごめん……」

「もー……わかってるくせにぃ」


(分かってるよ。でも、怖いんだよ。――抱くのは)


「ごめん……」

「ごめんばっかり」

「ごめ――」

「もう……」


 和也は胸に張り付いた美貴を一旦剥がすと、自分の膝の上に転がして仰向けにした。見上げる美貴の目が期待に満ちている。

 和也は愛おしそうに彼女の頬を二三度なでると、首の後ろに腕を差し込んで彼女の体を起こした。美貴の腕が和也の首に絡んでくる。


 一瞬、罪悪感が和也の脳裏を過ぎる。つい先日、彼女を怖がらせ、泣かせてしまったばかりだったから。


 (これ以上間を置いたら微妙な空気になっちゃいそうだけど、始めたら始めたで……止めらる自信がねえな。でも避け続けるなんて――不可能だ)


 和也は意を決して口づけをした。やわらかさと弾力で応える艶やかな美貴の唇に、和也のハンパな罪悪感など無力だった。

 くたりと抵抗感なく己へ体を預ける美貴に、和也は許されている気がして、でもそれはそれで別の罪悪感が発生する。


「んッ……む」


 和也は夢中で貪り始めた。この間とは違い、今の美貴は無抵抗だ。

 空いている手で美貴の体を撫でつけると、小さくのけぞったり、太股をもじもじさせたり、身をよじったりしている。彼女の可愛いあえぎ声で余計に興奮してしまう。


(ヤバイ、美貴かわいすぎる。もうガマンできねえ)


 和也は美貴をいったんソファに寝かせると、今度は抱き上げて彼女に尋ねた。


「部屋、どっち? ……ここ、狭いし」

「廊下出て隣」

「わかった」


 和也は美貴を横抱きにしてリビングを出ると、彼女の部屋に直行した。


 ――ここが美貴の部屋か……。


 彼女の自室に入るのは、四年ぶりだった。

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