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第103話 二人で買い出しに3

「わ、見て見てゆーし! 有美ちゃんと渡辺くんいるよ〜!!」


「え? 中田さんと寛司が? あ、ほんとだ……」


 ホームセンターの入り口から入ってすぐのところにあるおしゃれなカフェを覗くと、中には二人が座っている。


 寛司はコーヒーを、中田さんはクリームの乗った甘そうな飲み物を。二人で談笑しながら口にしている。


「えへへ、有美ちゃんってやっぱり渡辺くんのこと大好きだよね〜。ほら、見てよあの顔」


「……だな」


 それは、俺達がいる前では決して表に出すことのない表情。きっと寛司と二人きりの時にしか見えないのであろう、心の底から穏やかな笑顔だ。


 幸せそうで、楽しそうで。カフェという周りにも人がいる空間の中、二人きりの世界を築いている。きっと見られていると知ったらさぞかし動揺するんだろうな。


「有美ちゃん、可愛いっ。女の子の顔だぁ〜」


「おい由那、そろそろ行くぞ。もし気づかれでもしたら可哀想だろ」


「え〜? もうちょっと乙女な有美ちゃん見てたいよぉ〜!! ほら見てあれ、ちょうど今渡辺くんにクリームの入ったスプーンであ〜んしてて────」


「行くぞ〜」


「うえぇっ!? ぶぅ、ゆーしのケチぃ!!」


 それにしてもまさか、あの二人も同じホームセンターに来ていたとは。


 確か二人には塗料類を頼んだと聞いていたが、いくら俺達もあちら二人もこのホームセンターで全て揃うものを頼まれたとはいえ、鉢合わせしようとは。流石に想像していなかった。


「……いいもん。私もゆーしと甘々デートするもんっ……」


「オイ、何拗ねてるんだ?」


「拗ねてないもぉ〜ん。ほら、手繋ご? 早く買う物買って、ゆーしとデートするんだから」


「いやデート、って。早く戻らないといけないんじゃ……」


 やけに由那がここに長居する前提で話を進めていたので、反論しようとしたのだが。そこでズボンのポケットに入れていたスマホが一回、振動する。


 誰からか連絡でも来たのだろうか、と画面を見ると、そこにはLIME通知が。


『神沢君〜、一応今日の作業終わったから買い出し終わったら買ってきてものと領収書、机の上に置いといてだってさ〜。もうみんな解散してるからそっちも終わり次第自主解散でよろぴ☆』


「よろぴ、て」


「あ〜っ、ゆーしが女の子とLIMEしてる!?」


「ご、誤解だって。ほら見ろ、これ」


「んむぅ〜〜?」


 画面を弄らずそのままメッセージの文面を由那に見せると、ぱあぁと表情が明るくなる。ああ、デートが確定したな。


「よぉ〜し、彼氏さんや。私もあとで有美ちゃんみたいに甘々カフェデートしてもらうからね! その前にとりあえずは買い出しデート、レッツゴー!!」


「はいはい。仰せのままに彼女さん」


 買い出しデートにカフェデート、か。


 なんだかんだで中田さん達のあれを見て、俺も由那とイチャイチャしたいというフラストレーションが溜まっている。せっかく時間もできたことだしな。



 今日はとことん由那とイチャイチャする、デート日にでもするか。

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