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第33話 うし

きみが軽そうに背負うリュックが実は意外と重かった

なにが はいってるんだい?

聞きたかったけど 言葉を飲み込んだ


きみが嬉しそうに話す旅行が実に意外と失敗だらけで

つぎは 一緒に行こうよ!

思わず声に出していた


うん



うなづくきみが少し うつむきかげん


白羽の矢が飛んでいくのを見たことがある

ああ あんなふうに選ばれるんだな

って

幼いながらも気づいたことが


ぽつりときた

矢ではなく水滴

これくらいならどうってことないかな

みるみるうちに

きみのブラウスが透けていく


水着のようなハイビスカス

みたいな

花びらいくつか浮かびあがる


どこを見ているか気づかれつつも

ぼくは釘づけを楽しめるけど

きみの胸の鼓動が響いてきそうで


まじで息


隠したい



ぱらぱらバラバラ

降る…いたたたた

透けないスカート

ひるがえらない

ふたり駆ける

泥が跳ねる


今日は寄らないつもりだったけど

因果だね

いつもの時刻だ喫茶店



ねえ知ってる?


たぶん知ってる


じゃあ答えて


なに


雨の矢って書いてなんて読むの


おれはガッツポーズわざとしてから


うし



カラーン鳴り響いた扉の向こう

煎りたての香りが迫る


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