追い込まれても気にしない
本当はビクビクしているけれど
たぶんこういうのって伝染するんだよ
おれがビクビクしちゃうのは
父がビクビクしてるから
いつもなにかに怯えていて
うしろゆびさされるのを恐れているから
だからって
追い込まなくてもいいじゃないか
どうして自分の息子を苦しめるのさ
けれどあれなのさ
おれが世間から うしろゆびさされると
父の立場と威厳がかすんでアイデンティティが崩壊するから
おれひとりの問題にできない
おれひとりで傷つきたくても
許してもらえないから
せっかくほとぼりさめたとしても
あたらしいニュースが
あたらしい不安を運んでくる
だから油断してるとぶちのめされるよ
おい おまえ 世間じゃな
こういうひどいやつが
あんなひどいことしたっていうじゃないか
で おまえばどうなんだ
で おまえはどうなんだ
たとえ おまえはよくても
おまえの友だちはどうなんだ
どうせろくなこと考えないんだ
友だちなんかと付き合うな
父上どうしてそんなに自分の息子を追い込むのですか
父上どうして顔も見せない書き手のニュースを鵜呑みにするくせに
目の前にいる息子を見ようともしないのさ
と
ひとにいえない なきごと
でもな
ひとにいえないから
誰にもいわずに
ひとり抱え込んできたんだけれど
それがよかったのかなって
ちょっと思う
カバンいっぱい詰め込むと
カバンのびちゃうことあるだろう
心も似てる
ひとり抱え込んでばかりだと
ちょっとづつ心のスペースが広がっていく
ある日なぜか突然ぶわっと視界が広がって
あいてるスペースに風が吹き込んでくる
いっぱい いっぱい いっぱいだった
いっぱい いっぱい いっぱいだから
もうなにも はいらないって諦めてたけど
風が来た