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少女の爪痕 2

 サツキは風の力を借り、高く飛び上がってメボシを斬りつける。


 カミクガも支援とばかりに地上から天に向かって雷を打ち上げた。


「ふふ、無駄だよ」


 そうメボシは笑う。近衛兵達と、魔女イズミも到着した。


「このっ、魔人め!!」


 光弾を連射し、メボシに牽制を入れるイズミ。治療の終わったカミトも剣を構える。


 サツキは滞空したままメボシの防御壁を滅多切りにしていた。


「流石に勇者と言った所か。だが、このまま終えてしまっては、つまらない」


 メボシは天に向かって魔力弾を打ち込む。ガラガラと天井が崩れていった。


「まぁ、今日の所はここまでで」


 その空いた箇所からメボシは飛び去る。サツキは追いかけようとするが、あまり高い高度を飛ぶことは出来ない。


「カミト様、一体何が……」


「イズミ。私は真実だけを話す。聞いてくれ。イグチは魔人だった。奴の攻撃で王は……」


 荒い息を少し整え、カミトは言った。


「王は……。亡くなられた……」


「そ、そんなっ!!」


 目を丸くし、口を両手で抑えてイズミは驚く。立ちくらみがする程の衝撃だ。


 クサギは探知盤を持ち、魔人の飛び去った方角を見ようとしたが、反応は無かった。裏の道具を所持していないのだろうか。




 その後、国会議員の間では緊急の会議が開かれた。


 会議の間に、蜂の巣を突いた様な場内で、スキを見てサツキが他の勇者達に連絡を入れる。


 事の顛末を話すと、アシノは冷静に頷いた。


「私達は急ぎ王都へ戻る」


「あぁ、俺も行くぜ」


 イタヤも同じくそう言う。


「王に思い入れはありませんが、国の危機ですね。私も向かいます」


 元勇者のトチノハも同じ返事をしてくれた。





 アシノから王が死んだことを聞かされ、ムツヤ達も動揺する。


「あまり良い噂は無かった王様だけど、まさか殺されるなんてね……」


 ルーが馬車の中でポツリと零した。


「魔人を倒したと思ったら、また魔人ですか」


 ユモトもそう言って杖を握りしめる。


「奴らは何が目的なのか分からない。今出来ることは少しでも奴の情報、目的を探ることだな」


 アシノの言葉に全員が頷いた。




 国の会議では次の事が決まる。新たな魔人の存在は城が派手にやられた為、隠し通せないと公表するが、王の死はこの件が落ち着くまで隠すことになった。


 この国、ギチットと隣国キラバーイは今、軍事的に緊張状態にあった。王が死に、魔人に手こずっていると知られたら、攻め込まれる危険性もある。


 夜までには国中に連絡石で魔人ミシロが死んだ代わりに、新たな魔人メボシが現れた事が知れ渡った。

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