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第90話『サバイバルゲーム・エンド8』

―レンタルした会議室。

コンビニから買ってきた飲料水、菓子類、弁当が並べられ、これまでの情報を整理していた。


「白石さんを含めた殺害の件、阿久津さんの事務所襲撃事件、そして東雲優子さんの事、全て松山綾善がつながっていることがわかりました」

「そしてその裏では政治家である川中幸雄が山内政権を打ち崩し、自分が次の総理大臣になるために山内と繋がっていたあなたを潰そうとしている…。そう考えるのが自然でしょう。あの神崎の一件であなたは多くの政治家を敵に回しているでしょうしね」


サバイバルゲームで行われたペル・ゲーム、神崎幸太郎の娘・神崎美波の敗戦と共に流した政治家達の数々の動画、今は消されているがすでに多くの人がその動画を録画して拡散させており、信用を失い失脚した政治家は多くいる。


「だけど、私はそれでもやらなければならなかった。紫龍院教により不幸になった人の為にも、誰かの犠牲で資産を肥やす政治家を除去しなければならなかった。力ではもうどうする事も出来ない権力者を排除する。そうしなければこの国の未来はないと私は思いました」

「あの、九樹さん。ひとついいですか?」

「はい」

「九樹さんにとって山内は信頼できる政治家だったんですか? あなたが手を貸したという事はそう言うことになりますが…」


素朴な疑問だった。多くの政治家達を排除させる中、山内をどうしてせらぎねら☆九樹は信頼したのかと。


「彼は他の政治家とは格が違う。自分が汚名を背負おうとこの国の未来のために力を尽くす人間だと私は確信した。互いの利害も一致したので協力することにしたんです」

「まあ、実際山内がトップに立ってから法律の改正がこれまで以上に迅速だし、犯罪率の減少や経済回復も彼の手腕によるもが多い。彼の下も人間も優秀かつ若い世代ですからね。自分が引退した後も考えているんでしょう」


山内が独自で集め政治家として育成した若い世代〈山内チルドレン〉は議員、各地方の行政に関わっている者が多くおり、将来国会議員になることが約束されている。


「九樹さんの見る目が確かだったと言わざるをえません。まあ、きっと山内さんも…」

「何です?」

「いや、これを話すのは余計でしょうか…」


阿久津は何かを話そうとしたが途中でやめた。


「で、私達は何をすりゃあいいんだ?」

「梅村さんは松山綾善が指定した施設の電気系統を工作する準備をしてください。樒さんはスタッフを集めて松山を逃さないよう会場周りを囲う準備をお願いします」

「わかったわ」


スタッフとはせらぎねら☆九樹とLure‘sのメンバーの動画制作やスケジュール管理・雑務等をしていた職員である。今は給料を与えそれそれの家に帰らせているが、必要があればいつでも呼び出せるようにしていた。


「私も手を貸しますよ。荒事なら得意な連中がいるんでね」

「ありがとうございます。清志君は秋穂さんと連絡をとって優子さんの状況の確認と今回の話の報告をお願いします」

「わかりました」

「私も協力するよ!」

「大江戸さん…」

「あの人がいなくなって、事務所のメンバーは皆ショックを受けてるんだ。だけど私はさあ、あの人の仇は取りたいんだよ!」

「…わかりました。では大江戸さんもご協力お願いします」

「ああ!」


せらぎねら☆九樹、阿久津、大江戸華美らと共同前線を作り、松山綾善を確保し川中幸雄に近づく作戦を決行する。


清志をアパートに送迎し、九樹は隠れ家で急ぎの動画を作り公開した。


『せらぎねら☆九樹復活! ライブ配信を行う予定有り』


自身の活動再開を告げる1分ほどの動画だった。その1分の動画の合間に『松山綾善 東雲優子 来訪』と書かれた画像を入れて気付いた人間が松山綾善の元にせらぎねら☆九樹が行くというメッセージを作った。


清志は秋穂に連絡し、当日のやりとりについて細かく計画した。

松山綾善が指定した場所は大谷町の公民館にあるパーティホール。秋穂は優子について行き、2人が先に入ったら清志が入り松山綾善達の注意を集める。

そのうちにせらぎねら☆九樹たちはパーティホールが停電するよう工作し、松山綾善を拘束する予定だ。松山に悟られないように優子には知らせずにしておく。


同窓会の予定は夜9時。その20分前につくよう向かって行くことにした。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

―翌日・公民館


「清志君、元気にしているかしら? 話したいことがたくさんあるのよねえ」

「そうだね…」


呑気な優子を尻目に秋穂はこれから清志達がやることが成功するよう周囲に気を張っていた。


松山綾善の他、小坂学人、秋月美香、黒江アリス、チャン・フェイヤンらが来ていた。皆雑談したり用意された料理を食べたりして時間を過ごしている。


秋穂が様子を見ながらスマホを確認すると、清志から『そろそろ会場に向かいます』とメッセージが来た。


(清志君早く来て…! なんか…この会場おかしい…!)


秋穂は清志の到着を待っていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


公民館の外で清志はせらぎねら☆九樹の指示を受け会場に向かった。


「秋穂さん、今行きます」


その瞳には揺るぎない覚悟を宿していた。


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