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第105話『川尻光』

―某病院

ベッドの上で阿久津はスマホを使い連絡を入れていた。

「ええ。…当時の担当にも確認を取りました。やはり奴で間違いないでしょう」

紫龍院教の襲撃で怪我を負った阿久津は入院していた。今は部下に周囲を見張りさせ、以前から調査依頼されていた情報を伝えていた。

「…奴はこれで終わるだろう。元々そう言う定めの男だ」

煙草を取り出し、気晴らしに吸い始めた。

―――――――――――――――――――――――――――――――― 

―蒼空町・第1倉庫内部。

「…すでに輸出分の武器を作っていたわけか」

武器製造工場として存在していた蒼空町の実態をカメラに収めていく九樹はため息をついた。

太平洋戦争が終わってから軍事力を持つことは禁じられていたが、武器の製造事態が完全に止まっているわけではない。国防の為だったり、戦闘以外の目的だと言えば製造は可能だからである。

無人機ドローンだけではなく、組み立て式ライフル等の銃や、催涙ガス、手榴弾、更には有毒ガス発生装置まで作られていた。

「こんなもの世に出たら極刑モノでしょうね」

「そうはならないさ。警察は皆政府の犬っころだ。餌をやれば目をつむることを簡単に出来るような連中は何もしないだろうよ」

「賄賂を渡すことも計算ずくでしたか」

「奴らに純粋な正義を求めるなんて無駄だ。アイツにとって正義とは『利益に繋がる』もとだからさ。少し前にも警察上層部による企業への冤罪捜査があっただろう。あれは財閥が一企業の発展を懸念したうえで上層部に賄賂を渡して行ったと言われている」

「山内さんは許さないでしょう。あの人が作り上げた政権はそう言った権力の暴走を認めていません」

「確かにな。だが山内でなければ何も問題ない。仮に川中が駄目でも他の候補を立てればいいだけだ。権力のトップに立ちたい人間なんていくらでもいるからな」

「それで自分達に都合のいい権力者の下に着けばいいと…。八坂さん、いつからあなたはそんな人間になってしまったのですか?」

かつてライバーだった頃の姿とかけ離れた今の八坂を見てせらぎねら☆九樹は問う。

「確かに私も純粋にライバーだった頃もあっただろうな。だが父が死に、紫龍院教の教徒達が私を新たな王と称え始め、トップになった時私はこれまで得れなかった充実感を得た。自分は労することなく、他人の力を使い意のままに操る事。それがどれだけ素晴らしい事かと思った」

「支配者としての愉悦感に溺れてしまったのですね」

「九樹さん、あなたも以前は政府と手を組んでライバー達の頂点になってたじゃないですか? あなただってその気持ちがわからないわけじゃないでしょう?」

「…私が政府と手を組んだのは他でもない、紫龍院教を陰で操っていた神崎を倒すべく、一時的に手を組んでい手にすぎません。とは言い自分の都合で彼らに迷惑をかけたからこそ私は動画界隈から一時的に去ることにしました」

「それは偽善だ。あなたが去ろうと事実が無くなった事にはならない。それなら私が変わってライバー達を支配しようと思った」

「…それに従わなかったからつばささんを殺害したのですか?」

「バカな女だった。黙って従っていれば命だけは助けてやったというのに…」

「更に彼女の作った事務所にいる人たちを全員…」

「万が一、蒼空つばさが私に繋がる事を暴露していたらますかったんでな。最も1人逃してしまったが…」

「大江戸さんは配信業を止めるようです」

大江戸は警察の取り調べから解放された後、せらぎねら☆九樹が保護したが彼女はもう精神的にまいってしまっていた。蒼空つばさを失い、仲間達も血の海に飲まれていった。

これ以上配信業に関わっていたら自分もいつか死ぬかもしれない。

その不安から九樹に今回の件から離脱することを告げて去っていった。

「あなたが残った紫龍院教は、自分に都合の悪い人間を簡単に始末するような畜生の集まりになりかねない。これ以上紫龍院教の被害を広まらせるわけにもいかない」

「私もこれ以上アンタに邪魔されるのは面倒だ。ここで潰させてもらおう」

川尻光はナイフを取り出してせらぎねら☆九樹へ襲い掛かる。

「くっ…」

せらぎねら☆九樹はスウェーバックしてよけるが、仮面の一部をナイフによって破損される。

「紫龍院教は私…いや俺の手で必ず再興させる!」

「そうはいかない。必ず根絶やしにする!」

せらぎねら☆九樹はナイフを弾くと光の胸倉をつかみ投げ飛ばした。

「例え力づくでも!」

「俺は初めからそのつもりだ!」

光はナイフを捨てると拳銃を取り出す。九樹は物陰に隠れ放たれた2発の銃弾をかわした。

「出てこい! 次は心臓を撃ち抜いてやる!」

リボルバー式の拳銃に使った分の弾を装填し、九樹を狙いに定める。九樹は側に会った工具を投げ放つ。それが床に落ちて金属音を放つと光は反応し拳銃を音の方に向ける。

「でやあ!」

その隙をついてせらぎねら☆九樹は光にタックルを仕掛けて地面に突っ伏させると、光の顔面に何度も拳を落とした。

「お前のせいで、お前達紫龍院教のせいでどれだけの人間が人生を狂わせたと思っているんだ!!」

「ぐっ…!」

「私はただ家族と幸せに入れればそれでよかった! そんなささやかな幸せもお前たちは奪っていった! その罪の重さを思い知れえ!!」

何度も光を殴り気絶させると、九樹は拘束バンドで光動きを封じた。

「命まで奪いはしない。生きて償え…!」

せらぎねら☆九樹はスマホを使いある場所に連絡を入れた。

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