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第92話『サバイバルゲーム・エンド・10』

八坂から聞いた真相。

蒼空つばさ殺害を行ったのは彼であり、それは自分の過去、紫龍院教・教祖の息子である事を世間に知られるのを恐れたためであった。


「あなたは自分の保身のためにつばささんを…!」

「それにあの人は紫龍院教を裏切った。制裁を兼ねて命を奪ったんだよ」

「狂っている…! つばささんは自分ではない家族が起こした罪を背負う覚悟をしていたというのに…!」

「何とでも言え。だが俺が殺したいのはお前だ、せらぎねら☆九樹…! いやさ倉木茂雄!! 父を殺した罪は俺が清算するっ!!」


銃口をせらぎねら☆九樹に向ける。


「待ちなさい」


そこに会場から出てきた松山綾善が現れる。


「松山綾善…!」

「せらぎねら☆九樹。君は私に罠を張ったつもりなんだろうが、逆に利用させてもらうよ」

「どういうことです?」

「まあ、私には警察の味方もいるんでね。川中さんもそれなりに力のある方ですから…」

「まさか…」

「川中さんはあなたを手中に収めたいんですよ。今度は自分が王になるために。だから交渉材料を得なければならないんですよ。伊藤清志と言うね」

「!」

「彼はもう逃げられない。ここあら逃げたとしても、彼はずっと追われ続ける。警察にね…」


松山綾善は懐から指名手配所を出した。そこには清志の顔写真と、蒼空つばさ殺人容疑の罪状が書かれていた。


「まもなく警察が駆けつける。殺人犯・伊藤清志を捕えるためにな」

「松山アっ!!」

「ここに来た時点でお前の負けは決まっていた」


松山は不敵な笑みを浮かべる。


「私は勝負と言うのは全て将棋を指すことと同じだと思っている。確定した勝ちを描くために相手の動きを自分の手に誘導し、最後に王手をとる。勝負の中ではなく外で決まっているんだ。せらぎねら☆九樹。お前はもう王手になっている!」


松山は信者達に周りを囲ませていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―公民館・パーティー会場


松山綾善がせらぎねら☆九樹と話している所、会場では小坂が清志に怒鳴り散らしていた。


「なあそうなんだろ! お前が蒼空つばさを殺したんだろ!?」

「小坂さん、誰がそんなことを言ってたんですか?」

「ああ? 松山さんが言ってたんだよ。お前が蒼空つばさに会ったって、その時にぶっ殺したんだろ!?」

「松山さんの言う事を信用するんですか?」

「うるせえ! てめえ、人を殺しといて申し訳ねえとか思わねえのかよ!」


小坂は勢いで清志を追い詰めるていくが、清志は恐らくなんの根拠もないのではないかと考える。


「いい加減にして! 清志君がそんなことをするわけがないでしょ!」


清志を庇うべく優子が話に割って入る。


「清志君は人を殺せるような人間じゃないわ!」

「だったらそうじゃねえって証拠はあるのかよ!」

「それはお互い様でしょう。それに小坂さん。アンタが他人の為に何かしようとする人でない。松山に何か命令されたんですか?」

「そ、それは…、今は関係ないだろ!」


今にも喧嘩に発展しそうなその時だった。


「動くな!」


武装した紫龍院教の教徒達が会場に入ってきた。


「き、清志君! 早く逃げろ!!」


更に阿久津も慌てて走ってきた。


「松山に感づかれていた! 私達は逆に奴に利用されたんだ!!」

「どういうことです!?」

「阿久津!? お前も金目当てでここに来たのか!?」

「お前と話している暇はない! 今すぐ逃げろ! 警察も…っ!」


そこまで言いかけた所で阿久津は信者の1人に撃たれる。


「静かにしろ。ここにいる全員がどうなろうが知った事じゃないが、伊藤清志を生け捕りにしろ。それが、松山さんが私達に出した命令だ」

「どういうことだよ!! 松山さんは…!」

「黙れ」


小坂に対し、信者は拳銃を発砲する。その弾丸は小坂の足に当たり、痛みにより倒れ、出血する傷口を抑えながら転げまわる。


「あああっ! 痛え! ぐああっ!?」

「け、拳銃…!?」

「構わん、どうせ撃ち殺しても今の警察は我々の後ろ盾だ。もみ消してくれる」


会場に来ていた人たちは皆悲鳴を上げて逃げ出す。清志は信者達に囲まれ逃げる事が出来ない。


「伊藤清志、悪い事は言わん。漫画の様にこの場を助けてくるヒーローも武器もない。我々紫龍院教の再興を成し遂げるためにも我々の元に来るんだ」

「…嫌です。どんな現実だろうと僕はあきらめません」


清志は拳を握り戦う姿勢を見せる。


「仕方ない。無傷で捕まえるよ予定だったが、抵抗されないように痛めつけるしかないようだな」


信者達が清志に攻撃しようとしたその時


「やあああーー!」

「ふぎゃあ!?」


信者の1人をイスで東雲優子が攻撃した。


「清志君逃げて!」

「優子さん!?」

「秋穂と清志君が逃げる時間は私が稼ぐから! 早く!」

「この女! 」


信者達が優子を抑えようとするが、そこに阿久津と九樹がよこしたスタッフが現れる。


「清志君! 早くここから逃げろ! 」

「阿久津さん!」

「彼には君の力が必要だ! だから早く…!」

「わかりました! 秋穂さん! 優子さん!」

「私はいいから秋穂を…!」

「…無事でいてください」

「お母さん…!」


清志は秋穂を連れて公民館から出て行った。


――――――――――――――――――――――――――――――――― 


「ふふ。松山、確かにゲームのは勝つための戦術があり、事前に打ち合わせていれば勝つことができる、だけど現実はそうはいかない」

「何?」

「将棋の駒と違って、人は意思を持って動いているからですよ…!」


彼がそう言うと、信者達と九樹の間に煙幕が投げ込まれる。


「くっ…これは…!」

「九樹さん! 早く逃げますよ!」

「樒さん、ありがとうございます」


樒はせらぎねら☆九樹と共に逃げ出した。


清志と秋穂は分かれてそれぞれ逃げた。その後警察が訪れ、信者達を拘束し、東雲優子と阿久津を保護した。阿久津は討たれた怪我もあり、病院に搬送された。


この日から清志は警察と紫龍院教から逃げる逃亡生活が初まった。








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