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食糧不足とロボット襲来!


 約三日、シェリーは移動基地の修繕作業、翡翠とモモカはエネルギー資源の採取や食糧調達に勤しんだ。その間にも、徐々に東部の外へ向かいながら、三人は長旅の準備を進めた。


 ただし、燃料の消費量に対して、採取が追いついていない。


 そこで、シェリーも修繕作業がひと区切りつくと、翡翠達に加わって、山林を歩き回ることにした。



「ここにも、反応あった」


「また残りカスなのです。根こそぎ持っていかれているのです」


「えぇ、また?」



 翡翠が不満を露わにした。


 彼女に引きずられるようにして、シェリーも軽く落胆する。



 シェリー達には、肉眼でエネルギー資源を見付けることが困難だ。そこで、機器などの燃料となるそれらの採取に不可欠なのが探知機だが、ごく少量でも反応するため、思うように収集が捗らない。



「こんなにエネルギー資源がないのも、悪魔のせいだよ。西なら、きっといっぱいあるよ」


「そのための貯蓄を先にしないといけないのだけど……」


「もうくたくた……お昼にしよう!」



 翡翠の訴えに、シェリーは頷く。



「お腹が空けば、判断力も鈍るわ。中へ戻り──…」



 移動基地へ足を向けた時、嫌な感じがシェリーを襲った。


 どこからか湧いて出てきたロボット達が、木々の隙間を滑走していた。



 ウィィィィン……



「翡翠、下がってて」


「有り難う、シェリー大好き!」



 翡翠が近くの木陰に隠れた。


 シェリーは、迫り来る一体に照準を合わせた。



 バキューーーン!!



 狙った一体が仰向けになった。罅割れしたその機体は、息絶えかけた虫のように、自身の最期に抵抗している。



 バァァァアアアン!!!



 とどめの一撃。


 それは、今度こそロボットの額を貫いて、動作を止めた。



 ウィィィィン……



 突如、仲間をなくした四体が、シェリーに向かって突進してきた。



「シェリー!!」



 バンバンバンバン!!!



 引き返してきた翡翠の銃が、ロボット達の機体を狙う。だが、走行速度を上げたそれらは致命的な打撃を逃れて、ノコギリ状の手を伸ばした。


 先頭にいた二体がシェリーと翡翠に接近して、その刃先を振り上げた。



「く……っ」



 シェリーは翡翠の前に進み出て、引き金を引く。


 別方向からタイヤを走らせてきたあとの二体を、シェリーと背中を合わせていた翡翠が迎え撃つ。



 バンバンバンバン!!



 だが、二人の銃弾は、ロボット達を掠めるばかりだ。



 タタタッ……


 バンバンバンバン!!



 今しがたの二体を追って翡翠が追撃する間にも、シェリーの応戦していた二体も刃を振り回して滑走している。


 それらの巻き起こす風が、シェリーの白衣の裾を揺らして、時折、刃が長い金髪の先を掠める。



「シェリー!こいつら私が止めているから、はぁ、……もっと、一気に倒せるような武器を……」


「分かった!一旦移動基地に戻るわ、少しの間、お願い!」



 至近のロボットをかわして、シェリーは何とか妨げを撒くと、その場を駆け出す。


 この数なら、今ある燃料で爆破出来る。


 大まかな作戦がシェリーの中に組み立った、その時──…



 カチ。……カチッ、カチッ。




「弾がっ」


「翡翠!」



 バキューン!!


 バンバンッ!!


 バキューーーン!!!



 弾切れしたはずの彼女に襲いかかったロボット達が、足場をなくした。


 シェリー達のいる上方から、無数の銃弾が降り注いだのだ。



「…………?!」



 シェリーは、今の銃弾の出どころを探る。


 すると、移動基地のすぐ近くの大木の枝に、一人の青年が立っていた。


 派手な髪色に目立つ色の服、筋肉質な体つき。…………


 強烈な個性を主張した青年は、くるんと宙を回転して、地面に降りた。



「お嬢さん達、お怪我は?!」


「特には……」


「安心しました。さぁ、異界の者達よ」



 仰々しい物言いで、青年がロボット達をざっと見た。



「オレは東部一の英雄、宇宙一イケてる輝真だ。輝く、真実の真、と書いて、テルマだ。輝かしいだろう!」



 声高々に名乗った青年、もとい輝真は、それからロボット達と攻防を始めた。


 輝真の立ち回りは華やかで、劇的だ。ロボット達の素早い動きを飛翔でかわして、ノコギリ状の手を射撃していく。刃物の折れたロボット達は、憤慨して敵に歯向かうが、彼はするりとそれらを避けると、機体に銃口を押し当てて、引き金を引く。また別の機体には、飛び蹴りして転倒させたところに盾を振り下ろして、機体を砕いた。


 特にシェリーの目を引いたのが、彼の扱う防護盾だ。美しく装飾されたそれは、一メートルを超えるサイズがあって、軽々とロボット達を弾き返している。敵を弾き返す確実性は、電気バリアに匹敵する。特定の素材の組み合わせによって、軽く、磁石の対極のように外敵を払える素材を作り出せるが、先日の鉱物以上に手に入りにくい。



 最後の一体を倒した彼は、すたっ……と、シェリー達の真向かいに着地した。



「いかがでしたか!東部一の英雄、さすらいの戦士・輝真の戦いぶりは!!」



 銃弾を懐にしまうと同時に、彼が前髪をかき上げた。



「えっと……」


「飛び降りながら回転出来る人、初めて見ました!」



 さっきの弾切れで腰を抜かしていた翡翠が、感想を述べた。



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