ときどき困るのが
会ったことあるかないか
しゃべったことあるかどうか
記憶なんてあてにならないし
直感でさえ くるいがち
なおさら困るのは
はずれたのに
えへへへーって笑顔で
許されながら
なにかが刺さってくる気配
きみが憤怒の革を巻いて
腰の形を浮きあがらせた
ぼくが見ているふともも
つるつるすべすべだけど
傷だらけなの知っている
いつでも困るのさ
ぼくの取り柄は忘れ物
恥ずかしさも
後ろめたさも
なんなら名前
すべて忘れる
やあ
すごい風だね
って
フレンドリーに話すけど
しゃべりかけながら考えている
目の前の彼女
会ったことあるかないか
ポニーテールに似た髪形
しゃべったことあるかどうか
ふさふさ毛並み感のスカート
それマフラーみたいだね
「マフラー?」
ふと不思議顔きみがつぶやく
あれ ぼくは声に出していないけどさ
それマフラーみたいだねって思ったけれど
あまりにも短すぎて目のやり場を楽しんでしまう
けど
実は知られたくないんだ
できるだけ自然に穏便に
って
心掛けて観ているんだよ
世界には風雪に耐える感傷があって
いつでも誰かを嘆かせるけれど
ひとは誰でも鑑賞の趣味を持てるから
なにくわぬ顔で観ていられるのさ
そしらぬフリで流してしまうし
そのくせハッキリ脳裏に焼きついた
ぼくは きみを 思い出す