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第88話『サバイバルゲーム・エンド6』

せらぎねら☆九樹が借りたオフィスに大江戸華美が訪れる。


「よく私に連絡が出来ましたね」

「つばささんに自分に万が一の事があったらここに連絡してくれって言われてたんです」


それはせらぎねら☆九樹が渡していた連絡先だった。


「九樹さん。つばささんとどこかで会っていたのですか?」

「清志君。以前君が彼女と蒼空町にいったのを覚えているだろう?」

「ええまあ」

「その日の夜、つばささんから連絡が来たんですよ。元々ライバー同士連絡をとっていたのもありましてね」


せらぎねら☆九樹は蒼空つばさと密会し、蒼空町の事、そして最近誰かに見張られているような気がする事を話していた。ストーカーではないかと思っていたが、何の証拠もなく警察の様な組織に相談しても気のせいだと言われ相手にしてもらえないだろうと考えた。

だから何かしらの証拠を掴んだらせらぎねら☆九樹に相談したいと、連絡先を改めて交換していた。


その矢先に蒼空つばさは殺められた。口封じのためか、それともせらぎねら☆九樹を恨む者の犯行なのか。その真実を知る必要があった。


蒼空つばさの仲間だったライバーが持ってきたもの。それはつばさが使っていたノートパソコンだった。


「何か、事件へつながる資料が残っているかもしれません。私も、私の仲間もつばささんがどうしてこの世から去らなければならなかったのか…。その真実が知りたいんです」

「わかりました。こちらとしてもつばささんに何があったのか知りたいところです。このパスワードがかかってますが…」

「大丈夫です。彼女なら直ぐに…」


阿久津にせらぎねら☆九樹がそう言うとレンタル事務所に梅村が入ってきた。


「梅村さん。このパスワードを解いてくれますか」

「朝飯前だ」


梅村はノートパソコンを手に取ると、キーボードを叩きパスワードを解いた。


「凄い…」


清志は梅村の腕の良さに驚いていた。


「中にはなんかファイルがあるな」


サブとして使っていたノートパソコン。梅村はマウスを操作し中身を確かめると、必要最低限のソフトと日記と書かれたファイルがあった。中には7つのデータ。日付によると事件直前まで書いていたようだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


『〇月12日

最近誰かに見られているような気がする。身バレはしないよう気を付けているが、どうにも気味が悪い。

 メンバーに相談するのも気が引けるので、何かあったら九樹さんに相談してみる。そう言えば最近八坂さんと剣崎さんが事務所を立ち上げたと連絡があったので、何かお菓子でも贈る』


『〇月15日

朝、玄関の前に封筒があった。周囲を確認し、部屋に持ち帰って私は中身を確認した。中にはメモ用紙が入っておりそこには


【いつもみているヨ♡】


と不気味なメッセージがあった。筆跡を調べられたくないのかとても歪な書き方をしている。寒気がした。こいつは私の家を知っている。外に出るのが怖い…』


『〇月17日

配信をした後、私は引っ越しをするために新しい住居を探そうと思った。だが突然ドアのチャイムが鳴り、怖いが私はのぞき窓から相手を確認する。外には坊主頭の背の高い男が立っていた。私は居留守を使い去るのを待っていた。

男が去るのを確認し、外に出ると新聞受けに名刺が入っていた。名前は『松山綾善』と書かれていた』


『〇月19日

 あの坊主頭の松山綾善と言う男が私をどこから見ているのではないかと不安で仕方がない。九樹さんに連絡したが、早くこのことを話したい。

松山はドア越しからでも不気味さを感じる。買い物はほとんどネットで済ましている。この部屋は早く出て行った方が良いかもしれない』


『〇月20日

 久しぶりに八坂さんに会った。話していると落ち着く。事務所ではかつてほどではないがライバー達が自由に活動出来るように努力しているらしい。ストーカーについても相談した。もし力が必要になればいつでも力になると言ってくれて安心した』


『〇月23日

 もう誰も信用できない。部屋の中に荒らされたような形跡があった。ちょっと外出しただけだった。部屋の鍵はかけていたはずだ。大家さんに相談したら、恐らく合鍵を作られているかもしれないとのことだった。急いで鍵を変えてもらった』


『〇月25日

 この日記をみている人がいたら…どうか気を付けて欲しい。私はずっと松山綾善が怪しいと思っていた。だけどよく考えれば私のこと、ライバーでない現実の私を知っているのは同じライバー仲間しかいない。考えたくはないがきっと怪しいのはあの人しかいない。

 あの人に相談した後、急にストーカーの行為が激しくなった…。八坂さんの事を疑いたくないけど、彼が怪しい』


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


「どうやら相当追い詰められていたようだな。最後の日記は殺される前日に書いたものだ」

「そんな…あの八坂さんが?」

「まさか八坂さんが松山綾善と?」

「…だが、もしそうすれば話の辻褄は合う」


九樹と阿久津は日記の内容から推理する。

清志は全てのライバーを詳しく知っているわけではないが、八坂は男性ライバーでゲームに対しオールマイティな腕前を持ち、ベテランのトーク力とサブカルの知識でライブ配信するライバーと言うのは知っていた。


「だけど八坂さんがもしストーカーだったとして…どうして彼女を殺す必要が…?」

「わかりません。だけど八坂が怪しいというのは念頭に入れておきましょう」


蒼空つばさの日記により、容疑者が増えせらぎねら☆九樹は真相に近づけた気がした。




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