目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第93話『清志逃亡生活・1』

松山綾善はせらぎねら☆九樹の作戦を逆手にとり、清志達は不利な状況に追い込まれた。

阿久津や東雲優子の抵抗によりどうにか逃げ出した清志と秋穂はコンビニに逃げていた。


「はあはあ…」

「何とか逃げれたようですね」

「だけど…。きっと清志君を探しに来るんじゃ…」

「ええ…」


紫龍院教もそうだが、このままだと警察も自分を探しに追ってくるだろう。警察は蒼空つばさを殺したのは清志だと思っている。否定しても警察は川中の息がかかっている。

尋問して嘘でも自供させてくる。そうなればせらぎねら☆九樹も動きづらくなり、松山綾善の思いのままになってしまうだろう。


清志は今出来る事は【逃げる】こと以外ないだろうと考えた。


「秋穂さん。僕はしばらくの間逃げることにするよ。君は早く僕から離れるんだ」

「逃げるって…どこか行く先でもあるの?」

「確実と言うわけでもありませんが、賞金の貯金もありますし、せらぎねら☆九樹さんと落ち着いて連絡取れるまでは…」

「清志君。私の家には来ないの?」


秋穂は清志に提案したが、清志は首を横に振って断る。


「…僕が秋穂さんと一緒にいたらあなたも巻き込んでしまう。あなたは優子さんが帰ってくるまで家で待機していてください」

「清志君…」

「追手が来るかもしれないんでそろそろここから離れましょう」


秋穂はタクシーを呼んで自宅に帰った。清志は逃亡するために必要な物を家に取りに行った。


―――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―清志アパート前。


「奴はまずここに来るはずだ。見張りを付けて待機していろ」

「了解」


清志のアパート前では警察官が数名待機していた。


「あいつを捕まれば新教祖様から謝礼が貰えるってな」

「生け捕り限定らしいから気を付けないとな」


更に私服の紫龍院教の信者達も徘徊して清志を探していた。


自宅周りは完全に警察と紫龍院教に囲まれていた。カルト教団である紫龍院教に対し警察官が黙認しているのは川中の力が働いていると考える。


「これでは近づけない…」


清志はアパートに帰ることを断念し、他の場所に向かうことにした。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

―花菱警察署


「署長! どうして紫龍院教の奴らを自由にさせているんですか!? あんなカルト教団が繋がっているって思われたら我々の信用を失う事になりかねませんよ!」


捜査一課の若手刑事である上野は署長である針元と言い争っていた。


「…上からのお達しだ。君達はいつものように仕事をしてくれればいい」

「紫龍院教の連中がどんな奴らか知っているでしょ! それに容疑者の証拠はすでにこちらにそろえているんですよ!」


蒼空つばさの自宅やその他の事件現場で真犯人の証拠なる体液のDNA結果や、死亡鑑定結果に基づいた凶器の証拠とその会得ルートなど数々の証拠を見つけていた。


「そうか。だがもう必要ない」

「なんですって?」

「上野君。蒼空つばさ殺しの犯人は【伊藤清志】。他の事件にも関わっている。しれで結論は決まった」

「何の証拠もないじゃたないですか!」

「いちいち五月蠅いんだよ君は!」


机をたたいて署長は怒鳴り散らす。


「上が言ったら私達は真実がどうあれそれに従えばいいんだ! 私達が善悪を考える必要などない!」

「真犯人を逃がせば無関係多くの一般人が被害者になるですよ!」

「それは私の管轄外だ」

「そんな無責任な事許されるわけないじゃないですか!」

「話は終わりだ! 早く仕事に戻り給え!」


強引に話を終わらせて署長は彼を追い出した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――― 


「どうやら捜査から手に引くように言われたようだな?」

「…笑いに来たんですか?」


署長室の外で柴田が上野を待ち伏せていた。


「自分の足で証拠を探して、真実を見つけ出そうとする奴を笑うかよ。だがあの署長を説得させようなんて無駄だ。あいつには権力者の息がかかっている」

「権力者…? 警視庁ですか?」

「いや。あの生焼けの連中にそこまでの力はねえ。もっと上。国会議員クラスだろうよ」

「何のメリットがあってそんなことを」

「利害の一致だろ」


柴田は上野と歩きながら答える。


「国会議員は自分にとって厄介な人物を取り除くため、奴は自分の出世の為に動いている」

「出世ですか?」

「本庁の幹部ポストを餌にでもされているんだろ。人間ってのは権威に取りつかれたら上がる事しか考えれなくなる。二度と誰かに使われたいなんて思わない位にな」

「…」

「上野。俺はなあ、今の若い奴とソリが合わねえと思って独自で捜査していた。署長が言っていた伊藤清志がシロなのは俺もわかっている」

「だけどこのままだと…」

「命令に従順なのが正しい訳じゃねえ。どうせあんなのが出世しても権力者にいいように使われる道化になるのは目に見えている。ここは俺達で手を組んで紫龍院教の捜査を進めるべきだろう」

「柴田さん…!」

「俺も奴らの好きにさせるのも、アイツらに頼る政府も気に入らねえ。何より1人の人間として、間違ったことが許せねえんだよ…!」


こうして清志の逃亡の裏で警察たちは独自の動きを見せ始めた。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?