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第93話 ずっと無口

ひとつの目的を意識していても

べつの意図が身をひそめているよ


ただ眺めたいだけなんだっけ?

そんなのウソ

と誰かがぼやいてるよ

ほら

おれのなか


遠く雪をかぶった峰が

空の青さ際立きわだたせている

落葉樹の多い島だけれど

いちめん緑色に見える気がする


とびおりたかったんじゃないの

ちがう!

もう全部なにもかも終わらせてしまいたく…

だからちがうって!


おれは知っている

対立するモノ同士が存在していることを

どちらも

まぎれもなく

おれを構成するモノだとも


結論から言っておこうか

折り合いをつけたいんだよ

能天気で自然な自分

悲観的で早合点すぎる自分

どちらにも

それぞれに目を向けてほしい

だからといって

対立相手に媚びることはない

対立したままでいよう

どんなに異様に思われても

距離のある関係のままでいこう

いつか見知らぬ宇宙に概念だけ移行して

ありとあらゆる変化が日常に舞い降りても

自分でいられるように


誰もいない展望台は

自分に語りかけるのにちょうどいい

風 うるさくて

波 めざわりで

どんなに心の雑音が騒がしくても

打ち消しあって静寂しじまめく

どんなに心の水面みなもがバシャバシャしても

乱れないなにかがある

のが

わかる


ところで手紙の返事は書いたの?

あの話の続きはどうなった?

次~次~次~と質問が飛び出て

めまぐるしいな

展望台の階段を登りながら

ずっと無口



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